Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

製作水田の実在性考証

県道下の水田が完成しましたが、筆者は農家の出ではなく米作りに関する一般的常識と見聞きした付け焼刃知識しかありません。 製作した風景があり得ない物では困るので、農水省HPで米作り情報を仕入れ、実在性の考証を行いました、念には念を入れてです。

例えば、湧水量1時間1トンの地下水脈+貯水量2トンの貯水槽による米作りはどんな作業になるのかとか、3枚150㎡の水田でどれだけ米を収穫できるのか、等々です。


1.水田の水位管理
水田水位は田植時に深く、その後浅くなり、梅雨明けに一旦水を抜き、また水を張って稲刈り少し前に水を抜くのは見て知ってましたが、理由は全く知らず今回学びました。

【農水省HP情報より】
稲生育期間を通じた水田水位管理は3cm、晴天日の蒸発や降雨日の増水を木目細かく水の出し入れで管理します。 田植後着床するまでと、低温で冷害から守る必要がある時は、深水管理と言って、5-7cmに水位を深くします、温度計数の大きい水で寒さを凌ぐのです。


田植後50日前後の1週間から10日間、水を抜いて水田表面にひび割れができるまで中干しします。 根を強く張らせ、土中の有害ガスを抜く工程です。 稲刈り10日前に水を抜いて収穫、天候や生育状態により水田の水位管理は頻繁に行われてると解りました。


2.用水路と地下水貯水槽
2-1.水量比較
用水路灌漑と地下水貯水槽による田越し灌漑で使う水の量がどの程度違うのか確認します。 まず用水路からですが、計算が容易なU字溝タイプで検証します。 当時はメダカやカエルが生息する自然の小川型用水路も残っており、ザリガニ獲りに行ったものです。

自宅近くの現代の用水路ですが、昔の用水路と大きさも構造も変わりません。 幅も深さも30cm、撮影した4月上旬は上流取水堰で水量を絞った冬仕様のままで水深10cmほど、流速は人の歩行速度より少し遅い秒速1m程度です。 計算すると0.3x0.1x1=0.03(トン/秒)で毎秒30リットル、1時間に108トンの流量です。 これは製作水田想定の108倍です。


用水路の水田給水口に仕切り板が嵌ってます。 4月上旬に水利組合員共同作業で堰の点検や水路清掃を行い、半月後には水路一杯の水が流れます。 増水で流速も加速し1時間400-500トンの水量になります。 共用用水路水利権が決められており、仕切り板幅で取水量が制限されます。 水を入れる様子を見た経験の推定値として1時間40トンを使います。

   

水源の水量で比較すると2桁違いの数百倍、想定した地下水湧水量が2-3倍と仮定しても同じです。 一方水田に給水可能な水量で比較すると、用水路には水利権が設定されており、全ての水を引き入れる事ができないので、差は1桁違いの数十倍に圧縮します。


2-2.作業時間比較
次に水源水量・給水量共に桁違の両方式について、水位管理農作業に必要な時間を比較します。 一番大量の水を引き入れる代掻前と深水管理の2ケースを見ます。 年に一度の代掻前は1日の作業で完了しなくても仕方ありませんが、3-4日必要ではNGです。 一方2cm水位変更の深水管理は昼の気象予報で行うので、午後の作業で完了しなくてはなりません。


代掻前は5-7cm水位で田植えできる様にする為、10cmの水を張る想定です。 中干し後ひび割れができた水田を水位3cmに戻すには5cmの水を張る想定で、代掻前の半分です。 

一番右をご覧ください、製作した水田3枚の面積は150㎡、ここに10cmの水を張るには15トン必要で、連続作業で13時間は1日では無理があり2日掛かりになります。 一方深水管理には3トン必要で、わずか2トンの貯水槽が効力を発揮し、1時間で作業完了できます。


当時の平均的水田として15x20m、300㎡を例にすると、代掻前45分、深水管理9分と短時間で作業完了できます。 ところが圃場整備で大型化された水田、平均的な4,000㎡の水田で見ると、チロチロ地下水+貯水槽の製作した水田と同等の作業時間が必要です。 前出用水路写真の水田は傾斜地で短辺が短く2,000㎡クラスで半分です。 大型水田を見ると・・・。

アッやっぱり、幅・深さ30cmだった用水路が45cmに大型化し2倍強の水量を流せる様になってました。 これなら大丈夫と思いきや・・・。

給水口の形状が変です。 仕切り板がなく用水路U字溝にスリット、仕切り板より若干幅が狭く15cmくらいしかありません。 水田側に土嚢を詰めて水止めし、コンクリートブロックの重しをしてあります。 形状から給水可能量を推定するのは難しいですが、前出水田の1時間40トンに対して多少多い50トン程度で、2倍はないと思われます。


つまり圃場整備で水田面積が1桁広くなり、機械化で生産効率が大幅に向上しましたが、農作業に使用する水の供給は面積比ほど増えておらず、水位管理に係る農作業時間はむしろ増えてると考えられます。


3.製作水田の水位管理作業
ここまでの考証で製作水田が有り得ない物ではなく、実際に耕作可能な事が解りました。 もっとも150㎡の狭小水田だから可能なのであって、面積倍なら湧水量・貯水量も倍か10トンクラス貯水槽がなければ有り得なくなります。 では実際にこの小さな水田の水位管理作業がどうなるのか、検証してみました。 春先年に一度の代掻前水張り作業からです。

初日に9時間かけて水田➋/➌の水張り作業が完了します。 2日目は夜間に貯水槽が満水になってるので、水田➊の水張りは2時間で完了します。 同じく年に一度の中干し後の水張りも、同じ手順で水深が3cmになるまでです。 5時間半の1日仕事で完了します。

田植え後の冷え込みで深水管理が必要な場合は、2cmの水位変更なので1時間少々で完了します。 仮に貯水量10トンにしても、代掻前水張りが5時間の1日仕事なるだけで、深水管理は10-15分短縮するだけです。 この水田には貯水量2-3トンでバランスが取れてます。


4.米の収穫量
民家Aの自家用米水田の想定ですが、この水田からどれだけ米が収穫でき、それが何人分になるのかを検証します。

【農水省HP情報より】

またまた農水省HPで調べると10アール当たりの米の収穫量全国平均は536kgです。 ただしこれは1.7mmのフルイでクズ米を選別した玄米の重量で精米すると8割になりります。  150㎡は1.5アールなので玄米で80.4kg、精米して64.3kgの収穫量になります。


戦後日本人の食生活が変化し米の消費量が減り続けてますが、古くは一人年間1石/60kgと言われてました。 当時の地方で毎食米だけの銀シャリではなく麦や雑穀入りとしても、良い処1.5人分の収穫量で子供がいる3人以上家族には全く不足と言えます。

民家Aは小規模兼業農家で、当主はバスか列車で20-30分の町へ働きに出てるか、都会の建設現場で働く出稼労働者、奥さんが農業担当で野菜出荷の副収入と水田の米を家計の助けにする、そんな家だったと思います。


戦争に塗り潰された青春時代を送った親世代は子供にそんな思いをさせたくないと教育熱心で、子供は町の高校へ、そして大学へ、親は仕送りしてそれを支えました。 その時の『戦争を知らない子供達』が今、後期高齢者に足を踏み入れた筆者達の団塊世代です。


ではまた。

×

非ログインユーザーとして返信する