Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

Hyper-G Evo➊回路設計

先日『gaou』さんへ送品した湖南電源は、Hyper-G高機能電源をベースに様々な改良を加えた進化バージョンです。 設計開発を行った筆者延伸線電源の同等性能バージョンアップを決断し、メイン基板を再製作します。 この電源を『Hyper-G Evo』と命名しました。

【生野駅前18:30】
製作には道標となる回路図が必要で、過去の経緯を追いまとめ直します。 回路/部品配置設計と製作の様子を紹介し、露太本線ブログINDEX『Hyper-G高性能電源』『Hyper-G高機能電源』に追加掲載して、今後製作に挑戦される方達への参考に供したいと考えてます。


1.回路設計
進化バージョンと言っても劇的変化ではなく、より使い易くより安全にの正常進化です。

具体的には低電圧で走行開始するKATO蒸機常点灯調整幅が広くかつ明るく、10V以上成分しか輝度貢献しないテープLED室内灯装着車の高輝度常点灯が可能です。 また低出力電圧時でもショート検出し、保護回路が確実に動作する様になります。  マスコン/ブレーキ制御方式高機能電源では、加速特性を見直してより実感的な運転を楽しめる様に改修します


1-1.入力回路
電源SW、パイロットランプ、ポリSWだけだった入力回路は、大きくボリュームアップしてます。 湖南電源安全性保証回路の1CH用モディファイ回路です。 Hyper-Gは作り易い低コスト設計思想で、100本単位販売抵抗は4品種、高機能版でも5品種の工夫をしてます。

コンパレータは余り1回路活用、NPNトランジスタは全て10本販売の2SC1815です。 TR91は出力回路と、SBM1045VSSはディレクションSW逆起電力保護と共通部品です。 なおR92に筆者は在庫300Ω(1W)使用ですが共通の470Ω(1/2W)2本並列もOKです。

部品共通化目的で10本販売BAT43を出力回路、入力回路ピークホールドと基準電圧作成に3本使い、保護回路動作点を高感度側にしました。 計算上はポリスイッチ非トリップ時抵抗成分で1.2Aまで動作しませんが高温で敏感過ぎるなら2.7kΩ2本で電流2倍が必要です。


1-2.三角波発生回路
三角波発生回路に変更はありませんが、『FさんのHyper-G製作サポート記』で判明し、製作情報に追記した抵抗の選別使用に注意が必要です。

矩形波から三角波を生成するオペアンプ2段目⊕端子は、正確に電源電圧50%にしないと、三角波下側が歪み性能に悪影響を与えます。 100本からテスターで抵抗値計測し同じ抵抗値の2本を使ってください。 33.0kΩの必要はなく32.3kΩ/33.8kΩでも同じならOKです。


1-3.高性能電源速度調整回路
変更なしですが1記事で情報完結する様に再掲載します。

コンパレータは2回路入りで、もう1回路は入力回路で使用してます。 ここでも速度調整VR遊び調整を限定使用4品種組合せ使用してます。 この場を借りて補足説明します。

コンデンサ容量の単位はF(ファラド)、その100万分の1がμF(マイクロファラド)です。 更に100万分の1がpF(ピコファラド)で無線通信機器部品等の単位です。 103とか104の部品表面印刷は上記の意味です。 業界人には常識でも一般の方は戸惑いますからね。


1-4.高機能電源速度調整回路
高性能電源速度調整VR23 1部品の手動調整機能を、高機能電源ではコンデンサ充放電利用の実感的なマスコン/ブレーキ制御に置き換えて専用基板を追加してます。 電圧計利用の速度計は常点灯調整時ゼロ、ノッチオンで上昇開始する実感演出を工夫してます。

【中山平駅前18:30】
高機能電源専用基板は再製作しませんが、湖南電源改修結果をフィードバックしてバージョンアップします。 今回設計回路図は暫定で、確認計測しながら最終仕様決定します。

[2022.04.30追記]確認計測により以上の様に変更しました。 常点灯VR51/R61は一旦は10kΩとR61なしにしましたが、湖南電源検収試験結果から、上側調整範囲不足の懸念があり、調整し易さより調整範囲を優先するより安全サイドの旧設計に戻しました。

[2022.05.20追記]蒸機常点灯特性向上の為、改善案を併記しました。


マスコンにはロータリースイッチを使います。 選択部品は6ポジションで、そのまま使えばOFF/ノッチ1/2/3/4/5、部品分解ストッパー調整で5/4ポジション化も可能です。 常点灯調整VRは1V未満の調整し易さを向上する為、並列抵抗を廃止し10kΩに変更しました。

ロータリースイッチAは最高出力電圧(=最高速度)を決める回路で、上記タップ回路から各ノッチを選択します。 初期設計から確認実験でR52をショートしてます。 ロータリースイッチBは加速率調整回路で、最高出力電圧が低いと加速率は緩やかですが、更に最高速度到達時間も長くして各ノッチ間加速率に差を付け、性格明確化を図ってます。

ノッチオン加速、ノッチオフ惰行、ブレーキ減速は全て330μFアルミ電解コンデンサの充放電で行います。 加速はR63/R64/R65/R66/R67で充電し、その電圧がVcompとしてコンパレータに供給され出力電圧を上昇させます。 湖南電源改修経過からR67 33kΩでは加速率が高過ぎ、最終的に76kΩを選択しましたが、確認実験して最終決定します。
[2022.04.20追記]実験結果により、R67は78kΩに確定しました。

【県道沿い山田さん宅18:30】
ノッチオフすると加速回路抵抗にR68/R69/R70/R71を加えた高抵抗でゆっくり放電して出力電圧も速度も低下します。 ブレーキVRはSW付きでオンの瞬間に放電抵抗が1/5になり、クンッと軽いショックで減速に入った事が解ります。 ブレーキVR直列の470Ω2本は停止目標位置に停車させ易くする抵抗で、つんのめる様な急停車を避ける為に設置しました。

速度計は電源と測定端子GND分離が必要なタイプの電圧計です。 測定端子GNDを常点灯電源として常点灯停車中ゼロ表示、速度連動で上昇するVcomp電圧分圧で速度計を実現してます。 また機関車と電車/DCのギア比差1.4を補正する車種選択SWを設置してます。

この1-4項回路は、1-3項手動速度調整VRを実感的運転を楽しむ為の置き換え回路です。 ない物は作るしかないはストラクチャにも言えますが、電源もそうでした。 いつかこんな機能の『夢の電源』欲しいと思ってましたが、自分の手で完成する事ができました。


1-5.出力回路
出力回路は高性能/高機能共通です、既公開設計情報からの変更点に絞って解説します。

出力トランジスタToffを短くする奥の手回路BAT43を追加し、ポリスイッチGND側挿入により発生するヒゲ対策でスピードダウンコンデンサ102Kを追加してます。 また後方HLチラツキ原因となるモーター逆起電力を抑える為、SBM1045VSSを採用しました。

【生野北町商店街写真館18:30】
Hyper-G回路図をブロック毎にまとめたのは始めてです。 今後の実験評価で変更の必要が生じた場合は、本記事を都度追記し、Hyper-G Evo制作の基礎情報にする予定です。 これまで何処にもない機能の『Hyper-G Evoは鉄道模型用最高の電源』 だと自負してます。


ではまた。

給水塔 塗装と部品製作➌

給水塔部品の製作が続きます、キットと異なり必要な物は素材から考えるしかなく、面倒ですがそこが自作ストラクチャの楽しみでもあります。

【生野駅給水塔】


◆給水ホース
給水口から蒸機注水口への注水ホースの製作です。 記憶に残るのはスポートがなく線路間地上給水栓からテンダーへ消防ホースに似た厚い繊維製ホースで給水してた光景です。

ホース素材は靴紐です、『細くて丸い靴紐』と嫁さんに頼んで出て来たのが太さ約2mmのコレでした。 入ってるラメは余分ですが使います。

フラットアースで塗装と言うよりは塗料を滲み込ませ染色します。 靴紐は繊維製なので、ビニールチューブ使うより実感的です。

完全乾燥させてから切口を0.9mmドリルで揉むと、スッと貫通します。 靴紐は中身が詰まってないパイプ形状で伸縮性確保してるのです。 それが靴紐を素材に選んだ理由です。

接続材の0.8mm真鍮線先端に瞬着塗って挿入固着しました。

この真鍮線を2-3mmで切り、バルブハンドル下でカットした給水口に0.9mm穴を空けて差し込み接着すれば完成ですが、先にハンドル製作・取付・塗装してから取付の工程です。


◆給水口バルブハンドル
給水口バルブ開閉にはハンドル方式と鉱石ホッパーの様に紐を引く方式がありますが、紐方式は構造が良く解る資料が少なく水圧が掛かるのでハンドル方式で製作します。 0.4t真鍮板エッジングで作るのがベストですが、当社にその技術がなくできる方法を考えました。

ハンドル軸に1mmネジを使います、知人から頂戴した物で専門店で入手したらしく、ホームセンターにはありません、ネジ頭径1.8mmです。

ネジ長さは5.3mm、ハンドル取付部にネジ込みネジ山をバルブ開閉軸に見せる算段です。

ハンドル径は4mmか5mmと考え作図した結果、少しオーバースケールかもしれませんが5mmを選択し、0.5tプラ板から製作する事にしました、残り肉は0.4mmになります。

5mmハンドル外径は穴空けポンチで打ち抜きますが、百均調達セットをヘッドマーク、フィギュア台座、給水塔屋根製作に使い、酷使により3mmはこの様に曲り消耗してます。

安い物ですし切れ味も落ちてるハズなので新調しました。 旧品は7mm残して廃棄です。

➊新品5mm穴空けポンチで0.5tプラ板を打ち抜きました。
➋中心(これが難しい)に0.8mm穴を空けました。
➌ハンドル軸1mmネジのタッピングネジ込みに1時間も掛かりました。
➍ネジ頭をガイドに1.2mm穴6個空ける作業しましたが上手く行きません、位置精度の問題ではなく外周部残り肉が少なく素材がドリル回転の力で歪んでしまうのです、困りましたが何とかするしかありません。

➊最初からやり直しです、ケガいて中心に0.8mm穴を空け1mmネジを取り付けました。
➋目標をハンドルらしく見えれば良いに引き下げ、穴数4個に穴径1mm長孔に変更です。
➌7mm穴空けポンチで円形定規を作り打ち抜きガイドをケガキました。
➍5mm穴空けポンチを位置合わせしてガンと一発、少々メクレ出ましたが出来ました。

小さな部品はすぐ取り付けます。 給水口ホース取付側を切断し0.8mm真鍮線埋め込む穴を空けました。 0.7mm下穴の空いてるハンドル取付部は1mmドリルで皿もみしました。

ハンドル軸をタッピングで捻じ込み取付完了。 外観は40点の出来でコレが現在の精一杯と我慢するしかないのかもしれませんが、でもね~。 塗装してホース付けると引き返せなくなるので、少し頭を冷やします。


◆ポンプカバー
人が出入り可能な小屋でなく、揚水ポンプを風雨から守るカバーです。

➊機関庫壁と同じラップサイディング4061で壁を作ります。
➋上下間違えない様に下にマーカー塗って4面壁材切り出しました。
➌送水管通る壁に1mmドリル穴を空け地表面まで切欠きます。
➍2mmプラ角棒を糊代にして組立ました。

機関庫の脇に位置し素材も同じなので色も同じマホガニーを吹きました。 塗料無駄遣いの様ですが、こんな小さな物塗装するの難しいからです。

➊屋根は機関庫屋根と同じ4026ではピッチが広いので、足場に使った4025を使います。
➋7.5x30mmに切り出し、手前棟側を斜めにヤスリ落とします。
➌機関庫屋根と同色RLMグレイを筆塗りします、裏側からだとヤスった面が解ります。
➍裏面塗装が乾いてから表面も塗装しました。

ウデが悪い上に眼も悪いと組立アシストが必要で、左上の様に0.3tプラ板糊代で2分割屋根を繋いでから右上の様に接着しました。 次に拝み合わせになってる棟線を三角ヤスリで少し削り、1mmプラ丸棒を棟に接着して外形完成、棟材と切断した屋根妻面を塗装しました。


ではまた。

娘を嫁に出した様な・・・

Hyper-G湖南仕様を送品し検収試験をパスの見込みです。 高性能高機能PWM電源自社開発を思い立ったのが2018年6月ですから4年近くなります。 その集大成が湖南電源、育児が大変だった子ほど可愛いと言いますが、手塩に掛けた愛娘を嫁に出した父親の心境です。

【峠のD51 夕】
開発者である筆者手元に最終仕様品がないのは残念であり、湖南電源の成果を延伸線用電源にフィードバックしたいのですがハードルが高く、そう簡単にできない事情があります。

【従来線制御盤】・・・過去記事より転載
その事情のルーツは従来線電源に遡ります。 屋根裏立地で制御盤設置スペースにも事欠く始末、ポイント/信号機切替SWの奥行に合わせ、中央にキャブコンフィーダーセレクター、左右に両CH電源操作盤、左端に電流計付きアクセサリー電源操作盤を配置してます。

【従来線電源操作盤】
電源操作盤は生産中止されたKATO旧スタンダード電源と同程度のサイズに、マスコン/ブレーキVR/ディレクションSWと、従来線開業時に追加設計して組み込んだ速度計(車種選択SW付)をかなり窮屈に配置してあり、電源回路基板を収納するスペースはありません。

【従来線電源回路基板】・・・過去記事より転載
従来線電源は1990年頃息子とお座敷運転を楽しむ為に製作した非PWMマスコン/ブレーキ方式9V仕様で、『こんな事やりたい』『ならばこうすればできる』式の100%独自開発です。 計測器用ブレッドボードに論理IC/アナログSW等汎用部品で構成しており、従来線開業後、脱線毎に切れるヒューズをポリスイッチに変更しただけで現在も元気に稼働中です。

【従来線電源回路基板コネクタ】
回路基板と操作盤を分離した結果、両者間は24ピンコネクタで接続され、両CH電源出力と写真左上の速度計9V電源加えると配線32本で接続されてます。 マスコン/ブレーキ方式の操作感は一度使ったら元へ戻れない魅力があり、従来線選択は正解だったと考えてます。

【峠のD51 昼】
従来線電源操作盤は人間工学的ミニマムサイズで、延伸線用PWM電源開発決断時に大きくする事は考えましたが、市販電源の様な完全独立電源の発想はありませんでした。 従来線は非PWMで常点灯用にN-1001-CL調達したので、補助電源含め3CHで構想設計しました。

【延伸線電源システム構想】・・・過去記事より転載
操作盤大きくしても屋根裏スペース制約は変わらず、N-1001-CLに追加装備した低周波PWM機能搭載構想もあり、電源基板別体型システムは自然な流れだったのです。

【延伸線用Hyper-G電源3兄弟】・・・過去記事より転載
その構想に従いHyper-G 3CH延伸線用電源が湖南電源開発の山場(泥沼?)に入る前の2019年2月に完成してます。 しかしこのシステム構成が最終仕様リニューアルを困難にする要因になってしまいました。

従来線踏襲型システムで3回路電源基板は下の予備電源内に、2CH電源操作盤間配線数を6本に合理化しました。 従来線にベストな構成でも、延伸線のコードで繋がった三位一体電源が使い易いとは言えません。 市販電源の様に3台機能独立で配線なしがベストです。

Hyper-G開発初期の試行錯誤バージョンで、基板2枚にVR速度制御補助電源1CHとマスコン/ブレーキ方式走行電源2CHを組み込んでます。 PWM発生三角波は3CH共用、走行電源出力TRはヒートシンク付きの特殊仕様です。 過去記事を丹念に読み返せば回路解析可能ですが、部品配置図がなく安全性保証回路追加を目視で配線判断するのは至難の業です。

電源操作盤には、パネルに隠しネジを埋め込み速度計裏側に高機能基板を実装してます。 この基板止めネジ外してスペーサーを付け1CHメイン基板を2階建て実装すれば、機能的には完全独立型電源になります。

で、最終版Hyper-G部品配置図眺めました、2CHは湖南電源だけで1CHです。 空いた出力回路部にラッチ回路を入れられないか、現状で無理でも左方から詰め合わせれば可能かもしれません。 そして1回路空いてるコンパレータをピークホールド保護回路に使えます。

湖南電源送品、倉元駅Arduino制御中止した現在、基板製作はやりたくない仕事筆頭です。 でも1回路空いてるコンパレータをピークホールド方式保護回路に使い、延伸線電源を3台独立電源に改修するアイディアは非常に魅力的、回路や部品配置を検討したいと思います。


[註]3/26公開『湖南電源 戦い済んで・・・』最後のパッチ回路電源変更実験は、このアイディアの事前検証が目的でした。


ではまた。