Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

TMS200特別号➋

TMS200特別号紹介の続編です。

【TMS1965年2月号表紙】


◆作品グラフ&製作記 キハニ5000
作品グラフ2番手はキハニ5000、形式名を聞いて『アーアレね』と解る人は極く少数だと思います、筆者も初耳でした。

キハニ5000は昭和4年から12両製造された国鉄(鉄道省)初のガソリン動車です。 おでこにラジエーターを乗せた特異なスタイルで2軸小型車、しかも荷物合造車にも係らず、運用実績には北陸本線長浜-彦根間、東北本線長町-塩釜間の幹線区間列車が含まれてます。

執筆者は常連のN氏で、編集部依頼を受け、初心者用工作法指南記事を多く書いてた方で、これも市販エッジング板加工の教科書的記事です。

【鉄道模型社製キハニ5000エッジング板】
当時鉄道模型社ではリベット打ちが必要な旧型車両の車体エッジング板を各種発売しており、キハニ5000もその1種でした。 黒い部分が窓と扉の内枠で、何の目印もない左上部分が車体、車体上下がリベット打ちのウィンドシルとヘッダーになります。

作者はこのエッジング板を見てどこが何処か解らず、スタイルブックから妻板を挟んだ2枚で車体構成すると解り、参考ケガキ線を掲載してます。

エッジング板を切り抜くとこんなになりますの親切な図付きです。

切り抜いた妻板付き外板2枚を曲げて窓・扉枠内板で繋いで車体完成させる構造です。 工作方法自体は参考にならないので省略しますが、屋根や特徴的なラジエーターなど全て追加工作の自作です。

下回り駆動系も自作、小型横型モーターを床板に落し込んで搭載し1軸伝導してます。 2軸M車は1車輪集電になるので走行性能が悪くなるので3点支持で集電性向上させてます。

90年以上前とは言え、こんな車両が仙台や米原に出入りしてたと思えば何とも愉快で、現在非電化区間主要都市間を結ぶスマートなDC特急車両のご先祖様なのです。


◆作品グラフ&製作記 ED51
作品グラフ最後はペン画でお馴染みのTMS編集部片野氏の作品で、これもキハニ5000と同じく鉄道模型社製エッジング板利用車体です。

エッジング板妻板ケガキラインが1mm広い事に曲げ工程後に気付いて後の祭りと使用上注意点も記載されてます。 当時のエッジング板は『面倒なリベット表現だけしといたから、後はどうするか自分で考えて作ってください』程度の製品だった事が2例から解ります。

ED51は後にED17グループに編入されましたが、左右非対称外観、特大パンタ(ED17化後小型に変更)、デッキ付の堂々たるき電機でした。


◆レイアウトデザインコンペ
TMS200号記念レイアウトデザインコンペが開催され、その結果発表が掲載されてます。

レイアウトは高嶺の花の時代でしたが、デザインだけは方眼紙・コンパス・定規があれば誰でもできました。 筆者もそんなレイアウト机上設計者の一人で当時15歳でした。 各賞の金額は賞金ではなく、金額相当のキット進呈が面白い処です。 入選以上の6名は10代3名、20代1名、30代2名と若い人=経済的にレイアウト製作できない人が多くなってます。

特集シリーズ¥1,000分が貰える佳作15名の他に特別賞も、真っ先に応募した筆者同年の先着賞には笑ってしまいました。 ここも10代中心で40代以上は1人も居ません。 と言うのは、40歳は昭和元年生まれ、戦争で鉄道に興味を持つ機会が少なかったのでしょう。

【掲載された佳作作品】
3作品掲載された佳作から一番興味深いデザインを紹介します。 8畳間一杯のスペースから制御盤やメンテスペースを切り取った敷地で特徴は何と言っても左下貨物駅を起点とした引込線、3方向へそれぞれ2線を有し、例えば上から鉱山・農業倉庫/工場・コンビナート/港の様な全く違った風景が櫛歯状敷地で可能です、ただしデルタ線があり制御は面倒です。


本線は長大エンドレスを折り畳んで中央部に駅を設けた2列車運転可能プランです。 一部にショートカット兼リバース線を設置してますが、駅左端の両渡線も双方向リバース線機能があり、引込線入れて4リバース機能、電気制御が苦手な方の設計の様に見えます。 なお本線はR600(最小R550)使用し、20m車入線可能で駅のホーム有効長は4両分です。

特選は茨城県在住の18歳の方が獲得しました、前出佳作が8畳間占有の巨大サイズに対し4.5畳間に制御盤最小サイズを確保したデザインです。 筆者も4.5畳自室鴨居上レイアウトを企画し様々なデザインをしてたので良く解りますが、20m車入線が非常に困難です。

長大エンドレスを折りたたんで駅を1ヶ所設けた基本線形で、駅は欲張らず島式ホーム1本に機廻し線と貨物側線、最小曲線はR450です。 17m級客車の混合列車で本線運転と貨物入換を楽しむコンセプトで、物理的には2列車運転可能ですが、想定してない様です。


線路だらけの印象を避け、3本のトンネルで巧みに隠してますし、C11/C56用小型ターンテーブルを備えた機関車駐泊所も駅の規模に相応しいグッドバランスです。 いかにもリバース線というS字カーブを使わず、駅引込線に見せる工夫も素晴らしいと思います。

【受賞者の弁】
設計意図をこの様に語ってます。 線形マニアを自認する筆者が1点だけ気になる点があります。 駐泊所出庫機関車は前進で機廻し線を通り列車前方に連結して出発、運転中リバース線を通り機関車前方で図面上方から駅で終着、機関車開放してターンテーブルで方向転換させたいのですが、リバース線が逆なのです。 駅左側上下反転で可能なのですが・・・。


◆大学・高校文化祭スナップ
前年1964年秋(最初の東京オリンピック)に開催された文化祭出展組立式レイアウトスナップが巻頭に掲載されてます。 経済的余裕がないと楽しめない趣味だったので、鉄道模型サークルが存在するのは、一部の私立大学・高校に限られてました。


★甲南大学
神戸の甲南大学で1964.11.29に開催された運転会の様子です。

模型班は8名、4.5mx6.5mの大型組立式レイアウトで、トランジスタコントローラ等を自作して組み込んでます。 つい一体どれだけ親に負担掛けたのだろうと考えてしまいます、ザッと現在の1桁上の金食い虫趣味だった時代で、金持ちの息子でなければ無理でした。

ご覧の様に堂々とした規模で3列車運転が可能な設計です。

自作の制御盤がこちら、ポイントはタッチコントロール方式で操作中です。 ズラッと並んだSWは区間選択で2Pまたは3P(オフ付きヤード用)です。 中段下のツマミ付きSW2個がキャブ1/2/3選択、他がキャブ1/2または1/3選択の、3-キャブコントロール方式です。


★明治大学
明治大学工学部・農学部の鉄道研究会では前年11.22/23に完成したばかりの組立式レイアウトの披露運転会が開催されてます。

サイズは4.5mx5.4mと甲南大学4.5mx6.5mとは長手方向が違うだけです。 この様な組立式レイアウトは10両編成走行前提で設計される事が多く列車長2.5m強、曲線はR900で、90度カーブの間に直線入れないと列車先頭と後尾が逆方向になってしまいます。

外周エンドレスの中に内周エンドレスや立体交差リバース線、ヤードも作りたいとなると90度カーブ館直線距離は1mを越え、材料は90cm単位なので3.6mでは収まらず、幅4.5mに必然的になってしまうのです。

現在の大学生とはかなり雰囲気が違いますね、皆さんご健在ならすでに後期高齢者です。

トランジスタコントローラ採用ですが、アルミシャーシーに真空管の様な物が並んだ制御機器が見えます、何かの電子制御をしてるのでしょう。


★武蔵工大付属高校
東京の武蔵工大付属高校では11.12/13文化祭で鉄道模型同好会運転会が開催されました。

観客には会員の家族でしょうか、小中学生や母親の姿が見えます。

サイズ記載ありませんが、写真の様子から前2例と同じ4.5m幅の様です。 周囲の人用スペースと教室サイズからも4.5mになる様です。

トランジスタコントローラ制御で4列車同時運転と書かれてます。 4-キャブコンはまずないしデュアルキャブコンx2も相互乗り入れができず難しい、パワーパック4台使った非キャブコンと推定されます。

150両の市販車両がレイアウト上に並んだそうで、購入価格ザッと40-50万円、貨幣価値換算すると300-350万円、現在のNで編成物100セット以上買える金額です。 お金にこだわるのは、当時の鉄道模型が高価で、平均的家庭の子弟には中々手を出せなかったからです。


ではまた。

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