Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

Hyper-G湖南仕様改修⑬損失低減

今回は安全性保証回路の損失低減検討です。

【1番線到着急行待避の4番線各停DC】


◆安全性保証回路損失低減の検討
安全性保証回路は理論設計して組立て動作したので、各部が理論値通りになってる詳細検証をしてません。 損失が理論値倍近くになってるので、まずそこから確認を開始します。

最初にTR91ベース抵抗R92を確認しました。 1本では許容損失を越えるので300Ω2本並列にしてます、万一半田付け不良で1本300Ωだとベース電流が半減しTR91損失が増えるからです。 計測結果149ΩでOKでした。

次にTR91ベース電圧を確認しました、理論値はエミッタより約0.7V低い電圧です。 計測結果は11.54Vでエミッタより0.70V低くOKです。

次にTR92コレクタ電圧の確認です。 TR92はオンしてるのでコレクタ電圧は飽和電圧Vce satだけ、高くても1V未満のハズです。 計測結果を見て67.7mVかと思ったら何と6.77Vでした、これはトンデモナイ値で、TR92が理論値通りオンしてない事を意味します。

【秋月2SA1386データシートより】
R92 150Ω両端が11.54Vと6.77VではTR91ベース電流が理論値半分弱の32mAで、上図オレンジ点線の様にTR91のコレクタ・エミッタ損失が2倍以上になってしまいます。

【秋月2SC1815GRデータシートより】
TR92の2SC1815GRは出力回路にも2SA1359とセットで使用してます。 出力回路はコレクタ電流24mAでオーバードライブを避ける為ベース抵抗33kΩ、ベース電流0.3mA、直流電流増幅率80倍で設計しました。


ラッチ回路はオーバードライブによるToff気にする必要ないのに、コレクタ電流3倍の75mAだからベース電流の3倍強の1mAで十分とR93を安易に10kΩにしました。 Vce satが6V以上になってる現実から考えられる可能性はベース電流不足かTR92不良しかありません。

【R93追加の5.6kΩ】
それを確認する為にR93並列に5.6kΩを追加して3.5kΩにしてベース電流3倍にしました。

しかしコレクタ電圧計測結果はは2.04Vでした、TR92が軟破壊してると判断しました。

そこでTR92交換したのですが、コレクタ電圧計測結果は1.7V、??と頭を抱えました。 Vce satは1V未満が常識でこんな経験なかったのです。

【秋月2SC1815GRデータシートより】
答えはデータシートの少ベース電流条件特性表にありました。 ベース電流3mAにも適用可能とすれば、出力回路では0.5V未満だった2SC1815GRのVce satが、ラッチ回路動作点では約1.5Vに増大します、これでは設計値75mAのTR91ベース電流は66mAしか流せません。

【秋月2SA1386データシートより】
TR91損失減らしたいのにベース電流が設計値より減っては損失増えてしまいます。 実際にはレアケースですがA/B両CH最大出力時負荷電流は2.55Aになるのでベース電流を100mAに増加させる決定をしました。

具体的にはR92を150Ω⇒100Ω変更で電流1.5倍、66mAを100mAに、TR92ベース電流増加が必要なのでケチらずR93 1kΩで10mAにします。

➊R93は10kΩ⇒1kΩ変更ですがR92は300Ω/1Wを使います。
➋確認抵抗値計測294ΩでOKです。
➌現在2本並列に更に1本並列に付け加えます。
➍計測結果98.8Ω、これでベース電流1.5倍になります。

TR91ベース電流1.5倍にして再計測するとTR92のVce satは0.77Vまで低下し、ベース電流計算結果は106mAになりました。 この用途ではベース電流十分流す必要がありました。

更に損失要素を最小化する為にPS91をジャンパーしました、2.7Aトリップ仕様ですがACアダプター保護回路が3A強で動作するので大丈夫です。 また、出力ショート時安全性保証回路動作を確実にする目的でショットキーダイオード挿入位置を変更しました。

TR91動作点変更前の出力波形Beforeです。 ここからTR91とポリスイッチ合わせ0.37Vの損失をどこまで減らせるかが今回の検討です。

TR91動作点変更とPS91ショートで出力電圧波高値が0.2V改善し10.6Vになりました、また同時に立ち上がり時の電圧低下が11.6V⇒7.4Vの4.2Vから、11.7V⇒8.8Vの2.9Vへ31%改善しました。 ベース電流増加が出力電流変化影響を減らし、ヒゲにも効果ありそうです。

負荷抵抗を470Ωに変更し計測すると、ヒゲピーク値はまた少し下がり15.6Vになりました。 通常モーター車走行開始しないと心配してた常点灯Max調整は2.3Vでホッとしました。

安定発振最小出力までボリュームを絞ると、パルス幅が狭くなるだけで大きな変化はありません、出力電圧は0.23Vでコアレスモーター蒸機常点灯に十分な性能が得られました。


次回は軽負荷時ヒゲの検討を行います、最後に残したのは今回TR91ベース電流100mA化で改善があった様に、ノイズ(ヒゲ)は様々な要因の複合汚染の可能性が高く、他部分を最終化してからでないとイタチごっこになる可能性が高かったからです。 


ではまた。

半世紀前の鉄道P誌1964年2月号①

前例に倣い蒸機特集は後回し、その他の話題からです。 1964年東京オリンピック開会半年前、新幹線開業前の時代です。


◆巻頭グラビア

朝靄の中を疾走する上り特急『あさかぜ』です。

巻頭グラビア被写体選定には背景があり、前年末からブルトレ特急牽引機がEF60 500番台に交替したとTOPICSにありました。 こちらは愛知県御津付近の特急『みずほ』です。


◆TOPICS-1:中村線開業
四国西南部は長らく鉄道空白地帯でしたが、1963.12.18に中村線が開業しました。 現在は土佐くろしお鉄道中村線として存続しており、国鉄最後の新設路線予土線と共に四国環状鉄路を維持してます。

土讃線終着、中村線起点窪川駅での祝賀列車発車式の様子です。 窪川はとりあえずここまで線路敷けました感のある終着駅で、別線名でなく土讃線延伸でも良かったと思います。

後に予土線分岐点になる若井駅での祝賀列車です。

若井-稲荷間のループトンネル出口を往くキハ58です、トンネル掘削技術進化が山間僻地に鉄道敷設を可能にしたと良く解ります。

中村線の優等列車準急『足摺2号』です。 予土線開通後に高松-窪川-宇和島間に急行『あしずり』が運転されましたが短期で廃止されました。

各駅停車のキハ25、と言う事は最低2連、現在は小型気動車単行です。


◆TOPICS-2:博多新駅開業
博多旧駅ご存じなのは九州で生まれ育った65歳以上の方でしょうね。

1963年11月30日の博多旧駅、2階窓に明治43年建設の建築様式を感じます。 旧駅は新駅より市中心部に近い600m離れた場所にありました。

1963年12月1日の博多新駅です、旧駅終発から新駅始発の4時間で慌ただしい引っ越しだった様です。 当時の斬新な駅ビル、2007年まで使用され現駅舎へバトンタッチしました。

【現在の博多駅】・・・ウィキペディアより
コチラが現在の博多駅、2階⇒7階⇒10階以上と高層化が進んでます。

新駅開業祝賀列車に選ばれたのは特急『かもめ』です。

新駅はホーム4面8線、8番線発車の下り特急『はやぶさ』です。 更に2面4線の用地確保がしてあり、後の新幹線開業博多駅に活用されました。


◆TOPICS-3:旧型国電の動向
101系153系を新世代国鉄電車の祖とする説もありますが、70系80系を祖とする見方もあります。 ここで言う旧型国電とはそれ以前の形式です。

上の写真はスカ色塗装の3扉改造を受けたモハ43系2連ですが撮影地推測が全くできませんでした。 何とこれ横須賀線久里浜付近です、海水浴で利用した横須賀線の記憶は70系8-12連で、旅客の少ない横須賀-久里浜区間列車として運行してた様です。

同じくモハ43系ですがオリジナル2扉、伊東線113系投入で余剰となり飯田線へ転属してきました。 以降飯田線は旧型電車の宝庫と呼ばれる時代が長く続きました。

JR化後新型車投入される様になった南武線も当時は旧型電車の吹き溜まり、17m級天国の同線に20m車クモハ41登場がニュースになってます。

1963年12月10日、津田沼行総武線電車が運転士の信号無視が原因で貨物列車と接触し脱線転覆しました、新小岩駅構内です。 1962年5月に『三河島事故』、1963年11月に『鶴見事故』の鉄道史に残る大事故が相次いで発生し、ATS設置の契機になりました。


◆TOPICS-4:首都圏の話題
オリンピックを目前に控えた首都圏の話題を国鉄に限定せず紹介します。

【建設中の東京モノレール1963年12月26日】
羽田空港と浜松町を結ぶモノレール建設現場です、1964年9月17日開業で東京オリンピック開幕に間に合いました。

【田端機関区1963年12月22日】
5年前まで東北/常磐蒸機のメッカだった田畑機関区はEF80を始め、DD20/DD13等新鋭機で満杯となり昔日の面影が無くなりました。

【都営地下鉄1号線開業 新橋駅1963年12月17日】
営団地下鉄に都営地下鉄が加わったのが1963年です。

【業平橋で解体を待つ東武鉄道蒸機1963年12月3日】
この時期に10両以上在籍してた東武の蒸機が次々廃車されてます。 オリンピックで戦後復興を遂げた日本を世界に喧伝する意図があり、蒸機は捨て去るべき古臭い物の扱いでした。

【東急東横線新丸子1963年11月30日】
渋谷-日吉間のみ6連化され7000系6連が運転開始しました。 筆者記憶では部分6連化期間は短く、全線6連化され急行6連運転が始まりました。

【東横線多摩川橋梁1963年11月2日】
先行6連化されたのは7000系とこの6000系、いずれもステンレス車です。 この鉄橋1km上流に巨人2軍グランドがあり、長嶋が調整に来る噂に釣られ休みに出掛けたりしました。

【東横線大倉山-菊名間1963年12月1日】
生まれ育った沿線なのでエコ贔屓して『青ガエル』5000系の登場、4連区間の急行運転です。 新幹線高架工事が進んでますが交差橋梁はこれからです。 全線6連化後5000系は4+2非貫通で6連運転されてました。


◆TOPICS-5:新車情報DD21
鉄道P誌は実車新型車紹介があるのが魅力でした。

除雪列車の無煙化も進んでおり、DD15が既に配備されてました。 入換機兼用DD15は除雪出動時に除雪装置脱着に手間が掛かり、その問題解消目的で試作されたのがDD21です。

除雪装置脱着が面倒なら一体化してしまえば良いの逆転の発想です。 入換機運用の場合は左右ブレードを折り畳み収納し、除雪装置の奥から連結器が現れます。 しかし入換機運用時に見通しが悪いと現場評価が悪く試作1両で終わりました。 結果的にはアイディア倒れですが笑う事はできません、この様な挑戦と失敗の先に成功があるからです。


ではまた。

Hyper-G湖南仕様改修⑫予期せぬ出来事

前回安全性保証回路各部損失の計測を行い、理論値と大きく異なる結果でした。 また抵抗電流検出を廃止し0.47Ωショートを決定しました。

【築堤を往く貨物列車】
今回はその後の進展です。 理論がなければ設計はできない、しかし現実は予期せぬ事が起こり理論通りとは限らない、物作りは難しいです。 Hyper-G湖南仕様改修記事はサッパリ人気ありませんが、何が起きて何をしたらどうなったかの記録を残す目的で書いてます。


◆前回計測結果と予期せぬ出来事
まず前回計測結果をレビューします。

安全性保証回路損失計測結果は想定外で何が起きてるかサッパリ解らん状態でした。 トランジスタ損失は理論値10倍以上、ズレでなく何か根本的間違いがある様です。 ダイオード損失は理論値通りで優等生、ポリスイッチ損失が微小で無視可能と判断しました。


抵抗損失も挙動不審、安全性保証基板内計測損失が理論値1.7倍、フィーダー線までの2.5m伝送路で6Vp-pのノイズ発生し、立ち上がりヒゲ原因の可能性があり、更に12V電源GND基準計測で出力が1V近く上昇する不可解さ、損失とノイズ軽減の為に廃止を決定しました。

さあこれでヒゲ問題解決と期待しましたが、結果は470Ω負荷も蒸機負荷も改善するが不十分の空振りでした。 ついでに10.8Ω負荷計測したら予期せぬ結果でした、0.47Ωショートすれば12V電源GNDと負荷マイナスは間にポリスイッチとディレクションスイッチが入り2.5m配線接続の同じGNDです。 理屈に合わない現象解明手掛かり採取目的の計測です。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑩』より転載】
前回計測では出力トランジスタエミッタまでに12Vが1.9V低下し10.1V、PWMオン時は更に1.3V低下して8.8V、コレクタはBAT43奥の手回路損失が加わり0.3V低下し8.5Vでした。 この状態からの変更点は損失に無関係な電源パスコン追加と0.47Ωショートだけです。

ところが1.9V低下してたエミッタは1/4近い0.5V低下、PWMオン時1.3V低下してた損失は0.9V、0.47Ωショートで抵抗損失なくしたらトランジスタ損失が1.8Vも減少したのです。 しかも10.8Ω負荷瞬時電流は0.81Aから0.95Aに増加しており、到底説明できません。


◆予期せぬ出来事の背景考察
オリンピックも回路動作も結果が全てですが、何故こんな事が起きたのか解析し、納得できる答を見つけて置かないと気持ちが悪く、何処でまたドブに嵌るか解りません。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑪』より転載】
そこで非常に気になってたのが金属皮膜抵抗で浮かせたGND波形、理論値0.38Vなのに実測値1.7倍の0.65Vは電流換算で1.38A相当です。 0.7Vでトランジスタが完全オンしてラッチ回路オフしPL赤表示しますが、0.65Vは中途半端なオン状態でオフではありません。

つまり0.47Ωで浮かせたGND電圧0.65VでTR93は不完全オンとオフの繰り返し、TR92は不完全オフとオンの繰り返し、ラッチ回路がオフしようとしてオフできない状態です。 その結果、TR91の平均ベース電流が減少し損失が増大します。 0.47Ωジャンパー線外して検証可能ですが専門的過ぎるし、もう0.47Ωショートと決めたので意味がなく止めました。


◆安全性保証回路損失再計測
0.47Ωショートでトランジスタ損失が大きく減少したので、新条件で再計測と再評価が必要です、同じ10.8Ω負荷、常点灯Max調整で計測します。

これからも回路変更可能性が高いので、日付バージョン管理にします。 再計測する安全性保証回路は0.47Ωショートした上記になります。

TR91エミッタ=ACアダプタ出力のテスター計測電圧は12.24Vで変化なし、PWMオン時にノイズが出て0.15V凹んでるのはACアダプターも負荷が重い時に出力電圧が低下するからです。 10.8Ω負荷端計測PWM波高値10.3Vが10.9Vに上昇した事に注目、オシロプローブGNDを2.5m配線とポリスイッチが入った12V電源GNDに繋ぎ変えただけの変化です。

コレクタ波形観察と電圧計測してホッとしました。 でもテスター計測平均値値12.21Vでわずか0.03V低下ですが、PWMオン時凹みが黄丸0.4Vになっており、増加した0.25Vが負荷電流0.95Aによるトランジスタ損失増加です。 理論値の倍近い値です。 

前回計測結果はトランジスタ非正常動作で信頼が置けないので、無視可能と判断した2.7Aポリスイッチ損失を計測しました。 コレクタから0.04V低下の12.17V、抵抗値換算すると0.13Ωで小さいですが、最大負荷時損失は0.18Vで無視可能と言えない微妙な値です。

ポリスイッチ後のショットキーダイオード損失は0.25V、出力は11.92Vです、この計測平均電流は0.31Aばのでデータシートで確認します。

データシート0.31A負荷の順電圧=損失は0.24V、計測値0.25VでOKです、最大負荷時損失は理論値0.29Vに収まりそうです。

2.7Aポリスイッチ損失抵抗換算値と1.3Aポリスイッチが同等と仮定すると、安全性保証回路基板の電源出力GNDはPWMオン時だけ0.11-1.12V凸になるハズです。 実際の計測値は3倍近い0.3Vで、0.47Ω損失と合わせ0.65Vになりラッチ回路動作異常を起こした前回計測結果と整合します。 損失があるポリスイッチと金属皮膜抵抗0.47Ωの併用は無理でした。

ここでオシロプローブを10.8Ω負荷GNDに繋ぎ替えます。 安全性保証回路測定点とは2.5m配線で接続され経由部品はディレクションスイッチだけです。 PWMオンオフ時に盛大なヒゲが発生し、損失は0.25V増加して0.55Vになりました、これが測定点による波高値差0.6Vの正体です。 ようやく全貌が見えてきました、電源各部の損失をまとめます。

計測結果を基にACアダプター出力が電源各部損失により、最終的にPWM波高値10.3Vになるかまとめました、計測結果損失と実測値の0.11V差異は誤差範囲と言う事で(汗) 出力電圧波高値10.5V以上必要と考えており、改善可能性については以下の通りです。
➊ショットキーダイオードと1.3Aポリスイッチは改善の余地なし。
➋配線損失も3A容量線を使用しており改善は望めない。
➌BAT43追加で0.1V⇒0.3Vに増加した出力トランジスタ損失は常点灯優先で変更不能
2.7AポリスイッチはACアダプター過電流保護に機能委託し削除可能。
ラッチ回路トランジスタ損失は理論値2倍で改善の余地あり。

【『TOMIX電気設計の検証 その6 使えます15V!』より転載】
出力電圧波高値10.5V以上の背景は二つあります。 市販電源N-1001-CLの同等負荷時出力電圧が10.5Vでこれを越えて置きたいのが一つ、KATOはACアダプター電圧上げて損失カバーしてます。 もう一つはノッチ5最高速出力電圧の高負荷時の飽和防止、速度計と出力電圧上昇を一致させる事です。 次回安全性保証回路損失低減検討へ進みます。


ではまた。