『路面電車』から連想するのは『併用軌道』『ポールまたはビューゲル集電』『単行運転』(連接車を含む)、『電気鉄道』から連想するのは『専用軌道』『パンタ集電』『統括制御多連運転』のキーワードになるのが一般的だと思います。
なお、この記事は北海道乗り鉄旅に出掛けるので予約更新です。 コメント頂戴しても帰宅後まで返信できませんので、予めご承知置きください。
【函館市電】・・・2016年5月
上記路面電車キーワードを備えた路線は大都市から消えても、全国各地に存続してます。
【ウィキペディアより】
現在東京都内で路面電車と位置付けされてるのは2路線、その一つが東急世田谷線です。 元は渋谷-二子玉川間玉川線支線で、三軒茶屋路上に複線分岐ポイントがあり、二子玉川行と下高井戸行が渋谷駅から発着してました。 玉川線が交通渋滞解消の為に地下化された新玉川線完成で廃止され、三軒茶屋-下高井戸間が取り残されました。 全線専用軌道だったので生き残り、現在の車両はパンタ集電連接車に変更され、路面電車らしが薄れました。
【ウィキペディアより】
もう一つは都電荒川線、路線の85%が専用軌道で生き残った唯一の都電です。 つまり主に専用軌道で部分併用軌道の路面電車で、京福電鉄嵐山線も同様の事例です。 そもそもこの区分は部外者の勝手な分類に過ぎず、境界は実に曖昧です。 歴史を辿れば両者に境界線は存在しなかったと解ります。 江ノ電を例に見ていきます。
【過去記事より転載】
江ノ電は路面電車に近い存在として認知されてますが、その昔は現在より路面電車色の強い路線でした。 ホール集電の単行電車、専用軌道区間を持つ路面電車、東急世田谷線と同じカテゴリーでした。 62年前にパンタ集電への切り替えに着手してますが、数年後廃止された東急玉川線車両譲渡を受けてます。
【ウィキペディアより】
現在は全車パンタ集電の連接車で、統括制御2連(外見は4連)運転です。 時代が下がると共に路面電車から電気鉄道の要素を強めてます。 自動車交通が発達した1970年代に利用客減で廃止論議もありましたが、テレビドラマ舞台やNHK新日本紀行で取り上げられて注目を集めてV字回復、最近もメディアに頻繁に登場し、小田急傘下で経営は安定してます。
【江ノ電路線図】
しかし全線10kmに15駅の短い駅間距離、曲線半径28mの急カーブ、18km/hの低表定速度、民家軒先掠める沿線風景は昔ながらで路面電車的です。
【京都市内を走る京阪大湯線】・・・1955.3
もう1例は京阪大津線です、京都市内を走るポール集電単行電車は路面電車キーワード備えており、京都市電と勘違いするほどです。
【ウィキペディアより】
前写真42年後の京都市内駅、駅舎のない典型的な路面電車停留所で、ここだけ見れば江ノ電よりはるかに路面電車的です。
【追分付近を走る京阪大津線】・・・1960.8
ところが京都市街を出外れると登山電車に早変わり、逢坂山の急カーブ・急勾配を越えて、大津側に下ります。 少し小型私鉄車両の2連急行電車、ポール集電除けば電気鉄道です。 この先大津市内の急坂併用軌道を走って浜大津に到着します。 現在は4連電車が走り京都市内は地下化されて地下鉄東西線へ直通運転されてます。
この様に路面電車と電気鉄道の中間的存在があり境界が曖昧模糊としてますが、両者を区分する方法が一つだけあります。 路面電車(軌道線)と電気鉄道(鉄道線)では関連法令が異なり、それに基づき許認可されるのです。
【ウィキペディアより】
意外な事に江ノ電は『鉄道線』、大津線は『軌道線』の認可を受けてます。 鉄道線は路上を走れず、軌道線は最大車長30mで共に法令違反ですが、個別申請で認可を受けてます。 この法令の違いを逆手に取った電鉄会社があります、阪神電鉄です。
阪神は1905年開業の大手私鉄として古い電鉄会社です。 鉄道敷設認可を受ける際、鉄道線では官営鉄道(国鉄)と競合し認可が受け難い為、路線一部が併用軌道の軌道線として認可取得しました。 併用軌道が何mで何処だったか不明ですが認可通り建設し、後に併用軌道を廃止して鉄道線になってます、『作っちまえばこちらの物』だったのでしょう。
阪神電鉄開業時120年前の車両です。 木製ダブルルーフ車体のポール集電単行電車、どう見ても路面電車です。 チンスポイラー状の物は併用軌道用排障器でしょうか。 『待たずに乗れる阪神電車』のキャッチコピーで阪神間を往復してました。
時代は不明ですが、単行運転輸送力が限界に達し、統括制御可能な301形投入で多連運転を開始しました。 301形は排障器付きですが後継311形にはないので、この間に併用軌道を廃止して鉄道繊になったと思われます。
以上の様に路面電車と電気鉄道には法令上の区分しかなく、見た目で判断できないとご理解いただけたと思います。 江ノ電が電気鉄道で、地下鉄乗入大津線が路面電車とはね。
ではまた。