Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

広葉樹もどきの製作後編

前回の続きです。

乾燥後に各枝を水平より少し高い角度に、枝間隔がほぼ等しくなるように整形します。 そして先端のねじり切れなかった3-5mmを斜めに切り落します、葉を付け易くする作業です。 薄めたフラットブラック・フラットアース・ダークグリーンを、完成後に目立つ幹の根元部分を中心に塗り重ねます。 この3色が露太本線ウェザリングの基本色です。

葉はフォーリッジクラスターです、おおよそ直径15mm、長さ30-50mmに千切り、似合うものを使います、多少の大小はむしろ好都合です。 枝に瞬間接着剤を塗り長手方向へブスッと差して仮固着します、写真は中サイズ9溝の下3段に6個の塊を付けた状態です。

葉を付け終ったら全体バランスを見て樹形調整します。 3時、5時、7時、9時各方向の枝の角度を変えて「らしく」する作業です。(中サイズ9溝、葉19ブロックです)

回転した後姿です、こちら側は枝葉がないので幹が見えます。 溝間隔が広く前から幹が見える樹形の場合は、念入りなコーティングとウェザリングが必要です。 残り4本にも同様に葉を付けます。 今回、大中小各1本は明緑色、中小各1本は緑色にしました。

葉付けと樹形調整完了状態です。 100mm角樹木スタンドに5本立てられるのが「もどき」の証明です。 中と小は、樹高に合わせて作業用持ち手の長さを詰めてあります。

中性洗剤水溶液を軽く吹いてから、ボンド水溶液(中性洗剤入り)を太い筆で枝1本毎に浸み込ませます、少しタレるくらいでOKです。 葉の抜け落ちを防止し、樹形を安定させる作業です。 明緑色大中小3本を終了した状態です、続いて次の工程に進みます。

次の工程は、樹木に陰影を与え、晩秋の少し色付いた様子を再現する作業です。

フラットアースを中性洗剤水溶液で濃い目に溶き、太い筆で枝先に塗っていきます。

塗り終わったら直ぐに、親指と人差し指で摘まんで浸透させます。 フラットアースがグラデーションになり、部分的に枯れた葉の様子を表現してくれます。

完全に乾燥させた明緑色3本です、ゴワゴワになります。 今回は写真映りを気にして、ボンド水溶液が多過ぎた様です、中央11溝下部に白く残りました。 浸み渡るだけで充分な効果があります。 枯れた様子と合わせ秋の樹相変化ということでよしとします。

緑色2本です、元の色が濃いので枯れた感じではなく立体感が強調されます。 これで、「広葉樹もどき」5本の完成です。 溝間隔と針金長により、樹形はかなり自由にできます、小型5溝-樹高80mmや針葉樹にも使えます。 ドーナツ型敷地の露太本線は利用範囲が広いですが、レイアウト端面付近や山の斜面などへの応用が可能だと思います。

葉に色を浸み込ませる手法の応用例です。 KATO針葉樹大に、キット付属の暗緑色フォーリッジを使うと、色が暗過ぎて周囲の風景から完全に浮いてしまいました。 グリーンとフラットアースを浸み込ませたところ、明るくかつメリハリが出て馴染みました。


ではまた。

広葉樹もどきの製作前編

今回は田園風景を一休みし、拙ブログ初の工作記です。 非都市型レイアウト製作者の方は、樹木が足りないと感じていないでしょうか? 樹木を「スポンジ塊を除く幹を持つ植物状物体」と定義すると、露太本線には約350本ありますがまだ足りません。 大雑把な分類は、樹木完成品15%、製作キット15%、残りは自作です。 その大部分が針葉樹、色やサイズを変えても樹形はどうにもなりません。 大型広葉樹を植えたい場所があり、5本製作しましたので紹介します。 なぜ「もどき」なのかは追々明らかになります。

まず用意するのは、ヤキトリ串と手芸用針金です。 自宅にあった造花等に使う0.6mmほどの柔らかい針金で、手芸店または百円ショップで手に入ると思います。

ヤキトリ串に持ち手4cmほどを残し、作業性向上の為に茶色油性マーカーで着色します。

ヤキトリ串の先端約20mmから8mm間隔で、ヤスリのフチで一周溝を掘ります。 寸法精度は不要で、下地が全周見えればOKです。 溝数で樹高が決まりますので、今回は11溝(樹高約130mm)1本、9溝(同115mm)2本、7溝(同100mm)2本にしました。

手持ち手芸用針金は長さ20-30cmなので、無駄が出ない様に先に切っておきます。 今回の場合、45-75mmまで5mm毎に各10本、80・85mmが6本、90・95mmが2本です。

先端から遠い溝から2本組みで順番にねじっていきます。 9溝の串に85-65mmペアを装着した状態です。 ポイントが2点あります、1点目は左右対象ではなく約120度の角度、上から見て最初が3時ー7時方向なら次は5時ー9時、更に次は3時ー7時と繰り返す事です。 2点目は溝に喰い付くよう余裕を詰めてからねじり始め、かつ左右同回転方向にねじる事です。 喰い付きが甘い場合はラジペンで増し締めしてから、瞬間接着剤で固着します。

一番大きな11溝の串に針金を装着完了した状態です。

上から見るとこんな形です、枝は3時、5時、7時、9時方向しかありません。 葉を茂らせても9時半から2時半の150度には枝も葉もない樹木の骨格です。 手抜きやコストダウンが目的ではなく、レイアウトで最も貴重なスペース効率向上のアイディアです。

旅館裏としもた屋裏、背景画の前に広葉樹が2本立っています、それぞれ樹高120mmの大木です。 奥はKATO樹木キット広葉樹大で、手前は自作広葉樹もどきです。 背景に対して30度ほどの浅い角度から見ても、どちらも同様に見えます。(筆者の感想です)

壁際から見ると違いが解ります。 しもた屋軒先と背景距離は90mmですが、KATO広葉樹は枝の一部が軒上に出ます、大型広葉樹は、ストラクチャ1軒分を超える直径約10cmのスペースを占有します。 一方旅館軒先と背景距離は60mmですが、軒上に出ずに配置可能です。 広葉樹もどきを使うと「狭いスペースには針葉樹しか植えられない」のジレンマを解消することができ、壁際の風景製作の幅が広がります。

次の工程は幹と枝のお化粧です。 峡谷製作でプラスタークロス網目処理に苦労し、下地用に購入したまま使う機会がなかった、ターナー製グレインペイント黄茶を用います。

塗るのではなく、太い筆で柔らかいパテを置いてくる感覚で、幹と幹に近い枝及び根元の部分をコーティングします、乾燥後はザラザラした質感になります。 幹先端と枝先は葉を付ける作業の邪魔になるので、コーティングしません。 写真のパレットと合板製樹木スタンドは、樹木製作専用ツールで、完成後植樹までのストックにも使用しています。

前編最後の工程は幹と枝の塗装です。 色はマホガニー、グレインペイントでコーティングした部分を塗ります、奥2本が塗装済み、3本目の作業中です。


今回が初工作記でした。 製作課程を紹介するには、製作の何倍も手間がかかる事を改めて知りました。 工作記を連載されている皆様のご苦労が少しは理解できました。


ではまた。

田園風景-3 踏切から線路沿いに

今回は踏切から線路沿いに進みます。

このエリアの建設時の様子です。 中央手前が中山平駅の駅端で45cm基台上に敷設しています。 その先から40cm基台エリアに入り、線路は50mm木製ブロック上をプレートガーダー橋へ至り、その先も50mm嵩上げされた路盤上に水平に敷設されています。

線路より50mm低い基台が、様々な風景製作の鍵になっています。 写真奥のレイアウト南端は、反対側の峡谷同様天井が低く、背景設置用合板の高さは30cmしかありません。

踏切下水田から南方向の眺望です、線路沿いに3枚の水田が続いています。 左から右へ手前は緩く、奥へ行くほど急傾斜になる自然地形です。 そこに畦を築いて水田を作り、路盤を整備して鉄道が敷設され、この景観になったという想定です。 エンドレスを折り畳み、複線状に配置した区間なので、列車すれ違いの風景にしてみました。

踏切から分岐した農道は水田の間を下り、写真下レイアウト端面で左折し水田沿いに進む想定です。 3枚の水田は、乾燥後のわらぼっちをその場で細断した、すき込まれる前の姿を再現しています。 撮影用にフィールドグラスと0.8真鍮線で自作した可動式ハザカケを置きました、雰囲気重視のオーバーサイズです。 用水路は農家1から鎮守様、踏切下を通って中央の水田、そして左右へと流れており、すべての水田の高さが違います。

2番目の水田も同形状で高さが5mm低いだけです。 コーナー部は、用水路を通す為、路盤の一部が石垣になっています。 アクセサリーにキット付属の距離標乙号と、爪楊枝と板紙で製作した野立看板を配置しました。 地酒・学生服・穀倉地帯お米の看板は見慣れた車窓風景でした、設置後手入れされていない様子でかなり汚れています。

3番目の水田は2番目の7mm低い位置にあり、左側を削り、右側の低地から土を掻き上げて畦を作った、「一粒でも多くの米を」時代の象徴で5角形になっています。 肥料用のモミ殻焼きがあります。 山側本線は次第に傾斜が急になり、石垣の下を走ります。

水田右側のアップです。 わらを積み上げたコレも「わらぼっち」と呼ばれています。 枯草色フィールドグラスと0.8mm真鍮線の工作です。 わら小屋はキット(どれだが解りません)付属品に、自作ハザ棒置場の差し掛けを追加して配置してあります。 ここが踏切からの農道(レイアウト外なので製作していない)の終点です。

わら小屋の先は下り傾斜の灌木帯が河原まで続きます。 山側本線は落石止めを潜ってトンネルに入り、谷側本線は落石止め手前から右カーブし、次第に高くなる石垣の上をコンクリート擁壁に守られて進みます。 擁壁は自身の角度と線路のカーブで底面が曲線になるので、型紙を取り板紙から製作しました。 0.8t板紙、商品名「布目板紙」は強度と弾力があって造形自由度が高く、塗装も容易なので非常に重宝し多用しています。

落石止め覆道としては洞門が有名ですが、柱幅が太く線路間に設置できません。 モデル化のベースとなる簡素なタイプを探したところ、この写真(旧富内線、鵡川ー穂別間)を見つけました。 山側コンクリート壁、鉄骨構造のスリムな落石止め覆道です。

トンネルポータル高整合の為、上部はコンクリートの背が高い落石受けに、骨組を太くしてモデルより頑丈なタイプに変えてあります H鋼は2mm工作用角材を板紙でサンドイッチ、土台と上部コンクリート壁は3x10mm工作用角材、山側コンクリート壁は3mm合板に板紙貼り合わせ、クロスバーは2mmプラ角棒、金網は網戸ネットを使っています。 プラ塗装表現は自信がなく、塗り重ねが容易な木と紙で作れるものは何でもの方針です。

夕陽を浴び鈍く光る落石止めにしたいと思い、薄く溶いた「黒鉄」「赤鉄」「ダークコッパー」(銅葺き屋根の色)「フラットアース」「フラットブラック」「ダークグリーン」を10回ほど様子を見ながら塗り重ね、イメージに近付けました。

「田園風景-1」から3回に渡り紹介したエリアの全景です。 広がる水田の中に伸びる鉄路と、のんびりした農村風景は、レイアウト製作でぜひ実現したかった風景です。

稲穂が夕陽に輝きます。


謝辞

鉄道模型から半世紀離れ、浦島太郎状態での初レイアウト製作開始に際し、道しるべとなったブログがあります。 「Nゲージレイアウト 郷愁の情景」kyoshusenさんです。 設定年代もシナリー重視のコンセプトも近く、製作過程の「素材」「技法」だけでなく、「背景」「根拠」までを詳細に公開されています。 また、筆者が知らなかった鉄道関連知識などの教示を受け、非常に参考になりました。 この場をお借りして改めて感謝申し上げます、kyoshusenさん、大変ありがとうございました。   【lofthonsen】


ではまた。