Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

蒸機発煙装置の話

先日『1965年秋各地の運転会』で発煙装置付きナロー蒸機を紹介しましたが、その発煙装置の話を書きます。 リンクは控えますが発煙装置付きN蒸機を製作し、動画公開されてる方も居ますので、工作力のある方なら(筆者には絶対無理です)組込み可能だと思います。

【TMS1966年2月号表紙】
TMSに蒸機発煙装置についての記事が掲載されたのは1966年2月号でした。 表紙は前回の組立式個人レイアウトです、その前の水タンクとスポートも同号掲載です。 当時高校1年だった筆者はこの記事に夢中になり、所有C58に何としても組み込みたいと考えました。


◆ミキストから
鉄道模型蒸機発煙装置は1950年代末に欧州で開発された様です。

1966年当時すでにパーツ販売されてた様ですが、初バイトの時給が¥100でしたから、千円少々と言えどとても手は出せず自作を目指しました。

販売中の毛細管式発煙装置本体は径5mm、写真から長さ約25mmで、多くの16番蒸機煙室に収容可能なサイズでした。

これがデパートで千円少々で販売されてた製品の様です。 海外では建物用も含め様々なタイプが販売されてると書かれてます。


◆TMS記事と製作者の弁
発煙装置製作記はTMSに多くの自作蒸機を発表されてたH氏の執筆です。 この記事を参考に発煙装置を製作した筆者補足を併記します。

最初に解説があります。 『毛細管式のオリジナルはメルクリンの発煙装置で、今まで誌上で発表された方式と異なり、発煙装置と吹上機構が一体化しており、スペースを取らない特長があります』と書かれてます。 これ以前にも発煙装置試行錯誤があったと解ります。

動作説明にこの図を使ってます。 『油性液体発煙剤を入れたタンクに毛細管を差し入れ、それに被せた絶縁体外側にニクロム線を巻いた物です。 発煙剤は毛細管現象でパイプ上部に達し、ニクロム線で加熱されて蒸発(煙になる)し、パイプの中は一時空になりますが、毛細管現象で発煙剤が上昇し、この繰り返しで断続的に煙が出ます。』と書かれてます。


しかしこの説明が正しいのは、図の発煙剤が3/4~2/3以下の時です。 ニクロム線が完全に発煙剤に浸った状態では赤熱せず発煙剤を加熱するだけで毛細管現象も無関係です。 図が間違ってる様で、ニクロム線を発煙剤上まで巻かないと薄っすら煙が出続けるだけです。

発煙装置装着に伴う電気特性について解説してます。 当時の電源は過負荷で電圧降下する特性だったので必要な注意事項ですが、現在の電源は保護回路動作するので割愛します。

【自作発煙装置構造図】
絶縁体に半田ゴテの碍菅を、ニクロム線を発熱体に使ってます。 針先側は銅線を巻き付け、上は電極真鍮板穴に差し込み半田が乗らないニクロム線を半田コーティングしてます。 毛細管は獣医用注射針で、碍菅との隙間が最小になる、中サイズが良いと書かれてます。

【作例画像】
筆者はタンク前面を煙室扉で兼用し、針を支持するステーを広くして、作例では切って使ってる碍菅を切らずステーに嵌め込みました。 ニクロム線一端をステー穴に差し込んで半田コーティング、もう一端は絶縁ワッシャを介したビスにナットで止めました。


ネジ止めしてあった煙突を半田付けに変更し、発煙装置を全面から挿入し、煙突穴から注射針を差し込む構造にモディファイしました。

H氏は蒸機9両に取り付けた発煙装置設計データを公開してます。 テスターはまだ高級計測器で、駆け出し学生マニアは持てなかったので、このデータを参考に製作しました。


入手容易な素材で製作した場合の難点は、絶縁体碍菅の熱伝導性が低い事で、薄くて高耐熱性、かつ熱伝導性が高い絶縁体、例えば石英の様な物を使えれば発煙効率が大幅に向上するだろうとH氏は指摘してます。

製作法ではウェイトに穴を空け給電線通してますが、ボイラーとウェイトの隙間に給電線を通し、ニクロム線をナットで固定したビスにダブルナット止めして、発煙装置を前面へ引き出し可能な構造にしました。

【D51装着例】
実際に製作して分かった事は、発煙剤より高い位置のニクロム線が赤熱し、その部分に毛細管現象で上昇した発煙剤が気化し煙となって吹き上げる事です。 従って発煙剤が減るに従って発煙量が増加し、一番活発に実感的に発煙するのは発煙剤切れ寸前になります。

国内初の毛細管式発煙装置の写真が掲載されてますが、これだけ活発に発煙するには、筒状発煙剤タンクの発煙剤量が1/3以下か、あるいは消費電流が大きかったと思います。 なおこの発煙装置の開発者は、前回紹介した組立式個人レイアウト作者のK氏です。


停車中に吐いてる煙なら良いのですが、走行中の実感を求めると、ニクロム線長さと巻き方、発煙剤量により発煙量が変化する、製作が難しく、扱い方も難しい装置でした。


◆夢の跡
若い頃の鉄道模型関係所有物のほとんどは転居の際に処分しましたが、思い出深い物を一部保管しており、発煙装置関連の物もあります。

分解して発煙装置に流用した半田ゴテ碍菅付き発熱体と壊れたドライヤーのニクロム線です。 将来レイアウト製作時にモミガラ焼発煙装置に使うつもりでの保管だと思います。

ネットで探して通販でポチッの現在と違い、獣医用注射針が簡単に手に入る時代ではありませんでした。 2本調達した残り1本です、どうやって入手したのか、針部分を切断したのか記憶がありません。 左が自作C58集煙装置で、ここから毛細管針を落し込みました。

半田ゴテの碍菅はいい加減なパーツで発煙装置に使える真っ直ぐな物は少なく選別使用でした。 中央が実際に実験で使った物らしく、写真上が発煙装置上部で、赤熱したニクロム線に焼かれ、茶色く変色してます。


N蒸機に発煙装置を組み込まれた方は居ますが、熱伝導性の良い絶縁体使用がポイントで、もう一つは真鍮製16番車両と異なり、プラ製車体変形を如何に防ぐかだと思います。


ではまた。

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