Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

Hyper-G湖南仕様改修⑮サブCHヒゲ退治

前回PWM波形はシャープな方が良いという常識が覆りました。 低コスト2CH電源の餌に釣られ、結果的に1CH2台の方がはるかに楽でした。 でも自分で決めた事、解決策を探してウロウロするのも趣味の楽しみの内、こんな新しい学びもあると言い聞かせてます。

Hyper-G湖南仕様軽負荷時ヒゲ問題、スピードダウンコンデンサでメインCHは解決しましたが、伝送路が倍近いサブCHがどうなるか解りません。


◆サブCHの現状確認
マイナス側ポリスイッチ、プラス側出力TRからフィーダー線端間配線長は、メインCH約2.5mに対しサブCH約4.5mです。 スピードダウンコンデンサなしの現状を確認します。

 PS GND=ポリスイッチ両端波形は、PWMオン時だけ0.35VでヒゲがなくメインCHと同じです。 メインCH出力TRエミッタは9.5V-13V、3.5Vのヒゲでしたが、サブCHは10.0V-13.0V、3Vと若干小さくなってます、伝送路が長いとノイズ回り込みが少ない様です。

2.5m⇒4.5mと長くなった負荷GNDヒゲは、メインCHの-3.8V-5V、8.8Vに対しサブCHは -4.0V-5.4V、9.4Vに0.6V大きくなってます。 距離が長ければノイズ量も増え、もっと酷い状態を予測しましたが、この程度ならスピードダウンコンデンサでOKかもしれません。


◆102Kスピードダウンコンデンサ効果確認
少し希望が出てきました、スピードダウンコンデンサ効果を確認します。

メインCHスピードダウンコンデンサ(左赤点線丸)に加え、サブCHスピードダウンコンデンサ(右赤点線丸)を取り付けました、出力TRユニット6Pソケット外しての作業です。

【メインCH 前号より転載】
メインCHは-3.8V-5V、8.8Vのヒゲがスピードダウンコンデンサ追加で-2.0V-1.6V、3.6Vに半分以下に改善しました。 サブCHの -4.0V-5.4V、9.4Vはどうなるでしょうか。

計測結果は-4.0V-3.4Vの7.4V、スピードダウンコンデンサ効果は認められますが、メインCH倍以上のヒゲが出てます、伝送路が長い影響が出てると考えられ、追加対策が必要です。

【メインCH 前号より転載】
メインCHスピードダウンコンデンサ計測の最大ヒゲ条件は、蒸機負荷最小安定発振調整の14.0Vでしたが、セットアップが面倒なのでほぼ同等だった470Ω負荷、最小安定発振でどうなるか計測します。 メインCHは13.9V、GNDノイズからは16V-17Vが予想されます。

計測結果は予想に反しメインCHより0.4V高い14.3Vでした。 目標15V以下に入っているのでOKですが、フィーダーからレール給電数m先では更に大きくなる可能性があります。


検収試験で発生し再現しなかった蒸機モーター唸り音は、安定発振前間欠発振領域のピーク20V前後のヒゲで発生してたのではないかと推定してます。 間欠発振時はPWM周波数が数分の1になり可聴周波数になるからです、いずれにしろヒゲはないに越した事ありません。


◆GNDの追加ヒゲ対策
スピードダウンコンデンサ容量を増やせばGNDヒゲは減りますがPWM立ち上がりが更に遅くなって常点灯性能が劣化するので実施できません。

サブCHのDR SW GND波形です、メインCHは安全性保証回路基板から20cm弱なので計測省略しましたが、サブCHは2.2mです。 スピードダウンコンデンサ追加後でも-3.5V-2.1V、5.6Vのヒゲが出てます、更に約2m先の負荷GNDで7.4Vに拡大してる訳です。 この場所のヒゲ減らせれば負荷GNDヒゲが減り出力波形ヒゲも減るハズと考えました。

サブCH DR SW GNDと上図サブCH回路系GND間にパスコン追加を検討します、回路系GNDはPWMオンオフ時に多少ノイズがある程度で大きなヒゲは出てません。 ただしこの位置のパスコンは回路的にポリスイッチと並列になるので大きな容量は無理です。

サブCHのDR SW GNDと回路系GND、同じ上ケース速度計GND間に103Zを追加しました。 本来はパスコンリード線を短くしたいのですが、最近点がココなので仕方ありません。 103Zパスコン追加でポリスイッチトリップ後安全性保証回路動作まで0.03秒になります。

DR SW GNDパスコン追加後の470Ω負荷最小安定発振出力は0.16Vで変化なし、14.3Vピークヒゲは消え、最高値12.8Vの波形になりました。

ついでに常点灯Max波形確認すると、メインCH同等の最大出力1.86V、立ち上がり時最大値12.6VでメインCHより綺麗な波形です。


◆メインCHパスコン追加
一旦OKとしたメインCHですが、サブCHがDR SW GNDパスコンでほぼ完全にヒゲ退治できたとなるとメインCHにも適用したくなります、両CH回路を同じにする意味もあります。

で、メインCHにも103Zリード線にショート防止ビニール被せてDR SW GNDと速度計GND間にパスコン追加しました。

パスコン追加したDR SW GND波形です、スピードダウンコンデンサ追加時は計測省略したのでパスコン単独効果検証できませんが、立ち上がりヒゲは完全に消滅してます。

プローブを負荷GNDに繋ぎ替え-2.0V-1.6Vだった立ち上がりヒゲがどうなったか確認しましたが、逆に0.3V増加してました。 伝送路ヒゲ計測条件は負荷10.8Ω、出力ヒゲが問題になるのは軽負荷470Ωで1対1対応でないにしても出力ヒゲ増えたのには疑問が残ります。

でも出力波形計測してホッと一息、13.9Vだったヒゲピークは13.2Vに改善しパスコン効果が確認できました、伝送路が長いサブCHが良いのは気になりますが、絶対値はOKです。

常点灯Nax調整は若干増えて13.5Vのヒゲピーク、コレも絶対値としては問題なしです。


◆蒸機駆動波形確認
手こずったヒゲ退治が終わりました、最後に蒸機負荷で常点灯と走行開始時のヒゲを含めた駆動波形と常点灯調整範囲を確認します。

DR SW GNDパスコン追加前ピーク14.0Vだった蒸機負荷ヒゲが、どうなるか確認しました。 最小安定発振出力は0.1V弱、ヒゲピーク値は12.7Vに改善しており二重丸です。

出力0.25Vではパルス幅が約0.4μsecから2.5倍の約1μsecに広くなり、スピードダウンコンデンサ効果で立ち上がりは鈍ってますが、PWM H時がフラットな矩形波になり、ヒゲピークも12.7Vで変化ありません。

出力0.5Vではパルス幅が0.25Vの倍約2μsecに広がるだけでヒゲピーク値は同じです。

更に蒸機常点灯上限に近い0.61Vでは電圧上昇分だけパルス幅が広がって約2.4μsecになるだけの同傾向で、ヒゲピーク値は同じです。

実際のD51 HL常点灯はこんな具合です。 0.10Vでも下限値クリア、0.25Vで実用域に入りますが、ここに調整するとノッチオンして先に速度計上昇してから走行開始します。 速度計精度確保した実用域は0.5-0.6V、Hyper-G開発目標十分な常点灯輝度が得られました。

常点灯調整操作性確認です。 常点灯調整ボリューム目盛4.0/4.7/5.6/6.0が計測4条件でした、調整幅が十分あり使い易いと思います。

常点灯計測のついでにこれまで一度も見た事がない微速前進時駆動波形を計測しました、0.7V強からムズムズし走行開始します。 その瞬間にストレージし、記憶した0.87Vを別に撮影しました。 走行開始しても駆動波形傾向は同じですが、モーター回転開始で負荷が変化する様で、常点灯時の出力電圧対パルス幅に対してパルス幅が広くなってます。


これで出荷検査、再送品と行きたい処ですが、また課題が見つかりました。 湖南電源は中々楽させてくれません、最後の生みの苦しみです。


ではまた。

半世紀前の鉄道P誌1964年2月号③D50特集

鉄道P誌1964年2月号はD50特集号で、それが入手理由です。

【鉄道P誌1964年2月号表紙】
表紙は紀勢本線紀伊田辺付近で貨物列車を牽くD60で1963年12月撮影です。 D50は9600の10年後、大正末期登場で国産最強力機として設計されました。 9900型として生産開始され昭和3年の呼称改正でD50になり、同時期のC51と共に戦前の貨客輸送を支えました。


D50登場は自動連結器採用時期に重なり、その牽引力を基準に貨物列車長、駅本線有効長の基準が定められ、D51/D52へ続く系譜の基になる機関車発展史上重要な位置を占める蒸機ですが、9600とD51の間に埋もれ、認知度も人気もパッとしない地味な存在になってます。

【某中古品販売サイトより】
モデル化車輛欠乏症状態のNゲージ、どこかが模型出してるかと調べたらありましたね。 ちなみに140号機はD50現役稼働最後の1両で、現在梅小路に静態保存されてます。

【某中古品販売サイトより】
ついでにD50同級生とも言えるC51はどうかとググってみると、やはりマイクロエースから出てました、大手がやらない処で土俵を変えて戦うしかないNo.3の悲哀を感じます。

【磐越西線中山宿SB駅のD50】・・・1960年10月
D50とC51は筆者にとって数年間に合わなかった蒸機で、共に現役時代の姿を知りません。 D50はその気があれば北九州まで出掛ければ間に合ってるのですが、撮り鉄趣味がなく目にする機会がありませんでした。

掲載1963年末配置表によると全国に分散配置されてます。 幹線用強力蒸機は電化により早期に職場を失う宿命を背負っており、一部がより線路規格が低い線区で運用可能にする2軸従台車化改造を受けD60になってます、D52⇒D62、C59⇒C60と同じ手法です。

D50より10年古い9600は設計に携った方の回顧録が掲載されてましたがD50にはありません。 D60改装は戦後国鉄浜松工場で最初に行われ、第2陣として長野工場で実施されたD60改装工事回顧録が掲載されてます。

国鉄長野工場では1952年-1956年の簡に15両のD60改装を行ってます。 前後の所属機関区から高線路規格路線から低い池北線、横黒線、筑豊本線等に職場を移した事が解ります。

従台車2軸化するだけでも結構な苦労があった様です、計画時は車齢の若いD60で9600早期引退案がありましたが、曲線通過性能に難がある事に加え、現場からの猛反対に逢って実現しませんでした。 9600が名機の証明であり、この時代はD51と共通運用されてました。

国鉄はD51余剰でD50/D60廃車計画を立てました。 この時代に幹線電化が進み1963年11月配置表から2年間の余剰D51発生予定が140両と2/3になり、D50廃車が一気に進みました。 筆者が一人旅できる様になった1960年代後半は北九州にわずかに生き残るだけでした。

【久大本線 恵良-引治間 1958年3月】
久大本線の客レ本務機を務めるD60です。 見た経験なくスタイルブック/鉄道雑誌や模型作例見ただけという点では古典輸入機やC53と同じですが、何故か懐かしさを感じます。

【八高線 寄居駅 1962年9月】
それは恐らく1960年代を共に過ごした仲間意識の様な物で、機関車が懐かしいのではなく活躍写真に写り込んだ時代風景に郷愁を感じる様で、拙レイアウトコンセプト『昭和40年代の鉄のある風景』に通じます。


写真寄居駅は長閑な雰囲気ですが、国鉄八高線と秩父鉄道の交点、かつ東武東上線終点の拠点駅で、秩父盆地で生産されるセメントの原料・製品輸送が八高線貨物輸送の柱でした。 右手島式八高線本線ホームとD50貨物列車停車の貨物側線、左手奥に見える私鉄ホーム間の数本の側線が、寄居駅で貨物入換作業が頻繁に行われてた事を表してます。

【紀勢本線 紀伊内原-紀伊由良間 1963年5月】
なだらかな築堤上を進むD60の牽く貨物列車です、筆者が惹かれるのは周囲の風景です。 左手の多分未舗装路は背後山の小さな尾根谷に合わせうねってます、小さな集落の家々にはハウス系のモダン建築はありません、鉄路との間に田畑が広がるザ・昭和の風景です。


◆磐越西線 大寺-翁島間
当時首都圏在住撮り鉄さんには『D50見たけりゃ大寺へ行け』と有名だったと思われます、磐越西線郡山から会津への峠越えでD50が活躍してた様で、全て大寺-翁島間の撮影です。

【1963年3月】
貨物列車牽引のD50、峠越えの鉄路と背後にかすむ磐梯山の3月は雪に閉ざされてます。

【1963年8月】
貨物列車牽引のD50ですが撮影日記載ミスプリとしか思えません、多分8月⇒3月です、線路脇や背景磐梯山の様子はどう見ても雪景色です。

【1962年11月】
貨客両用でD50/D60は共通運用されてた様です、客レ牽引のD60、磐梯山は初冠雪です。

【1961年7月】
コチラは客レを牽くD50、ありきたりですが磐梯山はどの季節でも絵になりますね。

【1962年11月】
重量貨物列車は補機運転されてました。 逆推進後補機を務めるD50です、煙の流れる方向でも右へ進行してるのが解ります。

【1963年3月】
D50補機の単機回送です、峠の上りと下りで勾配が異なり、補機を必要とするのが1方向の場合、単機回送が発生します。 今回はここまでです。


ではまた。

Hyper-G湖南仕様改修⑭ヒゲ退治

亀の歩みの様なHyper-G湖南仕様改修は、ようやく『軽負荷時ヒゲ対策』を残すのみになりました。 早く完成しなと『がおう☆』さんレイアウト完成しそうですし、試験運転ニーズがあるハズです(滝汗)

【早くしないと日が暮れる】
前回書いた様にこの件を最後にしたのは様々な要因の複合汚染で、他の問題解決後でないと何を見てるか解らない可能性があったからです。


◆ヒゲ問題は根が深い
また問題の軽負荷時ヒゲは、安全性保証回路追加前にはなかった現象で、削除不能な安全性保証回路関与が確実な根が深い問題と解ってました。

【旧データより加工】
その証拠がこのデータ、蒸機常点灯特性改善の為にBAT43奥の手回路追加時の出力波形で、手持ちHyper-G電源使用で470Ω負荷0.5V出力、立ち上がりにヒゲは発生してません。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑤』より転載】
湖南電源に安全性保証回路追加したらピーク23Vのヒゲが発生しました、モーター信頼性悪影響を避けるには16V、できれば15V(KATO Hyper-Dピーク電圧)以下に下げる必要があります。 電源パスコンや安全性保証回路損失低下で改善しましたが、不十分な現状です。


◆現状レビュー
様々な問題対策改修をしたので、軽負荷時ヒゲの現状を整理します。

ヒゲ発生の根本原因はPWMオン瞬時に急増する電流です、10.8Ω負荷で約1Aです。 安全性保証回路なしの場合は回路系と電源出力GNDが共通なので大きく振られる事はなく、ヒゲの発生もわずかで許容内です。


安全性保証回路は電流検出の為に回路系と電源出力GNDを分離した結果、ポリスイッチ抵抗で電流が電圧に変換され振られます。 出力TRスイッチング速度が非常に速いので、フィーダー出力までの長い伝送路の配線コイル成分と、配線間を含めた回路図に現れないコンデンサ成分でヒゲ=高周波ノイズが発生してます。 その様子を波形で確認して行きます。

上赤色が出力TRエミッタ、縦軸2V/目盛です、PWM立ち上がり時に9.5V-13.0V、3.5Vのヒゲが出てます。  下白色が基準GND(回路系GND)とPS GND間、つまりポリスイッチ両端で、縦軸1V/目盛です。 PWMオン時だけ0.35V上昇してる事から、ポリスイッチ抵抗が約0.35Ωと解ります。 1.3Aでトリップすると一気に上昇しラッチ回路をオフします。

GNDプローブをPS GNDからDR SW GNDへ繋ぎ替えました、その間は20cm弱の配線だけですが、PS GNDになかった-0.8V-1.6V、2.4Vのヒゲが発生してます。 10MHz以上超高周波数帯でしか起きない現象です。

GNDプローブを負荷GNDに繋ぎ替えました、DR SW GNDからは約2.2mの配線です、ヒゲが大き過ぎるので縦軸2V/目盛に切り替えてます。 ヒゲは-3.8V-5.0V、8.8Vと4倍近くに成長してます、ここから給電してレール2-3m先は?と考えると空恐ろしくなるほどです。


電源出力基準のGNDがこれだけ振られたら出力にヒゲ出るのは当然です。 出力TRエミッタヒゲはGNDヒゲの回り込みで、それがパスコン追加効果が限定的だった理由です、GNDヒゲを大幅減するしかありません。 また配線抵抗により0.35Vは0.5Vに上昇してます。


◆改善策の決定
現状レビューにより、Hyper--Gの超高速スイッチングノイズが安全性保証回路追加により、大きく拡大されてるという皮肉な事実が解りました。

考え得る改善策は以上の通りで、高速スイッチングでシャープな波形のHyper-G特徴を性能低下させる根治療法とヒゲをリミッタで抑え込む対症療法があります。 出力トランジスタのスイッチング速度が遅い品種変更案は設計やり直しで非採用、スピードダウンコンデンサ設置を有力案として検討し、ツェナーダイオード対症療法をバックアップにしました。


◆スピードダウンコンデンサとは?
コレ筆者造語です。 スイッチング電源回路ではスイッチング速度を早くする為に設置する『スピードアップコンデンサ』が良く知られてます。 それと真逆の使い方をして早過ぎるスイッチング速度を、ヒゲを抑え性能に悪影響ない程度遅くするスピードダウンです。

簡単に解説します、興味のない方は読み飛ばしてください。 一般的なスイッチング電源制御信号出力はアクティブ・ハイ、制御信号H(電源)で出力TRオン、L(GNDまたはオープン)でオフの論理になっており、制御信号出力と出力回路接続は上図の様になります。

スピードアップコンデンサは図R10と並列に設置し、制御信号L⇒H切り替り時にTR01を瞬時にオンさせ応答速度を早くする役割を果たします。

Hyper-G採用の高速コパレータは、制御信号出力がオープンコレクタTRで、TRオフ(オープン)時にR10で出力TRオン、TRオン(接地)時に出力TRオフの逆論理になってます。 上図コンパレータ出力=TR01ベースは、出力TRオン時0.7Vオフ時0Vの動作をしてます。

さてR10並列にコンデンサ追加した場合を考えます。 コンパレータ出力0.7V⇒0V時、出力TRオン⇒オフ時は、コンパレータ出力TRがコンデンサを瞬時に充電するので変化なし、従って立ち下がり特性も変化なしです。


コンパレータ出力0V⇒0.7Vの場合は、コンデンサ充電電荷をR10で放電するので、コンデンサがない場合より時間が掛かります。 0.6V-0.7Vの間でTR01が徐々にオンするのでち上がりを遅くするスピードダウン効果があります。 ノイズ周波数成分から計算した最適値は100pF-330pF(p=ピコは1兆分の1)、手持ちは102K(1000pF)しかありません。


◆102Kスピードダウンコンデンサの性能評価
理論最適値310倍の102Kでは立ち上がりが鈍り過ぎると思いますが、ヒゲへの効果検証と発注が必要なコンデンサ容量値決定基礎データとして102Kを追加して計測を行いました。

負荷GNDの-3.8V-5.0V、8.8Vのヒゲは-2.0V-1.6V、3.6Vと半分以下になりました。 特に影響度が大きいプラス側は5V⇒1.6Vで1/3以下です。 もっと劇的なヒゲへの効果あると思ってたのですが意外でした。 ここからは102K追加の変化をBefore/Afterで見て行きます。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑬』より転載】
最初のBeforeは10.8Ω負荷、常点灯Max調整の出力波形です、負荷両端の計測です。 PWM立ち上がり時のGNDの5Vヒゲが、出力TRエミッタ電圧低下の原因になってます。

Afterです、Beforeでは0V⇒10Vが1μsecでしたが、黄点線丸の様に約2倍になっており、明らかに立ち上がり速度が遅くなってます、また出力TRエミッタ電圧低下も減ってます。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑬』より転載】
2番目の比較計測は470Ω負荷の出力ヒゲが問題になった条件です。 常点灯Max出力電圧2.30V、ヒゲピークは15.6Vでした。

この波形見た時には思わず声を上げました、4V近いヒゲがわずか0.8Vに改善されました。 10.8Ω負荷時の波形より立上り時間は相当短く、行けるかもと期待が膨らみました。 しかし立ち上がり速度は遅くなっており、その影響で常点灯Max出力電圧が低下してます。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑬』より転載】
3番目の比較計測は470Ω負荷、最小安定発振調整です。 常点灯出力電圧0.23V、ヒゲピークは16Vでした、 波高値12Vキープは高常点灯性能のキモなので結果が気になります。

そのAfterがこちら、波高値12Vをクリアしヒゲも許容内に改善されてます。 立ち上がりが遅くなってパルス幅が狭くなり、最小安定発振出力電圧が0.18Vに低下しました。 結果的には蒸機常点灯調整範囲が広くなりました、こうなると蒸機負荷も計測したくなります。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑪』より転載】
蒸機負荷のBeforeは損失低減前のコレが最新データです。 最小安定発振出力電圧0.16Vで、ヒゲのピークは18.0VのNGレベルでした。

立上りが遅れてパルス幅が狭くなり、最小安定発振出力電圧は0.097Vに低下、ヒゲは14.0Vピークに改善されてOKです。 抵抗負荷より最小安定発振出力電圧が低いのは、黄点線丸部のモーター逆起電力の影響です。 スピードダウンコンデンサ容量減らすと、ヒゲのピークは確実に上昇します。 様子見した手持ち102Kが偶然にドンピシャの結果でした。

最低安定発振出力電圧0.1V弱の常点灯で、実用下限値をクリアしてます。 以上の確認結果により102Kスピードダウンコンデンサ追加を軽負荷時ヒゲ対策として採用決定しました。


これで一件落着?、実はそうではないのです。 軽負荷時ヒゲは伝送路の高周波ノイズ拡大と解りました。 湖南電源メインCHとサブCHは6Pケーブルで接続されており、サブCHは伝送路が長く確認が必要です。

今にして思えばコンパレータ2回路だから簡単に2CH化可能と考えた浅はかさを呪いたくなります。 1CHなら全体に1.3Aポリスイッチ入れるだけ、安全性保証回路不要で、軽負荷時ヒゲに悩まされる事もありませんでした。 でもここまで来たら今更後に引けませんね。


ではまた。