Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

トンネルと煙「窓閉めれっ!」

1966年前後はシナリーガイドK氏が最も活発に各地を訪問して執筆した時期で、これもその一つです。 当時は優等列車が順次冷房化されてた時代で、蒸機牽引普通列車は夏場窓を開けて走るのが当り前、地元の方がトンネル手前で号令を掛ける姿を見た記憶があります。

K氏は記事冒頭に『トンネルの蒸気機関車の最大の悩みは煙である。 上り勾配長大トンネルともなると、我々の汽車旅行でもハンカチを口に当てたり咳き込んだり、長く悩まされてきた物である、』と書かれてます。


K氏より15歳年下の筆者が旅した頃は、煙害対策施設や集煙装置付蒸機により、ハンケチ・タオルが必要だったり咳き込んだ記憶はありません。 石炭が燃えた独特の香りがし、トンネルが長いと車室内が薄っすら霧がかかった様になるだけで、むしろ旅情を感じさせてくれました。 発生源に近く吹き曝しのキャブはさぞ大変だっととは思いますが・・・。

トンネルには排水の為に勾配があります、サミット越えトンネルは拝み勾配が普通ですが、サミットに至るトンネルは片勾配、しかも急勾配が多くなってしまいます。 煙は高温で軽いので、トンネルが煙突になって気流を生じ、列車前方に滞留し煙害を引き起こします。

【ウィキペディアより】
この様な条件下でトンネル内窒息事故があったハズと調べてみました。 鉄道事故史によると3回トンネル内窒息事故が発生してます。 最初は旧北陸本線柳ケ瀬トンネル(北陸トンネル開通後柳ケ瀬線、後廃線)で過積載貨物列車が空転立往生し、救援機関車乗員を含めた12名が窒息昏倒(意識喪失)、車掌・荷扱手・機関助士見習の3名が死亡した事故です。

【ウィキペディアより】
2件目は終戦直後篠ノ井線冠着(かむりき)トンネルで空転立往生、旅客列車で乗員・乗客8名が窒息昏倒(死者なし)した事故です。 鉄道省時代の国鉄は従業員や乗客の命を危険にさらす今ならブラック企業でした。

【ウィキペディアより】
3件目も終戦直後の鉄道省時代です、門司発東京行急行列車が岡山/兵庫県境の船坂山トンネル内で立ち往生し、乗員4名、乗客60名が窒息昏倒(死者なし)した事故です。 粗悪炭質による出力不足が原因でした。


この様な事故を教訓に対策として、急勾配の長いトンネルには煙害防止施設が設置されてました。 K氏は関西本線の難所加太トンネルを実地踏査し設置施設を紹介してます。


◆煙害対策-1:トンネル低標高側出口に幕設置
トンネルの煙突機能を発揮させない施設です。

列車後尾がトンネルに入ったら幕を張って入口に蓋をする対策です、当然幕とそれを操作する職員常駐が必要で、古くはカーテンの様に人力横引き、加太トンネルは劇場緞帳の様な機械巻き上げ式になってました。

【加太トンネル入口】
これが施設が設置された加太トンネル入口です、写真に添えられたキャプションを読める様に拡大編集しました。

落石除けに隠れて写真では解りませんが様々な付帯設備があります。 そしてこんな場所にも職員常駐、蒸機は早くなくしたい厄介者でした。

記事に添えられたイラストが一番解り易いと思います。 下り勾配走行列車とDCには作動不要、日に十数回幕を上下させるだけが仕事のトンネル番がこの番舎に詰めてた訳です。


◆煙害対策-2:トンネル出口に幕+排気ファン設置
対策-1の幕に加え排気ファンで煙を吸い出す施設です。 加太トンネルにはこの施設がなく解説に留めてますが、昨年紹介したK氏釜石線陸中大橋駅に実施例が紹介されてます。

駅端がトンネルなのでトンネル番はおらず番舎もなく、駅務員が遠隔操作で作動させ、駅舎から見えるループトンネル出口の列車を目視確認して作動停止してたと思われます。

【過去記事より転載】
加太トンネルの様に落石除けが邪魔しないので、構造が良く解ります。 幕でなく両開きの扉がトンネル出口縦坑の前に設置されてます。

【過去記事より転載
煙突は長い方が高効率なので竪坑は20m以上の高さがあります。

【過去記事より転載】
K氏は作動状態をこの様に記述してます。


◆煙害対策-3:トンネル内に煙出し竪坑設置
こんな煙害対策もあったという加太トンネル設置事例の紹介です。

図解だと上手くいきそうですが、トンネルへ入った直後は煙突効果で煙がより前方へ滞留しそうに思えます。

これが山の上にある竪坑出口、おそらく藪を踏み分けてこの場所まで確認しに行ったK氏の好奇心と努力には頭が下がります。

この様なキャプションが添えられており、K氏が訪問した57年前にすでに鉄道遺構になっていた事が解ります。 以上煙害対策施設を見てきましたが、レイアウトに取り入れるのは少々難しいかと思います。


ではまた。

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