Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

農業倉庫の話 後編

3.摂津鉄道の農業倉庫
前回の続編で、最初は摂津鉄道の農業倉庫です。

摂津鉄道の農業倉庫はTMS1965年11月号に発表され、レイアウトモデリングに再録されており、採石場、製材所と並ぶ蔵本駅貨物引込線です。 S氏によれば出荷農産物保管だけでなく、輸送されてきた農機具・種子・肥料等の一時保管にも使用されてたそうです。 また通常は駅構内貨物線付近にあり、作例の引込線奥は少ないと書かれてます。 

ユニット化された貨物引込線配置図が掲載されてます、『蔵本』が『倉本』の誤植です。 ところで図にある貯木場は完成したのでしょうか?、小川のある風景に食い込む配置に無理があり、実在感持たすのが難しいと思います。 発表記事を見た記憶がありません。

プロトタイプの山陰本線八木駅農業倉庫はごく標準的サイズで、屋根上換気塔がない分だけ高さが低い物です。 掲載された設計図面3サイズは360mmWx150mmDx100mmH、実寸換算で28.8mx12mx8m、Nスケールで192mmx80mmx53mmとかなり大型になります。

【当社生野駅酒蔵】
当社設置同種ストラクチャの酒蔵サイズは、140mmx70mmx70mm、52mm長く、10mm幅広で小屋根除けば高さはほぼ同じで、この酒蔵より一回り大きな建物になります。

【酒蔵と生野駅本屋】
ンッと思い酒蔵と並ぶ生野駅本屋寸法計ると、降車専用改札口とホーム差し掛け含めた寸法がほぼ摂津鉄道農業倉庫のサイズでした。 これが標準的サイズですから、北条町駅にあった大型農業倉庫は、レイアウト設置が困難なほど大きな建物だったと解りました。

S氏は駅から離れた引込線奥の農業倉庫なので、静かで少し荒廃した雰囲気を狙って製作されてます。 線路保守の手が回らず、バラストはほとんど土に埋もれ、2本あった側線の1本はポイントフログ先から撤去され、外したレールや転轍器が放置されてます。

古枕木境界柵破損部も補修されずに放置され、らしさを盛り上げてます。 近くの製材所に運ぶ木材でしょうか、馬が牽く荷車と馬子、実に芸細かく晩秋風景を表現してます。

昨今は耕作放棄地が問題になってますが、当時は水を引ける土地は水田に、引けない土地や傾斜地は畑になってました。 国鉄敷地と道の間も畑になってます。 粗末な野小屋と晩秋の風物の稲藁塚があります。

稲藁塚の積み方にも地方それぞれの特色があります。 関西在住のS氏は平積み式の稲藁塚をボール紙で製作されてます。

筆者の住む信州では細い丸太の心棒に稲藁を掛け回す円形の稲藁塚が一般的で、自作し従来線に設置してます。

野小屋と言うより掘っ立て小屋と呼びたくなる様な、農機具や肥料を保管する小屋で、これも荒れた雰囲気演出に効果的です。

以上の様に様々な小物類の総合力として、摂津鉄道農業倉庫の静かで少し荒廃した雰囲気の晩秋風景が醸成されてます。

倉庫裏にある大型樹木もキャプションにある通り風景の重要なアクセントです。 大型と言っても140mm前後、実寸11mで大木ではありません。 樹高20mはザラにあります。

製作記で差し掛け屋根下に照明があると解りました、多分倉庫扉前の2灯だと思います。 夜間出荷作業時点灯か防犯灯かは解りません。

当社は摂津鉄道をレイアウト製作の目指す姿と手本にしてますが、どうしても納得できない風景製作矛盾点が3点あり、その一つが農業倉庫です。 他の2点を先に挙げます。
➊小川のある風景
小川堤防上の道が鉄橋部分で途切れてる⇒荷車が通るほどの道が堤防上にあるならば、有り得ない風景。(他に築堤や踏切角度も疑問)
➋採石場
ホッパー下寸法が建築限界より5mm低い⇒ホッパー下砕石搭載無蓋貨車を、煙突が干渉して蒸機が引き出せない。(空貨車使用は非現実的)

3点目の矛盾は農業倉庫設置位置です。 農業倉庫扉前の差し掛けは、雨天荷役時に米俵や作業員が濡れずに有蓋貨車に搬入する為に設置されてます。 前回K氏解説事例でも全てそうなってますが、作例はホームにトラック停車可能なほど倉庫が奥に配置されてます。

とまあ風景製作の矛盾点はありますが、キットも素材も市販品がない時代に、この実感的な晩秋風景を造り上げたS氏の努力と工夫、そして工作技術力には驚嘆するばかりで、矛盾があるからと言って、摂津鉄道の価値が下がる物ではありません、と申し添えて置きます。


4.当社の農業倉庫
当社従来線に建コレ農業倉庫を設置してます。 駅の近くですが、スペース制約と風景製作の都合により貨物線付近ではありません。

【従来線農業倉庫】
形状は良くできてます、石積み倉造りで屋根上換気塔と壁面換気窓、積み出し扉と差し掛けを備え、農業倉庫の特徴を再現してます。 ただしサイズが小さ過ぎ、前回K氏記事粟生駅差し掛けなし事例相当の最小型タイプで、現実感を損なわないギリギリのサイズです。


長さと奥行が1.3-1.5倍あればグッと農業倉庫らしくなるストラクチャです。 農協名看板や肥料会社広告看板でステッカーチューンし、前面トラック駐車場前に出荷待ちの米袋を積んであります。 鉄道輸送には中山平貨物ホームまで運送の必要があります。

【同夜景】
夜景に彩りを添えようと差し掛け下扉上に光ファイバー方式の照明を2灯設置してます。 実在の検証もせずに設置しましたが、摂津鉄道作例にもありホッとしてます。

【KATOローカル貨物ホームセット】
付属アクセサリー目当てで購入した農業倉庫を所有してます。 倉庫の大きさに『こりゃ使えんわい』と死蔵してたのですが、今回実物サイズを知り寸法計測しました。 135mmx97mmx60mmで摂津鉄道作例より58mm短く、17mm幅広、7mm背が高いだけでした。


つまりKATOキットの農業倉庫は、標準的サイズの農業倉庫を設置場所自由度を高める為に長さを30%短くしてモデル化した製品で、大型ではなく丁度良いサイズと言えます。 従来線で悔いが残った部分のリベンジが延伸線建設目的なので、設置検討をしました。

延伸線倉元駅当初設計は廃鉱山跡のある貨物取扱廃止駅でしたが、摂津鉄道に触発され採石場ホッパーを製作し、カーブポイント活用で貨物側線のある貨物取扱駅に変更しました。 貨物ホームにKATO農業倉庫を置いて見ると、制御盤移動で無理なく収まります。


また、長い貨物側線なので貨物ホームを延長し、農業倉庫と貨物上屋を並べるのも面白そうです。 更に採石場2本の側線1本をポイント先から撤去し、当初設計にあった廃線跡を作るアイディアも湧いてきました。 じっくり煮詰まってから製作着手するとします。

KATO農業倉庫を採用すると困る問題があります。 大型建物のノッペリした背中が制御盤前に位置する事です。 視界遮りは左右移動で調節可能ですが、この背中は何とかしたい処です。 背面上部に外部開閉式換気窓扉を追加し、ランボードと梯子付けたら良いかもしれません。 播州平野農業倉庫の特徴を真似る訳です。 工作力の問題はありますがね。


ではまた。

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