Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

トラス橋の基本知識

『緑濃い山間から現れた列車は、峡谷に架かる鉄橋へ差し掛かり、汽笛の音も爽やかに駆け抜けてゆく』これはレイアウト製作を志す誰もが思い浮かべる情景ではないでしょうか? 筆者もその例に漏れず、レイアウト製作の必須条件として設計に組み入れました。


『可能なら雄大な鉄橋にしたい、でもスペース制約がある』この夢の実現に必ず突き当る壁です。 当社の場合は4両分+αの600mmを目指し、最終的に3.5両分の500mmに妥協しました。 と言うのは他に制約条件があるからです。 仮に鉄橋自作の工作力を持ってても、設計情報はほぼ皆無で先行事例も少なく、結局市販品を使うしかないからです。

スパンの長い大鉄橋はトラス橋です。 当社はユニトラック採用単線路線なので、KATO単線トラス橋248mm長x2連も考えられましたが、深い峡谷中央に橋脚を建てる事ができず、両側デッキガーダー橋124mm長を使い、3連鉄橋にして496mm鉄橋を実現しました。

では、単線トラス鉄橋2個または3個を改造し、スパン496mmの長大なトラス橋を作ったらどうでしょうか?、残念ながら形状はできても実際に有り得ない鉄橋になってしまいます。 トラス橋の各部寸法には橋梁設計工学上の様々な制約があるからです。 自作または改造で長大なトラス橋製作に挑戦する方が必要な基本知識としてTMS掲載記事から紹介します。


◆トラス橋の構造と設計基準
トラス橋は梁の組み方により大別して下図の3種類あります。 トラス橋はスパン(橋脚間隔)40m~100mに適してるとされ、このスパンが各部寸法全ての基準になります。 

図太線が荷重を受ける圧縮材で細線が引張材、点線が補強斜材です。 バウトラスとプラットトラスは古い形式で、新しいトラス橋にはワーレントラスが採用されてます。 短スパンは上下梁平行な直弦トラス、長スパンは上梁がアーチ状の曲弦トラスが使われてます。


当社採用KATO単線トラス橋は実寸37.2mの短スパン直弦トラスで、梁の組み方を観察するとワーレントラスになっており、実物を忠実に再現してると思いましたが・・・。

トラス橋の両壁は上下の弦材、弦材を結ぶ垂直材・斜材の腹材で構成され、これを主構と呼びます。 両主構と4面を構成する床面を床組、天井面をポータルと呼びますす。 主構の垂直材と次の垂直材の間をパネルと呼び、床組及びポータルの横桁は、図の様に必ずパネル接合部にあります。 全体で荷重を支える鉄橋として感覚的にも理解できると思います。


なお上図右はパネル毎に斜材方向が逆のワーレントラスですが、左はプラットトラスの梁組になっており、TMS編集部内でも混乱してる、良く理解されてない様子が窺えます。

トラス橋設計基準の最初はスパンと高さの関係で、上の様に定められてます。 図で示すと以下(この図もプラットトラスの梁組です)の通りで、KATOトラス橋は1/4で基準から外れてます、背が高過ぎるのです。

KATOトラス橋は非電化・電化兼用で、電化区間建築限界で出入口ポータル高さとトラス高さが決まり、それが62mmです。 基準に合致させるにはスパン372mm-434mm、実寸55.8m-65.1mが必要ですが、模型の世界では長過ぎて使い難く短縮した様です。


最初に述べたKATOトラス橋改造496mm長は、スパンに対し高さが1/8で設計基準を満たしておらず、実際には有り得ないのです。 製品も基準外ですから似た様な物ですが。

【トラス橋の3形態】
トラス橋と言えばスルートラスを連想しますが上記3形態があり、KATOトラス橋スパン実物はポニートラスで建設されるでしょう。 でもそこは雰囲気重視の模型の世界です。

次の設計基準はスパンと幅の関係です。 建築限界で両主構内側最小寸法が決まり、主構厚みを加えると単線用でも5m程度になります。 従ってこの基準は長大スパン単線トラス橋設計時に適用され、スパンの短いKATOトラス橋は1/7.5でクリアしてます。

主構のパネルが全て同じサイズである必要があるのは、長い場所があればそこが強度的弱点になる事からご理解いただけると思います。

更に斜材角度にも45度以上の基準があります。 曲弦トラスでは両端パネル斜材角度を45度以上にすれば中央部はそれ以上の角度になります。

基準➌/➍を図示すると以上になります。 主構は左右対称で、パネル分割数が奇数の場合は中央部で斜材がX型にクロスします。 偶数分割の場合でも一番荷重が掛かる中央2ヶ所をクロスさせる場合があります。


◆トラス橋の細部構造
トラス橋の部材は鉄板や鉄棒ではなく、軽量で強度の高いチャンネル・H型鋼が使われており、その接続部にはリベットが数多く打たれてる印象がありましたが、製作するとなると断面構造等詳細情報が必要です。

aは鉄板にチャンネル材2本で箱型に、bはaのチャンネル材を鉄板とアングル材に置き換えただけ、cはaのチャンネル材の向きを変えただけのいずれも箱型で、トラス橋上弦材の断面構造です。 下弦材にはd、主構垂直材にはe、斜材にはdやfが良く使われてます。

前図破線の部材を繋ぎ合わせには、上図タイプレートやレーシングバーが使われ、レーシングバーのピッチが400mmを越える場合はダブルレーシングにすると定められてます。 そしてトラス橋を組み立てる際は溶接ではなく、ガゼットと呼ばれる継板を使います。

部材同士をガゼットを使いリベット止めする訳で、写真の裏側にもガゼットを当てリベット止めされてます。 主構と床組やポータル接合部にはL字型ガゼットが使われます。

ガゼットの形状はトラス橋各部の設計寸法によりバラバラで、様々な形状が存在します。

トラス橋天井面のポータルにも様々な形状があり、左の様にコーナー2本の実例もあります。 KATOトラス橋ポータルは一番右のタイプです。


◆実例資料画像
全てを図解するのは難しいので、実例写真が掲載されてます。

【川越線荒川橋梁】
川越線の曲弦ワーレントラス橋です。 スパン60m前後に見えます、と言う事は高さは10m近くになります。

【同上】
真下から見上げた画像です。 床組の細部は良く解りませんが、ダブルレーシングされた垂直材や斜材の様子が良く解ります。

東京下町貨物専用線の直弦ワーレントラス橋です。 架線位置からしてスパン60m前後と推定されます。 先月の中国四国旅行で撮影した実物写真でも検証しました。

【予土線土佐昭和四万十川橋梁】
このトラス橋は第1図左下のワーレントラス基本形で主構に垂直材がありません。 スパンは2両分の40mです、トラス高さは1/6の6.7mほど、そんな事はあり得ませんが、電化時には架け替えが必要です。 重量貨物が通過した川越線や新金線に比べ非常に華奢です。

【土讃線仁淀川橋梁】
仁淀川橋梁は8連トラス橋で、中央付近の一つだけ曲弦トラスです。 6パネル直弦トラスが7個、スパン約40mで、垂直材・斜材で構成される主構です。 これも電化対応できないトラス橋です。 曲弦トラスは8パネル、スパン約60mで、背が高くなってます。

【土讃線土佐北川橋梁】
多分平成時代に架橋されたと思われるこの直弦ワーレントラス橋は異例です。 川幅はそれほど広くありませんが斜めに一跨ぎ、スパン100m近くあります。 設計基準から高さは14m前後、幅は5mでも良いのに広く、電化区間複線橋の様に見えます。


設計基準は自重70tを超える蒸機が、時には重連で1000t貨物列車を牽いた時代に制定されており、現代のペラペラ軽量JR車両には、相当にオーバースペックだと思うのですが・・・。


ではまた。

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