Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

TOMIX電気設計の検証 その7 PWM

レイアウト製作ブログか電子工作ブログか解らない状態になってしまいました。 TOMIX電気設計の検証もようやく最終回、今回はPWM電源回路解析とまとめです。


8.PWM電源回路の検証
8-1.PWMの原理
本シリーズは『露太本線の良く解る電気講座』の一環なので、電気が苦手な方も対象読者にしています。 従って最初にPWMの動作原理を簡単に解説します。

①図上段の三角波発振回路を構成します、電圧A-B間を行ったり来たりする波形です。
②図点線のVcompは速度調整ボリュームを回すと変化する電圧です。
③電圧比較器(コンパレータ)で①と②どちらが高い電圧か比較します。
④電圧比較器は比較結果により図下段の様にH(Vcc)かL(0V)を出力します。
⑤この出力をパワートランジスタで電流増幅(アンプ)して列車を走行させます。
できるだけ解り易く動作原理を説明しましたが、ご理解いただけたでしょうか。


8-2.TOMIX PWM電源回路の解析

回路基板のこの部分がPWM電源回路と走行回路パワートランジスタです。 実体配線図がないので、オシロスコープで解析するしかありません。

楕円部を拡大します。 IC型番は読めませんがオペアンプです、詳細説明と波形計測結果は省きます、基本通りの三角波発生回路です。 興味のある方は【三角波発振器】を参照してください。 電圧比較器を使わずD3、D4のダイオード2本で代用しています。

上図C103右側にピンを立て計測した三角波発振波形です、3.6V-7.8V、4.2Vの振幅で発振しています、周波数は21.1kHzでした。 次は電圧比較器の出力、走行回路パワートランジスタをオンさせる信号を探します。 ここからプローブ2本使います。


電気が苦手な読者には『何のことやらサッパリ解らん』と言われそうですが、ここが知りたい読者の為にザッと解説しますので、絵本でも見るつもりでお付き合いください。

速度調整ボリューム目盛1の三角波発振波形は、ゆっくり上がって早く下る鋸型で周波数が少し低くなっています。 重ねて表示した電圧比較器出力は、発振波形右下がり部だけ低い電圧(緑矢印)になっており、走行回路パワートランジスタをオンさせます。

電圧比較器出力プローブをDCフィーダー出力へ繋ぎ換えると、この様にパワートランジスタがオンした期間だけ11.8Vが出力され、オフの期間は0Vになっています。 モーターはDCフィーダー出力平均値を入力電圧と認識(積分)して車両を走行させます。

速度調整ボリューム目盛5が最初の三角波発振波形です。 パワートランジスタはオンとオフがほぼ半々になっています。 DCフィーダー平均出力電圧は約6Vです。

目盛7で三角波発振波形は目盛1と逆の鋸型になり、パワートランジスタオン期間が約80%になりました、DCフィーダー平均出力電圧は約10Vです。

目盛8-10間はパワートランジスタ常時オンでDCフィーダー出力は11.8V直流です。 以上の様にTOMIX PWM電源回路は教科書通りの動作をしています。 ただし速度調整ボリューム20%無駄遣いは要改善、許容差±5%標準部品使用で10%未満(KATOは7%)設計は容易です。 コピペしたけど製品動作条件に部品最適化ができてない印象です。


8-3.PWM周波数を下げる実験
PWM周波数約20kHz を下げる実験を行いました、1kHz程度に下げると低速性能が大幅に向上するからです、ArduinoアナログPWM出力で倉元駅構内自動運転の予備実験です。 成功すればN-1001-CL側面に周波数切替トグルスイッチを追加する計画です。

発振周波数を決めるC103から並列コンデンサ用リード線を引き出し、0.01μFセラミックコンデンサを付けてみました、C103容量不明なのでヤマカン当てずっぽうです。

最初の波形と同じに見えるかもしれませんが注目は赤矢印、時間軸が20倍違います。 振幅3,8V-7.6Vで0.4V小さくなってますがほぼ同じ波形です。 早速試運転、ロッド回転が4-5秒かかるほどスローが利きますが、致命的欠点はモーター唸り音でした。

未練が捨て切れず0.01μF直列で容量半分、0.005μFにしてみました。

ストレージオシロ時間軸を変えて計測し、周波数は1.82kHzに上昇しました。 スローは利きますがモーター唸り音は甲高くなっただけで聞こえました。 KATO、TOMIX両社のPWM周波数20kHzは人間の可聴周波数外にする目的と納得しました。 ArduinoアナログPWM出力で自動運転する筆者の夢は実現不可能になりました。


9.まとめ
TOMIX N-1001-CL分解調査まとめです、技術偏重とせず消費者目線でまとめました。

★良い点
堅実設計だけど無骨なKATO製品に対し、TOMIX製品はデザインが垢抜けており、様々な新提案でユーザーが欲しくなる商品企画が優れています。 制御機器でも実感的なワンハンドル操作やマスコン/惰行/ブレーキ操作、そして運転会などで便利な無線伝送、筆者も中身を知らなかったら欲しくなります。


★改善すべき点
優れた商品企画メリットをユーザーに提供する設計技術力が非常に貧弱でお粗末です。 特に以下2点は早急な改善が求められます。
①完全選択式電動ポイント
・導通信頼性の抜本改善をせずに『誰でも簡単に使える』と謳う資格はありません。
・切替必要力が変化する構造欠陥を改善しない限り、ユーザーが安心して使えません。
②制御機器の電気設計
・GNDを浮かす陳腐な保護回路は性能上・安全上即刻要改善、ゴミ箱行きです。
・部品/定数選定が初心者レベル、性能を落としユーザーに迷惑をかけています。


製品設計不良を改善し、ユーザーに愛され続けるTOMIXになる事を望みます。 [本項完]


ではまた。

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