Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

Hyper-G湖南仕様改修④さて次は

Hyper-G湖南仕様改修は、奥の手回路採用で蒸機常点灯問題解決の目途が立ちました。

【『Hyper-G湖南仕様改修①』より転載】
でもまだ4件の要改善点の③番が解決しただけ、今回は④番と②番の片付けを行います。


2.蒸機速度計表示不一致問題
元々この問題は個別改善不能な問題でした、しかし常点灯性能と密接な関係がありその改善によりほぼ解消すると予想してました、解説用にまず出力電圧特性変化を計測しました。

従来回路と奥の手回路はToffが異なるので出力電圧も異なり、その関係は上図の様になります。 横軸はコンパレータデューティー比で、Vcomp電圧と読み替えてもOKです。 19.5Ω負荷条件で、ショットキーダイオード追加により出力電圧が0.55V低下してます。

Hyper-G速度計は常点灯調整時0km/h表示、ノッチオンで上昇するVcomp電圧差を車種選択SWでギア比差を補正して表示してます。 常点灯調整は走行開始電圧から余裕を持たせる必要があり、ノッチオン時則発車でなく、速度計表示10km/h前後で走行開始します。

検収試験で問題のなかったキハ58で従来回路/奥の手海路の調整と表示を考えます。 従来回路常点灯1.0V、走行開始1.5Vで図示しました。 奥の手回路の場合は赤矢印に平行移動するだけで表示特性変化なし、変化するのは常点灯調整ダイアル目盛り位置だけです。

蒸機の従来回路は検収試験で常点灯可能範囲なし、当社再現試験で最小安定発振周波数ピンポイントですから余裕ゼロ、ノッチオン即走行開始し速度計も上昇します。 奥の手回路は最小安定発振周波数で十分な常点灯輝度が得られました。 ここでノッチオンすると一瞬間を置いて速度計表示10km/h前後で走行開始し、同一速度計表示電圧が0.55V下がります。

【生野駅夜景】
検収試験結果では25km/h表示時の蒸機感覚速度が45km/hでした。 この20km/h差が半分弱にはなりますが完全一致は??です。 0.55V差は19.5Ω、1M7連室内灯点灯負荷条件で、蒸機単行想定47Ω(0.24A)負荷では0.55Vが0.67Vになり感覚速度が一致する方向です。


コアレスモーター車の電圧vs速度特性は通常モーター車と異なっており、再検収試験で確認していただき、残念ながらコアレスモーター蒸機速度計を現状のLOCOモードで使用するか、1.4倍表示のEC/DCモードで使用するか選択してもらうしか方法がありません。


3.各ノッチ加速特性改修
要改善3点目は納入仕様のノッチ3-5が高加速で使い難く1・2で十分と言う内容でした。

納入仕様ベースは当社延伸線用4ノッチ仕様で、参考にE231系加速特性を記入してます。 E231系は仕様が3種あり、中距離運転線区用は2.7km/h/sec、30秒で81km/hの加速特性で、一番緩い傾斜ラインで示してます、ダッシュ力より省エネ重視です。 他に3km/h/sec、3.3km/h/secの仕様があり、一番高加速タイプは山手線等駅間距離が短く運転密度が高い線区用で30秒で99km/hの俊足です、一番急傾斜のラインで示してます。

送品仕様は4⇒5ノッチ化、出力高電圧化の変更に加え、安全性保証回路損失増加補償等様々な変更をしてます。 今回指摘を受けそのプロセスを詳細に追った処、ノッチ1・2がE231系換算値相当でベース仕様よりほぼ1ノッチ分高加速になっていたミスを発見しました。


蒸機が新型電車と同じ加速特性では実感を損ない要改修です。 加速率を低下するには最高出力電圧を下げる方法と、最高出力電圧到達時間を長くする方法があります。 お客様の『がおう☆』さん希望に従い後者を選択しました、何たって神様の声ですからね(笑)

速度制御回路のR63~R71の9本の抵抗か各ノッチ加速特性と惰行特性を決めてます、最小変更で最大効果と言うより手抜き策としてR67 33kΩを66kΩに変更する方法を選びました。 C51アルミ電解コンデンサ330μF充電で加速、放電で惰行とブレーキ特性が決まります。

R63~R66はマスコンロータリースイッチに実装されてます。 高機能基板に戻った場所にR67 33kΩ、そこからジャンパー線2本で330μFアルミ電解コンデンサに接続されてます。 図黒点線ジャンパー線を33kΩ抵抗に置き換えれば改修完了なので簡単です。

この変更で上表の様に加速特性は2/3弱から半分に低下し、一方で惰行時速度低下が少しゆっくりになります。 納入仕様はブレーキボリュームSWオン時458kΩ⇒82kΩに放電抵抗変化してますが、目立つ速度段付きが発生してないので問題ないと判断しました。

作図して視覚的に検証します。 ノッチ1はゆっくり加速になり、納入仕様ノッチ1は改修仕様ノッチ2.3相当に、ノッチ2はノッチ3.8相当に変化しました。 車種によりノッチ1-4(ノッチ5は急加速用)を使い分けられる特性に改善されました。 なお実車加速特性は本図上で直線になりますので、ノッチ2発車後2⇒3⇒4と進める操作法もあると思います。


残るは安全性保証回路非動作問題だけですが、これが結構厄介なのです。 再現実験含めて作戦を立案中です、もう少しお待ちください(滝汗)


ではまた。

Hyper-G湖南仕様改修③奥の手とは?

前回出力トランジスタToffを短縮する回路手段『奥の手』で蒸機常点灯性能が大幅に改善される様子を紹介しました、今回はその種明かしです。

【生野トンネル】
公開に当たり解説用に追加実験を行いましたが、お断りした様に100%の自信を持てないので推奨できません、採用の際は各自判断による自己責任でお願いします。 また専門的な質問をされてもここで公開した解釈以上はお答えできませんので、予めご了承ください。


★奥の手とは?
出典を再発見できませんでしたが、スイッチング電源研究論文に『Toffを更に短縮するには●●●が有効と言われている』の●●●とは、『コレクタ・ベース間にショットキーダイオード追加』と書いてあったのです。

前回改善効果を掲載した回路は、上図の様に出力トランジスタ2SA1359コレクタ・ベース間にショットキーダイオードBAT43を追加してます。 

低損失テープLED室内灯検討時に購入したBAT43の残りで実験しました。

【BAT43データシートより】
ショットキーダイオードはTR01/TR02のベース・エミッタ間やシリコンダイオード順電圧約0.7Vより順電圧が低く、BAT43は機内温度上昇込みの40-50℃、この用法の使用条件では0.2~0.3Vと低くなってます。


★従来回路の動作解説
奥の手回路の動作解説の前にオリジナル出力回路動作を復習します。

TR01オフ時はTR02ベース電流が流れないのでTR02もオフ、2個のトランジスタで構成される電子スイッチはオフで出力0Vです。

TR01オン時はR14/R13でベース電流22.5mAが流れTR02がオンします、TR02エミッタは電源電圧12V、ベースは0.7V低い11.3Vです。 出力コレクタはトランジスタが損失ゼロのスイッチなら12Vですが、コレクタ・エミッタ間電圧Vceだけ低い電圧になります。 Vceはベース電流Ibが大きくなれば小さくなり、コレクタ電流Icが大きくなれば大きくなります。

【2SA1359データシートより作図】
コレクタ・エミッタ間電圧Vceとコレクタ電流Icとの積がトランジスタの損失になり熱に変わります、Hyper-Gはベース電流22.5mA動作点を選択し、最大出力1.2A時の損失を0.84W、トランジスタ最大定格1.2W/50℃の70%にディレーティング(余裕30%)してます。


ベース電流Ibを増やせばVceが下がり損失も減るのですができない理由があります。 トランジスタはオンは簡単ですがオフに時間Toffが掛かる特性があり、ベース電流Ibを増やすと益々オフし難く、つまりToffが長くなるのです。 ピンポイントで動作点選択してます。

オフし難さは波形からも読み取れます。 TR01は黄矢印部でオフしてますが電圧12Vにならず11.3Vが横軸4目盛り2μsec続いてます、この間微小なベース電流が流れTR02はオフせずコレクタは12Vのまま、スイッチ切ってもすぐにオフしない不完全スイッチなのです。


★奥の手回路の動作解説
さて奥の手回路の動作解説ですが、論理明快にスパッと説明できません、Tr02オン時に各部を流れる電流で考えて行きます。

エミッタ電圧12V、ベース電圧11.3VなのでR13の電流は24mA固定、R14の電流1.5mAを引くと22.5mAになります。 従来回路ではこの22.5mAがベース電流Ibでしたが、奥の手回路ではIbとショットキーダイオード電流Isの和が22.5mAになります。 負荷電流Icが小さい時はベース電流が少なくて良いのでIsが大きく、Icが大きい時はIsが小さくなります。 IcによりVceが変化するのでIb/Isを計算式で求めるのは非常に困難です。


TR01がオンからオフする過程では、コレクタ・ベース間ショットキーダイオードが、エミッタ・ベース間0.7Vより低い順電圧なのでTR02を早くオフさせToffを短くしてます。

波形で説明するとショットキーダイオードの効果でTR01オフ時にオレンジ矢印部電圧をすぐに12VにしてTR02をオフさせToffを短縮してます。 見方を変えるとショットキーダイオードはTR02コレクタをベースより順電圧高い電圧にクリップする働きをしており、Vceを大きくし損失も増えます。 この損失増加すなわち発熱量増加を検証する必要があります。

計算で求めるのが困難なら現物確認が一番です、デューティー100%出力電圧最大で負荷470Ω/25mAと19.5Ω/0.6Aの2条件でショットキーダイオード有無によるVceを実測しました。 0.6AではVceが0.23Vから0.5Vへ増大、損失は0.14Wから0.3Wに増えてます。


最大負荷1.2AのトランジスタVceは0.7Vでコレクタとベース電圧が同じになるのでショットキーダイオードは非導通、ないのと同じです。 0.6A以上が図の実線になるか、点線の様に早く従来回路と同じになるか不明ですはが、トランジスタ最大損失は同じで許容内です。


★高速スイッチングダイオードを試してみた
トランジスタ損失増加は許容内でも発熱量増加は避けたいですし、出力電圧0.2~0.3V低下もできれば低く抑えたいのが本音です。 順電圧0.2~0.3V低損失ショットキーダイオードを使ったからで、順電圧0.4~0.5Vのダイオードがあれば良い処取りができそうです。

秋月で順電圧高目のショットキーダイオード探して手配する前に、手持ちの汎用高速スイッチングダイオードを試してみる事にしました。

【1N4148データシートより】
高速と言ってもシリコンダイオードなので使用域順電圧は0.55~0.69Vと高目ですが、TR02エミッタ。ベース順電圧より少しでも低ければ効果があるハズと追加実験しました。

実験結果は上図の通り効果ありました。 Toffが2.0μsecから1.0μsecになるだけでBAT43の0.5μsecには及びません、主目的の蒸機常点灯性能改善が不十分では意味がないので1N4148の実験はこれで打ち切りました。

【前号より転載】
その後秋月ショットキーダイオードを調べましたが、リードタイプで仕様を満たす品種はなくBAT43採用を決めました。 パルス幅1μsecを切る出力波形は何度見ても魅力的です。


ではまた。

Hyper-G湖南仕様改修②奥の手使います

Hyper-G湖南仕様蒸機常点灯性能は検収試験結果が再現しませんでしたが、調整範囲がピンポイントで実用性能NGと判明しました。

【『湖南電源⑬物作りって難しい・・・』より転載】
蒸機常点灯性能OKと判断したこの実験は、ユニジョイナー経年劣化による従来線電圧低下で、上図0.4V(車両近傍)の電源出力電圧は推定0.7Vで実際は走行開始電圧でした。 TOMIX N-1000-CLに劣る蒸機常点灯性能は到底許容できず改善しなければなりません。

【『Hyper-G湖南仕様改修①アララ再現しない』より転載】
市販電源問題点改善設計が蒸機常点灯性能を悪くしてる皮肉な結果で、良さを活かしかつ問題解決するには最小安定発振時パルス幅を狭くする以外方法がなくなりました。


★検収試験モーター唸り音の考察
検収試験で発生し再現しなかったモーター唸り音、現場確認しないと真相究明できませんが、全く解らんでは話にならないので一番ありそうなシナリオで考察します。

PWM電源出力ゼロから約20kHzで安定発振し約0.5Vの出力を得る過程に、Vcompが三角波の先端部分で間欠的に発振するエリアがあります。 上図がHyper-G湖南仕様の間欠発振状態で、安定発振時横軸2msec/目盛りに50パルス発生しますが歯抜けになってます。


歯抜けの仕方はランダムで、このデータは数msec~10msec弱毎に数発のパルスが発生しており、その周期は100Hz~300Hzになります。 コアレスモーターが間欠発振パルスに反応すると検収試験動画に録音された様な唸り音になります。 当社実験ではこの波形でも唸り音発生しませんでした。 眼は悪いですが耳は聞こえますので間違いないと思います。

【『PWM電源後方HLチラツキ 番外編③』より転載】
では何故唸り音発生有無の違いがあったのか?、ここからは推論ですが給電経路影響による波形変化ではないかと思います。 N-1001-CLに低損失逆起電力保護ダイオードを追加したDD51実験計測データですが、電源出力と車両近傍レールでこれだけ変化してます。


プラス側/マイナス側どちらが支配的か解りませんが、給電経路影響波形変化で間欠発振にコアレスモーターが反応したと考えられます。 とすれば最小安定発振時パルス幅を狭くする蒸機常点灯性能改善策を実施すれば、モーター唸り音問題も解決すると考えてます。


★最小安定発振時パルス幅を狭くする『奥の手』
実は自社用電源に採用予定の奥の手があります。 Hyper-G設計情報収集で読み漁ったスイッチング電源研究論文に『Toffを更に短縮するには●●●が有効と言われている』という伝聞形式記述があり実験結果はありませんでしたが、試したら非常に効果があったのです。

【駅前横丁の映画館】
その方法の先行実施例見た事ありませんし、筆者は電源は専門外で一般的電気知識を持つだけの門外漢です。 Hyper-G湖南仕様性能改善策として今回効果を、次回構成と動作解釈を公開しますが、推奨しませんし結果責任も負えません。 筆者自己責任採用回路ですので、電源プロの方から突っ込まれても回答ができません、そのお積りでお読みください。

実際に蒸機と湖南仕様電源を使った実験は面倒で破損リスクもあるので、実験装置組み換えを行います。 HLは0.5Vで1mAと想定し、470Ω抵抗をダミー負荷として接続しました。

手持ちHyper-G基板を使って実験します、安全性保証回路は外してあり、オシロスコーププローブ接続端子を半田付けしてあります。

Hyper-G出力回路です、コンパレータ出力でオン/オフするTR01と、出力トランジスタTR02コレクタにオシロスコーププローブ接続端子を設けてます、ここで復習を少々。

コンパレータはVcompと三角波の電圧を比較し、Vcomp変化に合わせデューティー比が変化するパルスを出力してTR01をオン/オフします。 TR01がTR02をオン/オフしてPWM波を発生しますが、TR01オフよりTR02オフはToffだけ遅れます。 Toff最小になる様にTR01/TR02はベース電流を絞ってオーバードライブを避ける動作点に設定してます。

最小安定発振電圧は0.6Vに上昇、その時のTR01/TR02コレクタ波形です。 前回より横軸を倍に伸ばし2目盛り1μsecです。 赤波形でTR01がオフしてもTR02はオフせず2μsec後にようやくオフしてます。 以前計測した時はこんな酷くなかったと何が違うか考えました 

以前の計測はもっと重い負荷だったと470Ωを19.5Ωに交換しました、消費電流24倍です。 最小安定発振電圧は0.5Vに下がりToffは1.1μsecに短くなり以前の結果と同じです。 蒸機HLのみ点灯する軽負荷はHyper-Gにとって苦手な動作条件と解りました。 470Ω負荷に戻し最小安定発振電圧0.6Vに再設定し『奥の手』追加します、1部品追加するだけです。


★『奥の手』の効果
奥の手はToffを大幅に短くする回路手段です、今回はその効果を具体的に開示します。

奥の手追加でToffは2μsecから0.5μsecに劇的に減少、出力電圧は0.6Vから1/3以下の0.18Vになりました、蒸機常点灯可能な出力電圧波形です。

その状態で出力電圧0.5Vに調整した時の波形です、Toffは0.5μsecで変化ありません。 こうなると実際に蒸機で常点灯評価したくなります。

早速奥の手の効果検証しました、ピンポイントでなく常点灯調整範囲の余裕があります。 蒸機負荷の最小安定発振状態でTOMIX N-1000-CLよりかなり明るく点灯してます。

その時の電源出力電圧は93mV、0.093Vです。 N-1000-CLより低電圧で明るく点灯するのは波形がシャープでピーク電圧が高いからです。

これがその電源出力波形、今度は横軸1目盛り1μsecです、蒸機負荷に変わってもToff 0.5μsecは変わりません、黄点線四角部のモーター逆起電力がパルス出力を相殺し出力電圧を下げてます。 またこの波形なら牽引客車のテープLED室内灯を点灯可能です。

【『Hyper-G湖南仕様改修①アララ再現しない』より転載】
改善前常点灯波形と比較すると、パルス幅で差が歴然とします。 次回『奥の手』として何をしたのか公開します。


ではまた。