Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

駅の植物学

マニアは詳しい部分は細部までこだわり、知らない部分は大雑把で済ます傾向があります。 レイアウト製作でも、用水路のない水田に何じゃコリャと筆者は感じますが、車両の仕様に詳しい方が当社のキハ20系床下機器装着したキハ58に何じゃコリャとなる様な物です。

レイアウト鉄道関連施設はそれぞれのこだわりでメリハリを付けてますが、植物に詳しくこだわる人はゼロに等しく、貧相な杉が疎らに生えてるだけで実感に乏しいと、半世紀前にシナリーガイドK氏が指摘しました。 今回はK氏の駅と植物に関する記事の紹介です。


序文の中でK氏は構内ストラクチャと同様に生垣、植え込み、草花、駅前・駅裏の樹木など植物が重要だと述べてます。 植物学と言っても学術的な物でなく、どんな場所にどの様な『大きさ』『形』『色』『茂り方』の植物が植えられてるかを学ぶ植物形態学です。

【山田線 千徳駅】
例えばこの駅、ホーム境界を示し侵入を防ぐ密生した生垣、奥に木製柵に囲まれた植え込みに山吹の様な細い枝を伸ばした植物が植えられてます。 駅本屋脇には樹高7-8mの小振りな樹木が植えられ、これらが駅名標等の人工物と一体となり駅の雰囲気を作ってます。

【東北本線/花輪線 好摩駅】
南北に長い日本は、植物が鉄道所在地方や季節を表現する手段になります。 好摩駅構内には北国らしくポプラがあり、奥に見える建屋が駐泊所と思われます。 樹高17-18m前後ですが、16番で210mm、Nで120mmの樹木があるレイアウトは多くないと思います。


1.実感的レイアウト植物のポイント
レイアウトの植物を実感的にするポイントは以下2点です。
➊大きさに変化を付ける、特に駅のテーマツリーの大木の取り入れ方。
➋茂り方を変化させる、形(全体・枝振り・葉)、色、粗か密かなど。


2.生垣
ここからは植物のある場所毎に実例を見ていきます。

【紀勢本線 稲原駅】
国鉄駅に良く見られたウメバガシの生垣で、濃い緑色で密生してます。 手入れが行き届いた駅では刈り込まれ真四角ですが、放置すると次第に形が崩れボサボサ頭の様になります。 幹線では枕木柵との併用も見られ、この駅では後ろに桜が並んで植えられてます。

【篠ノ井線 冠着駅】
生垣の目的は境界表示と侵入防止なので密生する植物なら良く、細く長く伸びた枝が集まるハギも使われており、前出ウメバガシとは雰囲気が違います。 生垣が設けられるのは駅舎側ホームが普通で、対向ホームは柵だけ、ローカル小駅では何もない事もありました。

【磐越東線 江田信号所】
育てれば大木になる杉や松も生垣として、山陰ではクロマツ、北海道ではカラマツが使われてました、寒冷地に多かった様です。 この例はホームではなく、信号所建屋を杉の生垣で囲んでおり、手前土手のヤマユリが山の中の信号所の雰囲気を盛り上げてます。


3.ホームの植物
生垣が設置目的を持ってたのに対し、植え込み・花壇・並木などホームの植物は主に利用者の目を楽しませ、駅を飾る物です。

【山陰本線 下山駅】
駅舎側ホームに背の低いかん木の植え込みが並び花が咲いてます。 右側の撤去された貨物側線跡は草が伸び放題です。 対向ホームには低い生垣があり、樹高7-8mの桜並木になってます。 対向ホームの植え込みは常緑樹で、駅舎側ホームと色も形も違います。

【同上】
前写真からホーム端へ引いたアングルです、桜並木の中に1本樹高が2倍ほどの木が植えられアクセントになってます。 実感的レイアウト植物のポイント➊の『大きさに変化を付ける』の実例です。


しかし、シナリー重視の筆者でさえDF50旧客列車に目が行ってしまうのに、フィルム代もD.P.E.代も高かった当時に、鉄道写真家が誰も目を向けなかった鉄道関連施設にカメラを向け続けたK氏のお陰で、貴重な資料が残った訳で、改めて頭が下がる想いです。

【山田線 蟾目駅】
待合室付近に日影を作る目的で植えられた大きな植え込みです。 この写真もそうっですが、停車中の車窓またはデッキから撮影されてます。 実感的レイアウト製作へ向けた資料収集だったのでしょうか。

【釜石線 似内駅】
対向式ホーム駅に比べ島式ホーム駅は植物を植えるスペースが少なくなりますが、この例の様に駅名標脇の小さな植え込みや、季節の花々が咲き乱れる花壇が良く見られました。


3.駅の庭園
駅舎がホームより一段低い築堤の下、または逆に一段高く設置された駅では、駅舎とホーム間の斜面が格好の花壇や庭園に利用されてました。

【磐越東線 川前駅】
この例は駅舎が低い例で、ホームから駅舎改札口に向かう通路に柵が設けられ、花や駅舎内を目隠しする様に背の高い生垣があります。

【同上】
同駅詰所脇の空スペースは小型かん木を寄せ植えにして庭園風になってました。 これらの植物の世話は駅務員が行ってた訳で、民営化され採算重視のJRでは考え難い事です。


なおK氏はコレをレイアウトに取り入れる場合は、周囲ストラクチャのレベルを上げないと箱庭的になり、逆に実感を損なうと注意してます。


4.駅前の樹木
駅前の広場には鉄道開通時や駅開業時の記念樹として植えられ、鉄道の歴史を見ながら育った大きな樹木がありました。

【紀勢本線 紀伊内原駅】
育ちの早い楠は駅前に良く見られましたが、これはまだ育ち切っておらず樹高10m程度です。 筆者記憶によれば、駅前に駐車してる車は昭和36-37年のトヨペットコロナであり、その頃の撮影だと思われます。

【山陰本線 下山駅】
駅前樹木には松も良く見られ、この例は根元を石で囲み養生した黒松2本、1本は若木です。 奥の便所脇には別の木が植えられてます。 他に駅前樹木には柳・ヒマラヤ杉なども多く、南国ではフェニックス・ビロウなども見られ観光地ムードを高めてたと書かれてます。

【舞鶴線 梅迫駅】
大木が多い駅前樹木例示のモミの木で、阪鶴鉄道開通時記念樹と推定されてます。 下枝を払った樹形は当時の16番用市販樹木と同じ杉型ですが、樹高15mほど、16番スケールで190mmはサイズが全く異なります。


大木は単なるオーバースケールではなく細密加工の価値があり、上手く使えばレイアウトを雄大に見せる効果があると言うK氏主張は正しいと思います。 自然には樹高20mを越える樹木がザラにあり、Nスケールで100-140mmは十分可能だと思います。[続く] 


ではまた。

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