Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

湖南電源 戦い済んで・・・

前回までで湖南電源検収試験の要改善項目全てを解決できました。

【小川を渡る急行】
結果から見れば大きな回り道をした訳ですが、何が起きてて何故こうなったか、設計者として理解し自分を納得させる為に考察しました。


6.電源製作のレビューと考察
6-1.安全性保証回路
新安全性保証回路完成後に実施したショート試験の結果をまとめます。

ショートしたらすぐ動作して欲しい安全性保証回路が中々動作しない。 動作するのはポリスイッチトリップ時と、ピークホールドコンパレータ方式パッチ回路搭載時だけでした。 動作時の共通項はラッチ回路オフトランジスタを一定時間以上オフし続ける事です。

【過去記事より転載】
つまり両CH設置のTR93/TR94はポリスイッチトリップ時だけ本来の役割を果たしますが、パルス幅が狭い場合はパルス期間だけTR92をオフする事ができても、TR91のTofにより再度オンして動作してませんでした。

【駅出口付近の点景】
この形式のラッチ回路を狭いパルスでオフするのは難しいと思い知らされました。 諸悪の根源Toffは一体どのくらいか? 3本のプローブで/外部トリガーしないと難しい計測ですが、犯人の顔見たくて計測しました。

マニュアルトリガーで30回ほどトライし捕まえました。 TR92がオフしてからTR91がオフするまで30μsecでした。 3万分の1秒ですから一瞬ですが、回路動作的には結構長い時間、PWM周期が40-50μsecなので数μsecの常点灯パルスで動作するハズありません。


ラッチ回路(TR91コレクタ)オフした後にTR92ベースが0.6Vまで上昇してます、再度オンしかねない電圧です。 これはラッチ回路オフと同時にパッチ回路コンパレータもオフし、ラッチ回路オフする仕事を止めてしまうからで、実動作OKでも波形はまだ不安定です。

【過去記事より転載】
現在の安全性保証回路は3代目、ピークホールドコンパレータ方式パッチ回路付きは3.5代目です。 初めてラッチ回路使った初代は全く動作せず、ラッチ回路オフに22msec、3代目の700倍の時間が掛かってました。

【過去記事より転載】
電源ラインノイズ除去に設置したアルミ電解コンデンサ充電がラッチ回路オフを妨げてたのが原因で、ショットキーダイオード追加の2代目になりました。 損失増加覚悟で金属皮膜抵抗を採用し、ショート時にTR93/TR94が確実にオンする様に改修しました。

【過去記事より転載】
2代目ラッチ回路応答時間は0.4msecに改善され、中高電圧で動作する様になりましたが不安定、結局金属皮膜抵抗をポリスイッチに戻し改善、2.5代目になりました。 ショート期間のみラッチ回路オフTRオンする金属皮膜抵抗より、トリップして一定時間状態保持するポリスイッチが良かった理由が、今にして正しく理解できました、遅いですが・・・。

【跨線橋を潜って 昼】
この2.5代目を『gaou』さんへ送品して検収試験落第返送、Hyper-G高速動作が原因のヒゲ問題も発覚し大いに悩まされした、電源製作で一番凹み逃げ出したい気分の時期でした。 ヒゲ対策と損失低減、安全性保証回路動作確実性向上を目的に3代目に移行しました。

【過去記事より転載】
2代目から2.5代目への性能改善検討過程で電圧比較ピークホールド方式構想がありましたが、設計全面変更の踏ん切りが付かず見送りました。 この構想が今回のパッチ回路になった訳で、それでヨシとするしかありません。 やっと長いトンネル抜けられました。


6-2.1CH Hyper-Gは?
2CH欲張り安全性保証回路追加したから泥沼に嵌ったと考えてましたが違う様です。 湖南電源は走行出力だけ、Hyper-Gは全回路まとめて1.3Aポリスイッチなので動作点は低い可能性ありますが、1V以下では動作しないと思います、常点灯域評価の記憶がありません。

【跨線橋を潜って 夜】
つまり、安全性保証回路追加が泥沼でなく、慣れないラッチ回路使いこなしの泥沼で、3代目でポリスイッチ1個のHyper-Gと同等になったと考えるのが正しい理解だと思います。 Hyper-Gは出力トランジスタ焼損する事はありませんし、ショート検出と保護回路動作感度はN-1001-CLとほぼ同等(少し劣る)なので、自作電源性能としては十分だと思います。


6-3.好奇心満足目的の追加試験
パッチ回路追加で目標仕様達成したのでこのまま送品すべきです。 ポリスイッチトリップ時しか動作しないTR93/TR94は不要ですが外しません、二重安全回路で外すメリットないからです。 でもどうしても確認したい事があります。 パッチ回路付ければ損失になってるショットキーダイオードを外せないかです、約0.2Vですが確実な効果があります。

このバカデカイ部品のリード線をワニ口ジャンパーで接続するだけで簡単に試験できます。 電源ラインアルミ電解コンデンサ放電時間は部品変更で1/20になってますし、コンパレータ電圧か下がりオフするまでピークホールド回路は動作し続けるから不要と考えた訳です。 結果は惨敗、蒸機常点灯上限電圧0.6Vで動作せず、2倍の1.2Vでも動作しませんでした。

試験結果は期待に反しましたが、無駄なステップではなかった証明になっただけでヨシとします。 となるともう一つ試験したくなりました。

現状湖南電源はラッチ回路オフと同時にコンパレータオフですが、電源変えるとラッチ回路オフ後も一定時間コンパレータオンしてダメ押しします。 ラッチ回路オフ時過渡応答にはバタつきがあり、この変更で安全性保証回路動作安定性が上がればやるべきだからです。

パッチ回路電源線接続をショトキーダイオード先に変更しました。 ショート試験結果は0.40Vで動作せず、0.45Vで5/5動作で変更前と同じです。

Toffを計測すると30μsecで同じ、ラッチ回路オフ後TR92ベース電圧上昇が消えてます。 回路系アルミ電解コンデンサ充電でパッチ回路コンパレータがオンし続けてるからです。 高安定度のこの回路採用します。 この試験は筆者将来計画の基礎データになります、その話はまた別途、今は出荷準備して送品し『gzou』さんとの約束を果たすのが優先です。


ではまた。

湖南電源 出た!逆転サヨナラHR

やりましたやりました、ついに最後まで残った安全性保証回路動作を100%満足する形で解決し、湖南電源完成送品の目途が立ちました。

【小川を渡る急行】


5-4.パッチ回路の改修
前回詳細な波形観察により、過電流検出パルス幅が狭いとラッチ回路を一旦オフしても長いToffで再度オンし保護回路が動作してない実態が解りました。 長期間悩まされ続けてきた現象の犯人に突然出逢った様に感じました。 犯人が解れば解決法も見えてきます。

回路系GNDは正常時0.4V以下、ショート時0.8Vと明確な差があります。 0.8Vの時間不足で保護回路動作しないなら長くすれば良い、回路系GND最高電圧を保持するピークホールド回路追加すればどうかと考えました、とは言えここまで連戦連敗で自信はありません。

赤点線部がピークホールド回路、回路系GNDピーク電圧をショットキーダイオードを通してコンデンサに充電し、回路系GND電圧が下がってもピーク電圧を保持し、コンパレータをオンし続ける動作をします。 並列100kΩは保護回路動作に十分長く、リセット操作感的に短い時間で充電を抜く放電抵抗で、コンパレータ端子抵抗数MΩで問題なければ不要です。

【映画館裏の空地】
ショートした最初のパルスでは充電電流が大きく回路系GND0.8Vの場合0.5V程度しか充電されませんが、パルス毎に充電電流が減ると共に順電圧が低下し、最終的に約0.7Vまで充電されます。 その動作からチャージポンプと呼ばれてます。 比較電圧が現状0.58Vでは感度が悪いので、ショットキーダイオード順電圧損失に合わせで基準電圧を下げます。

1N4148をショットキーダイオードに替える方法もありますが、正常動作時の誤動作が怖いので33kΩを100kΩに変更し約0.05V下げるに留めます。 ピークホールド回路追加するとジョイント通過時ノイズ等1万分の1秒で保護回路が動作してしまう可能性があるからです。

0.58Vが0.51Vに下がりました、可能なら0.45V程度にしたかったのですがヨシとします。

赤字部分が変更及び追加回路、コンデンサ並列抵抗は必要性確認後コンデンサに裏付け予定でしたが、最終的に不要で追加は4部品で済みました。


5-5.改修回路の評価
蒸機常点灯上限電圧0.58Vに調整して試験開始、この電圧での確実動作が目標だからです。 結果は百発百中で保護回路が動作しました。

前回と同じ試験をしました。 電圧出力状態/負荷3条件ショート試験では、負荷に係らず0.45Vで5/5動作、グレーゾーンはありません。 ショートさせて常点灯電圧上昇させる試験も0.45Vで動作し、ようやく狙った性能クリアできました。 しかし結果良ければ全てヨシと言う訳には行きません、動作マージンや動作しない0.45V未満の確認が必要です。

まずは蒸機常点灯上限電圧0.58Vの出力(2V/目盛)と回路系GND(0.2V/目盛)の確認からで、負荷10.8Ωで回路系GND0.34Vは変化なしです。

この時のピークホールド電圧を計測しました。 0.25Vでしたのでショットキーダイオード挿入損失が0.09Vでピークホールドしてると解ります。 そしてショート時はこの電圧が0.51Vを超え保護回路が動作してます。

次に保護回路非動作の常点灯0.40Vに調整して計測、出力パルス幅が少し狭くなります。 回路系GND電圧は0.34Vで変化なし、ただしピークの平坦部分がなくなり尖ってます。

0.40V時のピークホールド電圧は、回路系GND波形の違いを反映し0.21Vで、0.58V時より0.04V下がってます。 この小さな差が保護回路動作/非動作を分ける鍵になってます。

0.40VでショートするとPWM出力が約2Vに下がり、ピークホールド電圧は0.21Vから0.47Vに上昇します。 コンパレータ基準電圧0.51Vより低いので保護回路は動作してません。

【田舎町の夕方ラッシュ】・・・車が増えた昭和40年代後半の風景です。
以上でピークホールドコンパレータ方式パッチ回路は設計意図通りに動作すると確認できました。 基準電圧を0.40-0.45Vに下げれば更に低い0.3V前後での動作も可能ですが、実施しません。 常点灯調整時に必ず動作する現状の保護回路感度で十分と考えるからです。


久し振りに気分爽快!、ずっと心の重りになってた暗雲が晴れました。 これで遅ればせながら『gaou』さんとの約束を果たし『露太本線スペシャル電源』をお届けできます。 自社用は各CHに1.3Aポリスイッチでオシマイ、世界にたった一つの電源になりそうです。


ではまた。

湖南電源 成功せずも進展あり

最後の悪足掻き実践編です、アドオンパイパス回路なので効果がなければ外すだけ、でもそうなったらもう打つ手がなくお手上げです。

【小川を渡る急行】
湖南電源は今年度内に送品仕事完了にしたいので、電源設計の専門的内容に係る筆者備忘録兼『gaou』さんへの進捗報告に付き合わせる結果になりますが、暫時ご容赦ください。


5-2.パッチ回路製作と取付
前回設計した部品配置図に従いパッチ回路を製作します、わずか7部品なので気楽です。

ブレッドボードタイプユニバーサル基板から必要サイズを切り出し、所定位置に取付穴を空けました、ドリルで揉んで少し長孔にしてます。

➊トランジスタ端子接続ジャンパー線5本を挿します。 実はこの時点でジャンパー線挿す穴間違えてます、後で気付きそのまま進めました。
➋トランジスタ足加工し寝かせて基板穴に挿し3端子半田付け完了。
➌コンパレータIC挿入・半田付け、ジャンパー線は挿しただけです。
➍抵抗3本、ダイオード1本挿しながら順次半田付けで完成しました。

【TOMIXフィーダー延長コード】
配線には昨年購入してコネクタハウジング破壊し、配線抵抗値計測で御用済みになったコレを使います。 在庫してても使う当てありませんので。

部品実装も配線もLED照明付き拡大鏡頼りの作業です、パッチ回路と安全性保証回路を配線5本で接続しました。 中央上トリガーコンデンサを干渉しない位置に移動してます。

テスターで念入りに配線と半田ブリッジがない事を確認してから電源オンし無事立ち上がりました。 最初は特性図から0.55Vを狙った基準電圧をチェック、0.58VでOKです。 期待大のショート試験開始前にコンパレータ動作と各部波形をオシロで確認すると、何と!。

トランジスタが表裏逆向き、ベースとエミッタが反対になってます。 確認して実装したハズなのに基板180度回転させて取り付けたとしか思えません、初歩も初歩のミスです。

こんな恥かしい話を書きたくありませんでしたが、基板製作過程写真にバッチリ写ってますし、撮り直しはできません。 エミッタ-ベースに逆電圧12V掛けた2個を外して正しい向きに新品交換しました。 露太本線はボケたかと嗤わば笑えと開き直るしかありません。


5-3.ショート試験と解析
パッチ回路追加を決めた時、これで蒸機常点灯上限電圧でも動作すると信じてました、ところがショートしても保護回路が動作しません。 一体何が起きてるか解析しました。

抵抗負荷で0.58V調整時のPWM出力と回路系GND波形は、パッチ回路追加前と同じです。 つまり正常時はパッチ回路追加影響はありません。

出力ショートするとピーク0.8Vだった回路系GNDが0.85Vになってますが、波形的にはパッチ回路追加前と大きな差はありません。

パッチ回路は回路系GNDが基準電圧0.58Vを超えるとトランジスタをオンする電圧コンパレータで、正常時出力なし、ショート時はピーク1.25Vのパルスが出ており動作してます。

時間軸を10倍に拡大、1μsec/目盛です。 コンパレータ出力=トランジスタベースなので、0.8Vの1.0μsecは間違いなくトランジスタオンしてます、でもその後何で跳ね上がる?。

このトランジスタ動作点はベース電流2mA、オン時ベースエミッタ電圧は特性図から0.68Vで、実測値は0.8Vですが確実にオンしてます。 オン時コレクタエエミッタ電圧は0.1Vなので、ラッチ回路トランジスタベースが0.1Vでオフ、すなわち保護回路動作するハズです。

そのラッチ回路トランジスタベースを見ます。 正常時はラッチ回路オンで電源供給なので、PWMノイズがありますが0.76Vでオンしてます。

ショートするとトランジスタベース波形が暴れます。 特性図の様に約0.1Vまで下がってるのでオフしてますが、その後再びオンてます。

時間軸を10倍にすると、パッチ回路電圧コンパレータで約3μsecオフし再びオンする様子を観察できました。 この波形見て半年以上悩み続けた問題の原因が何か理解できました。

オリジナル回路/パッチ回路共に、安全性保証ラッチ回路をオフするパルスが入力してTR92がオフしても、TR91がオフするまでの時間遅れToffがあり、パルス幅が狭いとラッチ回路が再びオンして保護回路が動作しないのです。 蒸機常点灯が問題になった出力回路Toffは2μsecでしたが、損失低減優先のラッチ回路はかなり長くなってると思われます。

KATOハイパーD/スタンダードSXが出力段にパワーMOS FET採用した理由が解りましたが手遅れです。 でもTR91 Toffが原因ならまだ打つ手があります、もう少し足掻きます。


ではまた。