Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

60年前の鉄道P誌 1963年8/11月号

さて、今年から鉄道P誌紹介をテーマ毎に切り替えましたので、その裏話や落穂拾い的記事で隙間を埋めて完結させます。

【鉄道P誌1963年8月号表紙】
表紙は電車化された上越線急行『佐渡』です。 信越本線電化特集号で、廃止されるアプト式に関連し興味深い記事が多く掲載されてます。 連載した碓井峠百年物語はこの号掲載記事を基に、追加調査でまとめた物です。 記事化の調査で新しい知見が増えました。

【鉄道P誌1963年8月号裏表紙】
裏表紙は東急系列伊豆急広告、特急工事で開通させた路線です。 この号単独ネタは根北線遊記だけで、54年前に廃止された路線です。 またこの号には私鉄ロマンスカーの系譜前編記事が掲載され、戦後私鉄各社が歩んだ高速化とデラックス化の歴史を紹介しました。

【鉄道P誌1963年11月号表紙】
8月号に前編掲載された私鉄特急ロマンスカーの系譜後編は3ヶ月後の11月号掲載でした。 それにふさわしく表紙は10月登場のバリバリ新車東武1720系と旧ロマンスカー5500系の新旧が並んだ写真が使われてます。 テーマ毎切り替えで8/11号掲載各地のトピックスは紹介済です。 8月号未紹介記事に興味深い内容がありましたので紹介します。

動力近代化計画を含む国鉄5ヶ年計画については2022年7月に拙ブログで紹介しました。
★昭和40年国鉄第3次5ヶ年計画から➊
★昭和40年国鉄第3次5ヶ年計画から➋

【2022.07.26記事より転載】
1963年は第2次5ヶ年計画3年次で、上記公開記事の2年前ですが、電化による動力近代化に的を絞って別の方が現状整理と将来予測をしてます。

国鉄全体の輸送量=客貨車キロは1952年-1962難の10年間に1.5倍増加し、蒸気の動力比率は80%の主役から、1960年に電気に追い付かれて追い越され、1962年には40%強とすでに脇役になってました。 またこの間徐々に増加したディーゼルも10%を越えてます。


1962年-1972年の10年間で輸送量が更に1.5倍近く伸びると予測してます。 この時点の計画で蒸気比率ゼロ、すなわち無煙化は1975年となっており、その時の動力比率は電気75%、ディーゼル25%の計画です。 無煙化はこの計画通りに達成されました。

始めて見た面白いデータがあります。 1962年客貨車キロと動力比率、それを担う動輪周馬力の比較です。 『パワー伝達効率』と言える物で、47.1%パワーを使い41.7%輸送する蒸気より、42.9%のパワーで47.5%輸送する電気の方が計算すると26%高効率です。


これは仮称『パワー伝達効率』だけの話で、同じパワーを生み出す蒸気機関と電気モーターの『エネルギー変換効率』は数倍と大きく違うので、電気の方が圧倒的に省エネなのです。 つまり動力近代化とは電化とディーゼル化で蒸気を駆逐し、大幅な人員削減とエネルギー効率向上でコストダウンを果たす合理化策で、煙害防止は行きがけの駄賃の様な物でした。

1963年常磐線平電化、信越本線長野電化完成時の電化計画進捗状況をまとめた表です。 『工事中』は間もなく完成する東北本線仙台-盛岡間、北陸本線金沢-富山間、中央本線/篠ノ井線松本まで、山陽本線全線で、『未着手』がその次の優先順位と見る事ができます。

電化区間延伸の推移と今後の予測です、1962年度末で3,333,m、1963年の平電化、長野電化、山陽本線全線電化完成で3,750km、600km/年ペースで電化区間延伸の計画です。

当時の電化完成と電化計画路線図です。 全国図では見難いので、地域毎にどの路線を電化する計画だったのか見て行きます。

【北海道の電化及び電化予定線】
1962年の北海道に電化区間はなく、上表点線区間が電化予定線になってました。 この中で実際に電化されたのは、函館本線小樽-旭川間、函館-新函館北斗間と千歳線、後年開業した札沼線一部を含む学園都市線の札幌近郊だけで、他は計画倒れに終わってます。


当時室蘭本線では最大1,500tの長大運炭列車をD51が牽引しており、電化で電機置き換えが計画されましたが、石炭産業自体が斜陽化し沙汰止みになった様です。 室蘭-函館間は、北海道には飛行機の時代になり、電化と期待収益増が見合わなかったのだと思います。

【東日本の電化及び電化予定線】
東日本では物流大動脈東北本線と日本海縦貫線、それを補完しバイパス機能を持つ奥羽本線、常磐線、信越本線長野-直江津間の優先順位が高かった様です。 中央西線、篠ノ井線、磐越西線郡山-喜多方(図は会津若松)間はそれに次ぐ優先順位だったと思います。


このエリアはほぼ計画通りに電化されており、総武本線は成田空港アクセス、内房線、外房線、相模線は首都近郊路線として計画以上に全線電化されてます。 不思議なのは水戸線、計画通り電化されましたが、何故こんな早期に電化予定線だったのか解りません。

【西日本の電化及び電化予定線】
西日本では全線電化計画だった関西本線亀山-加茂間が非電化のまま残りました。 紀勢本線では白浜口までの計画が新宮まで伸びてます。 首都圏で起きた事が関西圏でも起きており、この時点で計画されてなかった福知山線、奈良線、加古川線、和歌山線が全線電化、山陰本線京都-城崎間が部分電化されました、湖西線はまだ計画段階だったと思います。


山陽新幹線延伸に伴い、陰陽連絡のキーマンに伯備線が選ばれ電化されたのは、新幹線を軸とした交通網再整備の動きです。 四国の電化は瀬戸大橋架橋に始まり、高松-伊予市間と多度津-琴平間に留まってます。

【九州の電化及び電化予定線】
九州南北を東西で結ぶ鹿児島本線、日豊本線の電化は至極当然で計画通り電化されました。 佐賀、長崎の県庁所在都市を結ぶ長崎本線と軍港佐世保(後にハウステンボス)へ至る佐世保線も納得性が高く、佐世保線は全線電化されましたが、長崎本線は奇妙な動きでした。


鳥栖側から諫早先まで、長崎側からも電化工事が始まり一部完成した時点で西九州新幹線の地元協議が難航し一時中断した様です。 最終的に上下分離方式で決着し2022年9月に西九州新幹線開業で電化達成、これに合わせ長崎方の電化区間は非電化に戻りました。

【鉄道P誌1963年11月号裏表紙】
11月号裏表紙は阪神電鉄広告でした。 『予定は未定にして決定にあらず』とは良く言った物で、国鉄電化の計画と実績がかなり違ったのは面白い事です。 しかしこだわる様ですが京都-奈良間の奈良線電化計画がなかったのに、水戸線電化計画の背景は謎のままです。


ではまた。

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