Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

Hyper-G湖南仕様改修③奥の手とは?

前回出力トランジスタToffを短縮する回路手段『奥の手』で蒸機常点灯性能が大幅に改善される様子を紹介しました、今回はその種明かしです。

【生野トンネル】
公開に当たり解説用に追加実験を行いましたが、お断りした様に100%の自信を持てないので推奨できません、採用の際は各自判断による自己責任でお願いします。 また専門的な質問をされてもここで公開した解釈以上はお答えできませんので、予めご了承ください。


★奥の手とは?
出典を再発見できませんでしたが、スイッチング電源研究論文に『Toffを更に短縮するには●●●が有効と言われている』の●●●とは、『コレクタ・ベース間にショットキーダイオード追加』と書いてあったのです。

前回改善効果を掲載した回路は、上図の様に出力トランジスタ2SA1359コレクタ・ベース間にショットキーダイオードBAT43を追加してます。 

低損失テープLED室内灯検討時に購入したBAT43の残りで実験しました。

【BAT43データシートより】
ショットキーダイオードはTR01/TR02のベース・エミッタ間やシリコンダイオード順電圧約0.7Vより順電圧が低く、BAT43は機内温度上昇込みの40-50℃、この用法の使用条件では0.2~0.3Vと低くなってます。


★従来回路の動作解説
奥の手回路の動作解説の前にオリジナル出力回路動作を復習します。

TR01オフ時はTR02ベース電流が流れないのでTR02もオフ、2個のトランジスタで構成される電子スイッチはオフで出力0Vです。

TR01オン時はR14/R13でベース電流22.5mAが流れTR02がオンします、TR02エミッタは電源電圧12V、ベースは0.7V低い11.3Vです。 出力コレクタはトランジスタが損失ゼロのスイッチなら12Vですが、コレクタ・エミッタ間電圧Vceだけ低い電圧になります。 Vceはベース電流Ibが大きくなれば小さくなり、コレクタ電流Icが大きくなれば大きくなります。

【2SA1359データシートより作図】
コレクタ・エミッタ間電圧Vceとコレクタ電流Icとの積がトランジスタの損失になり熱に変わります、Hyper-Gはベース電流22.5mA動作点を選択し、最大出力1.2A時の損失を0.84W、トランジスタ最大定格1.2W/50℃の70%にディレーティング(余裕30%)してます。


ベース電流Ibを増やせばVceが下がり損失も減るのですができない理由があります。 トランジスタはオンは簡単ですがオフに時間Toffが掛かる特性があり、ベース電流Ibを増やすと益々オフし難く、つまりToffが長くなるのです。 ピンポイントで動作点選択してます。

オフし難さは波形からも読み取れます。 TR01は黄矢印部でオフしてますが電圧12Vにならず11.3Vが横軸4目盛り2μsec続いてます、この間微小なベース電流が流れTR02はオフせずコレクタは12Vのまま、スイッチ切ってもすぐにオフしない不完全スイッチなのです。


★奥の手回路の動作解説
さて奥の手回路の動作解説ですが、論理明快にスパッと説明できません、Tr02オン時に各部を流れる電流で考えて行きます。

エミッタ電圧12V、ベース電圧11.3VなのでR13の電流は24mA固定、R14の電流1.5mAを引くと22.5mAになります。 従来回路ではこの22.5mAがベース電流Ibでしたが、奥の手回路ではIbとショットキーダイオード電流Isの和が22.5mAになります。 負荷電流Icが小さい時はベース電流が少なくて良いのでIsが大きく、Icが大きい時はIsが小さくなります。 IcによりVceが変化するのでIb/Isを計算式で求めるのは非常に困難です。


TR01がオンからオフする過程では、コレクタ・ベース間ショットキーダイオードが、エミッタ・ベース間0.7Vより低い順電圧なのでTR02を早くオフさせToffを短くしてます。

波形で説明するとショットキーダイオードの効果でTR01オフ時にオレンジ矢印部電圧をすぐに12VにしてTR02をオフさせToffを短縮してます。 見方を変えるとショットキーダイオードはTR02コレクタをベースより順電圧高い電圧にクリップする働きをしており、Vceを大きくし損失も増えます。 この損失増加すなわち発熱量増加を検証する必要があります。

計算で求めるのが困難なら現物確認が一番です、デューティー100%出力電圧最大で負荷470Ω/25mAと19.5Ω/0.6Aの2条件でショットキーダイオード有無によるVceを実測しました。 0.6AではVceが0.23Vから0.5Vへ増大、損失は0.14Wから0.3Wに増えてます。


最大負荷1.2AのトランジスタVceは0.7Vでコレクタとベース電圧が同じになるのでショットキーダイオードは非導通、ないのと同じです。 0.6A以上が図の実線になるか、点線の様に早く従来回路と同じになるか不明ですはが、トランジスタ最大損失は同じで許容内です。


★高速スイッチングダイオードを試してみた
トランジスタ損失増加は許容内でも発熱量増加は避けたいですし、出力電圧0.2~0.3V低下もできれば低く抑えたいのが本音です。 順電圧0.2~0.3V低損失ショットキーダイオードを使ったからで、順電圧0.4~0.5Vのダイオードがあれば良い処取りができそうです。

秋月で順電圧高目のショットキーダイオード探して手配する前に、手持ちの汎用高速スイッチングダイオードを試してみる事にしました。

【1N4148データシートより】
高速と言ってもシリコンダイオードなので使用域順電圧は0.55~0.69Vと高目ですが、TR02エミッタ。ベース順電圧より少しでも低ければ効果があるハズと追加実験しました。

実験結果は上図の通り効果ありました。 Toffが2.0μsecから1.0μsecになるだけでBAT43の0.5μsecには及びません、主目的の蒸機常点灯性能改善が不十分では意味がないので1N4148の実験はこれで打ち切りました。

【前号より転載】
その後秋月ショットキーダイオードを調べましたが、リードタイプで仕様を満たす品種はなくBAT43採用を決めました。 パルス幅1μsecを切る出力波形は何度見ても魅力的です。


ではまた。

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