Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

続・写真集『旅のたまゆら1981-1988』

前回の続きで筆者が感じる風太郎さん写真の魅力について紹介します。

【前号より転載】
前回書いた風太郎さんが度々訪問された津軽鉄道からです。 筆者はストーブ列車見たさに五所川原-金木間の乗車経験があります、多分1971年の年末ではなかったかと思います。

【津軽鉄道 川倉 1983年2月】・・・写真集052
この作品を2016年写真展で大パネルで見て衝撃を受けました。 こんな写真の撮り方もあるんだ、撮影技法ではなく表現法への驚嘆でした。 白魔に閉ざされた自然の中で人間は小さな存在、それでも人と暮らしを運ぶ鉄道が健気に走ってると訴えて来ると感じたからです。 岩木山が背景に見えたとしたら列車長程度、普通の撮影者はもっと寄って撮るでしょう。


なお元ブログでは太宰治「津軽」の一節を引用されてます。 この作品の後に少し近い同アングルの晩秋に撮影された2作品と見開き3連発が掲載されており、津軽鉄道に対する風太郎さんの想いが伝わってきます。

【津軽鉄道 1983年2月】・・・写真集049
現在は観光資源化されたストーブ列車は、混合列車運転の厳寒地路線の必要性から生まれた特有の物でした。 前写真からは解り難いですが、貨車入換の為に機関車次位は貨車、最後尾が客車の編成で、機関車と客車を蒸気菅や電気暖房配線で接続できなかったからです。

【上記作品発表元ブログより引用】
通学高校生満載下り列車折り返しと書かれてます。 と言う事は通学列車は五所川原発金木行で通学先は県立金木高校、撮影した上り52列車は金木発五所川原行区間列車です。 この車両の種車はオハ31系で、キハ10系並みの小振りで貧弱なクロスシートです。

【津軽鉄道 金木 1984年2月】・・・写真集051
金木は津軽鉄道中心駅で太宰治生地でもあります。 湿雪しか降らない東京では降雪時傘を使いますが、乾いた雪が降る北国では傘を使わない人が多く居ました。 パンパンと払えば落ち濡れないからで、ましてや風の強い津軽では傘を使う人が少なかったのでしょう。


ホームで列車を待つのはおそらく五所川原へ通勤・通学する上り列車を待つ乗客で、雪の中から姿を現したのはキハ20系の津軽鉄道仕様の様です。 撮影日は前写真翌年冬、1982年晩秋を含め少なくとも3回訪問されてます。 では五能線沿線作品へ移ります。 

【五能線 岩館 1982年11月】・・・写真集149
五能線撮影ポイントとして有名な岩館鉄橋の混合列車です、筆者も今年6月ここで撮り鉄の真似事をしました。 五能線はDC化が早く進んだ路線で、拙ブログ機関庫の風景深浦駐泊所で紹介した様に、深浦始発終着区間列車は蒸機列車でしたが、1964年時刻表で調べると、日中全線運転6本中5本がDC列車で、筆者初訪問1971年も同じだったと思われます。

【上記作品発表元ブログより引用】
作品発表元ブログによると、撮影した1984年の客車列車も上下各1本のみ、ワム1両の混合列車の為に・・・と書かれてます。 ちなみに五能線貨物営業は1983年3月に廃止されており、ギリギリ間に合ってます。

【五能線 轟木 1982年11月】・・・写真集064
風太郎さんは深浦の少し鰺ヶ沢寄りの小さな岬の半農半漁集落轟木(とどろき)に恋された様です。 旅のたまゆら時代と最近の戻り撮り鉄時代を含め20作品以上をブログで発表されてます。 その中で筆者一番のお気に入りがコレ、轟木を7年前と今年2度訪問してます。


1972年12月2日広戸-追良瀬間で豪雨道床流出による機関車海中転落、機関士死亡の痛ましい事故があり、全線復旧後の1973年3月に五能線は無煙化先行で蒸機運行を終了しました。

【上記作品発表元ブログより引用】
つまり筆者は五能線8620にギリギリ間に合ってた訳で、この風景は風太郎さん撮影の10年近く前から変わってない事になります。 狭い浜の崩れかけた番屋と崖の上を夕陽を浴びて進む列車、鉄道車両写真なら8620とDE10は大きな違いでしょうが、そうは思いません。

【五能線 風合瀬 1983年2月】・・・写真集059
五能線最後の1枚は厳冬期、筆者的にはオハ61車窓から雪雲と水平線の区別がない日本海と物憂げな乗客の表情を選びたい処ですが、風太郎さんお気に入り撮影地のコレにしました。 海と山に挟まれて進む五能線が小さな川が作った猫の額ほどの平地部で、川越え鉄橋へ向け絵に描いた様なS字カーブになってます、写真集掲載本作品は見開きの大迫力です。


筆者の旅は知らない土地を見たい乗り鉄に近い物で、盲腸ローカル線や私鉄はパス、東京から近い学割東北均一周遊券は3回使いましたが他は1回でした。 一方風太郎さんの旅は紹介した様に何度も訪問された上に全国に及び、その密度は3-4倍に達すると思われます。

【鹿児島交通 枕崎線 1982年8月】・・・写真集070
と言う事で思い切り南の鹿児島交通枕崎線から、国鉄払い下げキハ07がこんな場所でも余生を送ってたかと思いましたが違いました。 作品発表元ブログによると1953年に自社発注で6両新造した可動式ステップ装備車で、1984年3月の全線廃止まで主力を務めました。

【島原鉄道 布津 1982年8月】・・・写真集077
布津は島原鉄道が2008年に部分廃止した島原港-加津佐間にあった駅です。 撮影時点で業務委託駅になっており、駅長室に座るダボシャツ姿の爺さんが婆さんと駅舎を住まいとし、構内に植木鉢を並べ、犬や鶏と共に暮らしてました。 見た記憶があると調べると既発表作品は女の子でなく別人物(婆さん?)で、これは同時に撮影された初公開作品の様です。


◆34年目の島原鉄道 布津


2016年に島原鉄道を再訪されてます。 その後布津は無人駅化されて小さなプレハブ駅舎に建て替えられ、更に2008年の廃線によりその駅舎も荒廃、40年の時の流れを感じます。

【天北線 曲淵 1988年10月】・・・写真集153
この訪問は1989年5月廃止の名寄本線、天北線の最後の姿を収めるのが目的だった様で、同年2月にも訪問されてるので実に4回目です。

【上記作品発表元ブログより引用】
ブログ発表作品は左半分カットのカラーで、暮れた空と残照グラデーションが魅力でした、写真集にはトリミング版が掲載されてます。 筆者は1991年8月に家族ドライブ旅行の際に名寄本線中湧別駅跡に立ち寄っており、引込線に放置されたキハ22が印象に残ってます。

【上記作品発表元ブログより引用】
2014年鳥取県米子で夏に開催された音楽イベント演出家から「イメージにピッタリ」と画像提供要請を受け許諾されてます。 さて最後に風太郎さん代表作の一つを紹介します。

【三菱石炭鉱業大夕張鉄道 南大夕張 1984年2月】・・・写真集098
北海道岩見沢-滝川間東側に数多く存在した運炭路線の一つ大夕張鉄道の下校風景です。 2016年写真展パンフにも使われた代表作で、客車屋根の煙突からストーブ列車、つまり石炭輸送がメインでついでに炭鉱労働者と家族の生活の足になってました。 写真集コメントによると1年後のガス爆発事故を契機にヤマは閉山、若者たちも姿を消しました。

【上記作品発表元ブログより引用】
写真に添えられたこの短文が魅力であり『風太郎ワールド』です、聖子ちゃんカットもガンを飛ばすも死語になりつつあります。 写真集紹介から脱線ですが、『風太郎ワールド』に興味を持たれ方は是非、そうでない方も読物として楽しめますので以下をご覧ください。


夕張市は炭鉱閉山後人口が激減し、杜撰な地域振興策実施が裏目に出て莫大な負債を抱える財政破綻自治体になりました。 東京都職員だった現北海道知事鈴木直道氏がなり手のなかった夕張市長に就任して6年目、トンネル出口が微かに見えかけた頃の夕張訪問記です。


◆夕張物語 その1    シホロカベツの森 [2017/06/13]
◆夕張物語 その2    夕張は、倒れたままか。 [2017/06/15]

夕張市まちづくりコンセプト映像 (Full ver.)
【夕張物語 その2添付動画】
◆夕張物語 その3    幸福の黄色いハンカチ想いでひろば① [2017/06/17]
◆夕張物語 その4    幸福の黄色いハンカチ想いでひろば② [2017/06/19]

【夕張物語 その4より】
ここで旅の目的が明かされます、リニューアルオープンする幸福の黄色いハンカチ想いでひろばのキービジュアルにこの作品が使われたのです。
◆夕張物語 その5    花よりメロン [2017/06/21]
◆夕張物語 その6    清水沢 [2017/06/23]
◆夕張物語 その7    双子のリリーズ [2017/06/25]
◆夕張物語 その8    「私の夕張」 [2017/06/27]

夕張物語 その8より】
ここで話は風太郎さん旅の始まり1981年にワープします。 蒸機時代の夕張周辺写真集ですが、高価でも鉄道と共にそこで暮らす人の生活が写されてる事が購入理由だった様です。
◆夕張物語 その9    鹿ノ谷 [2017/06/29]
◆夕張物語 その10    南大夕張 [2017/07/01]

【夕張物語 その10より】
シリーズ最終回は南大夕張駅跡地、静態保存された33年前被写体になったストーブ列車の3軸ボギー客車スハニ6と再会されてます。 以上長くなりましたが写真集『旅のたまゆら1981-1988』及び『風太郎ワールド』の紹介でした。[この項 完]


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ではまた。

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