Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

湖南電源 出た!逆転サヨナラHR

やりましたやりました、ついに最後まで残った安全性保証回路動作を100%満足する形で解決し、湖南電源完成送品の目途が立ちました。

【小川を渡る急行】


5-4.パッチ回路の改修
前回詳細な波形観察により、過電流検出パルス幅が狭いとラッチ回路を一旦オフしても長いToffで再度オンし保護回路が動作してない実態が解りました。 長期間悩まされ続けてきた現象の犯人に突然出逢った様に感じました。 犯人が解れば解決法も見えてきます。

回路系GNDは正常時0.4V以下、ショート時0.8Vと明確な差があります。 0.8Vの時間不足で保護回路動作しないなら長くすれば良い、回路系GND最高電圧を保持するピークホールド回路追加すればどうかと考えました、とは言えここまで連戦連敗で自信はありません。

赤点線部がピークホールド回路、回路系GNDピーク電圧をショットキーダイオードを通してコンデンサに充電し、回路系GND電圧が下がってもピーク電圧を保持し、コンパレータをオンし続ける動作をします。 並列100kΩは保護回路動作に十分長く、リセット操作感的に短い時間で充電を抜く放電抵抗で、コンパレータ端子抵抗数MΩで問題なければ不要です。

【映画館裏の空地】
ショートした最初のパルスでは充電電流が大きく回路系GND0.8Vの場合0.5V程度しか充電されませんが、パルス毎に充電電流が減ると共に順電圧が低下し、最終的に約0.7Vまで充電されます。 その動作からチャージポンプと呼ばれてます。 比較電圧が現状0.58Vでは感度が悪いので、ショットキーダイオード順電圧損失に合わせで基準電圧を下げます。

1N4148をショットキーダイオードに替える方法もありますが、正常動作時の誤動作が怖いので33kΩを100kΩに変更し約0.05V下げるに留めます。 ピークホールド回路追加するとジョイント通過時ノイズ等1万分の1秒で保護回路が動作してしまう可能性があるからです。

0.58Vが0.51Vに下がりました、可能なら0.45V程度にしたかったのですがヨシとします。

赤字部分が変更及び追加回路、コンデンサ並列抵抗は必要性確認後コンデンサに裏付け予定でしたが、最終的に不要で追加は4部品で済みました。


5-5.改修回路の評価
蒸機常点灯上限電圧0.58Vに調整して試験開始、この電圧での確実動作が目標だからです。 結果は百発百中で保護回路が動作しました。

前回と同じ試験をしました。 電圧出力状態/負荷3条件ショート試験では、負荷に係らず0.45Vで5/5動作、グレーゾーンはありません。 ショートさせて常点灯電圧上昇させる試験も0.45Vで動作し、ようやく狙った性能クリアできました。 しかし結果良ければ全てヨシと言う訳には行きません、動作マージンや動作しない0.45V未満の確認が必要です。

まずは蒸機常点灯上限電圧0.58Vの出力(2V/目盛)と回路系GND(0.2V/目盛)の確認からで、負荷10.8Ωで回路系GND0.34Vは変化なしです。

この時のピークホールド電圧を計測しました。 0.25Vでしたのでショットキーダイオード挿入損失が0.09Vでピークホールドしてると解ります。 そしてショート時はこの電圧が0.51Vを超え保護回路が動作してます。

次に保護回路非動作の常点灯0.40Vに調整して計測、出力パルス幅が少し狭くなります。 回路系GND電圧は0.34Vで変化なし、ただしピークの平坦部分がなくなり尖ってます。

0.40V時のピークホールド電圧は、回路系GND波形の違いを反映し0.21Vで、0.58V時より0.04V下がってます。 この小さな差が保護回路動作/非動作を分ける鍵になってます。

0.40VでショートするとPWM出力が約2Vに下がり、ピークホールド電圧は0.21Vから0.47Vに上昇します。 コンパレータ基準電圧0.51Vより低いので保護回路は動作してません。

【田舎町の夕方ラッシュ】・・・車が増えた昭和40年代後半の風景です。
以上でピークホールドコンパレータ方式パッチ回路は設計意図通りに動作すると確認できました。 基準電圧を0.40-0.45Vに下げれば更に低い0.3V前後での動作も可能ですが、実施しません。 常点灯調整時に必ず動作する現状の保護回路感度で十分と考えるからです。


久し振りに気分爽快!、ずっと心の重りになってた暗雲が晴れました。 これで遅ればせながら『gaou』さんとの約束を果たし『露太本線スペシャル電源』をお届けできます。 自社用は各CHに1.3Aポリスイッチでオシマイ、世界にたった一つの電源になりそうです。


ではまた。

湖南電源 成功せずも進展あり

最後の悪足掻き実践編です、アドオンパイパス回路なので効果がなければ外すだけ、でもそうなったらもう打つ手がなくお手上げです。

【小川を渡る急行】
湖南電源は今年度内に送品仕事完了にしたいので、電源設計の専門的内容に係る筆者備忘録兼『gaou』さんへの進捗報告に付き合わせる結果になりますが、暫時ご容赦ください。


5-2.パッチ回路製作と取付
前回設計した部品配置図に従いパッチ回路を製作します、わずか7部品なので気楽です。

ブレッドボードタイプユニバーサル基板から必要サイズを切り出し、所定位置に取付穴を空けました、ドリルで揉んで少し長孔にしてます。

➊トランジスタ端子接続ジャンパー線5本を挿します。 実はこの時点でジャンパー線挿す穴間違えてます、後で気付きそのまま進めました。
➋トランジスタ足加工し寝かせて基板穴に挿し3端子半田付け完了。
➌コンパレータIC挿入・半田付け、ジャンパー線は挿しただけです。
➍抵抗3本、ダイオード1本挿しながら順次半田付けで完成しました。

【TOMIXフィーダー延長コード】
配線には昨年購入してコネクタハウジング破壊し、配線抵抗値計測で御用済みになったコレを使います。 在庫してても使う当てありませんので。

部品実装も配線もLED照明付き拡大鏡頼りの作業です、パッチ回路と安全性保証回路を配線5本で接続しました。 中央上トリガーコンデンサを干渉しない位置に移動してます。

テスターで念入りに配線と半田ブリッジがない事を確認してから電源オンし無事立ち上がりました。 最初は特性図から0.55Vを狙った基準電圧をチェック、0.58VでOKです。 期待大のショート試験開始前にコンパレータ動作と各部波形をオシロで確認すると、何と!。

トランジスタが表裏逆向き、ベースとエミッタが反対になってます。 確認して実装したハズなのに基板180度回転させて取り付けたとしか思えません、初歩も初歩のミスです。

こんな恥かしい話を書きたくありませんでしたが、基板製作過程写真にバッチリ写ってますし、撮り直しはできません。 エミッタ-ベースに逆電圧12V掛けた2個を外して正しい向きに新品交換しました。 露太本線はボケたかと嗤わば笑えと開き直るしかありません。


5-3.ショート試験と解析
パッチ回路追加を決めた時、これで蒸機常点灯上限電圧でも動作すると信じてました、ところがショートしても保護回路が動作しません。 一体何が起きてるか解析しました。

抵抗負荷で0.58V調整時のPWM出力と回路系GND波形は、パッチ回路追加前と同じです。 つまり正常時はパッチ回路追加影響はありません。

出力ショートするとピーク0.8Vだった回路系GNDが0.85Vになってますが、波形的にはパッチ回路追加前と大きな差はありません。

パッチ回路は回路系GNDが基準電圧0.58Vを超えるとトランジスタをオンする電圧コンパレータで、正常時出力なし、ショート時はピーク1.25Vのパルスが出ており動作してます。

時間軸を10倍に拡大、1μsec/目盛です。 コンパレータ出力=トランジスタベースなので、0.8Vの1.0μsecは間違いなくトランジスタオンしてます、でもその後何で跳ね上がる?。

このトランジスタ動作点はベース電流2mA、オン時ベースエミッタ電圧は特性図から0.68Vで、実測値は0.8Vですが確実にオンしてます。 オン時コレクタエエミッタ電圧は0.1Vなので、ラッチ回路トランジスタベースが0.1Vでオフ、すなわち保護回路動作するハズです。

そのラッチ回路トランジスタベースを見ます。 正常時はラッチ回路オンで電源供給なので、PWMノイズがありますが0.76Vでオンしてます。

ショートするとトランジスタベース波形が暴れます。 特性図の様に約0.1Vまで下がってるのでオフしてますが、その後再びオンてます。

時間軸を10倍にすると、パッチ回路電圧コンパレータで約3μsecオフし再びオンする様子を観察できました。 この波形見て半年以上悩み続けた問題の原因が何か理解できました。

オリジナル回路/パッチ回路共に、安全性保証ラッチ回路をオフするパルスが入力してTR92がオフしても、TR91がオフするまでの時間遅れToffがあり、パルス幅が狭いとラッチ回路が再びオンして保護回路が動作しないのです。 蒸機常点灯が問題になった出力回路Toffは2μsecでしたが、損失低減優先のラッチ回路はかなり長くなってると思われます。

KATOハイパーD/スタンダードSXが出力段にパワーMOS FET採用した理由が解りましたが手遅れです。 でもTR91 Toffが原因ならまだ打つ手があります、もう少し足掻きます。


ではまた。

湖南電源 最後の悪足掻き?

湖南電源評価が終了し恐れてた最悪事態は回避できました。 保護回路動作は100%満足できませんが『gaou』さんの了解を得て足掛け4年の本案件ケリを付けたいのが本音です。

【小川を渡る急行】
しかしどうにも後味が悪いのです。 もう一度設計やり直す気力も時間もありませんが、何とかする知恵はもう出ないのかと考えました。


4.追加計測と動作解析
一つ気になる発見が前回実験でありました、ポリスイッチ正常時抵抗が特性概念図から予想した0.1Ωより高く0.3Ωの実測値を得た事です。

ショートで保護回路非動作だった常点灯1.4Vで出力と回路系GNDを計測しました。 回路系GNDは電圧縦軸を10倍0.2V/目盛に拡大してます。 前回計測値0.3Vは正確には0.34Vでした。 瞬時電流1Aで0.34Vは保護回路動作の1.3Aでは0.44Vです、従ってポリスイッチの抵抗成分で保護回路が動作する事はなく、トリップによる抵抗値増大で動作してます。

出力を2.5mフィーダー線先の10.8Ω抵抗でショートした時の波形です。 出力は11.4Vから1.3Vに落ち、回路系GNDは0.34Vから0.8~0.88Vに上昇しました。 ポリスイッチが0.34Ω抵抗なら2.5A前後の瞬時電流が流れてる計算になりますが、トリップしない領域で抵抗値が増えてる可能性もあり、ショート時瞬時電流は解りません。

それより何故0.8Vでトランジスタオンして保護回路が動作しないのか不思議です。 トランジスタオンする0.7V以上パルス幅は5-6μsec、使用した2SC1815は1μsec以下の応答速度なので動作するハズです。 いずれにしても設計通りに回路が動作してないと解りました。

【夜の機関庫】・・・挿絵画像です
常識を覆された気分ですが、考えられる可能性は二つです。
➊何らかの理由で回路系GND電圧0.8Vでトランジスタオンできない。
➋トランジスタオン時間が短くラッチ回路オフ・保護回路動作しない。
筆者感触では➊の可能性が高そうです、➋なら0.7Vでクリップされるのが自然だかです。


では1.9V出力で保護回路動作した時には何が起きてるのか、これも可能性は二つです。
➊パルス幅が広がって何らかの理由が消失しトランジスタオンした。
➋ポリスイッチ発熱で抵抗値が数Ωに上昇して保護回路が動作した。
これはどちらとも言えません、情報収集でもう1条件計測しました。

蒸機常点灯上限0.6Vで出力と回路系GNDを計測しました。 当然パルス幅は狭くなりますが、瞬時電流変わらないので回路系GNDは0.34Vです。

出力ショート時の波形です。 出力は11.4Vから2.0Vに落ち、回路系GNDは0.34Vから0.8Vに上昇しました。 常点灯1.4Vとパルス幅が違うだけで回路系GNDが0.8Vに上昇してる事から、2.5A前後の瞬時電流が流れてると考えられます。 平均電流は0.6Vショート時で約0.1A、1.4Vショート時で約0.4Aですが、出力トランジスタ信頼性上は改善したい処です。


5.パッチ回路
5-1.現状整理と対症療法
0.8Vに上昇してる回路系GND波形を見てアイディアが浮かびました。

一連の計測結果から回路系GND電圧は正常動作時に最大約0.4Vです。 一方出力ショート時はトランジスタオンする0.7V超えても保護回路が動作してません。 設計ミスがあるのか何か見落としがあるのか不明ですが事実は事実、ここは原因解明より問題解決優先です。

【出光GS】・・・専門的内容なので箸休め画像です(汗)
この現状ならばパッチ回路追加で問題を解決できる可能性が高くなります。 耳慣れない『パッチ回路』について説明します。

最後の問題解決の為に対症療法的に追加する回路を差す電子回路設計技術者が使う用語で、傷口に絆創膏を貼るイメージからパッチ回路と呼ばれてます。 湖南電源なら苦労したヒゲ対策や他の基本特性に影響与えない、この問題に絞ったアドオンバイパス回路です。

アドオンなので現状の回路変更ありません、正常時0.4V以下、ショート時0.8Vなので、ダイオードで0.5-0.6Vの基準電圧を作り回路系GNDと電圧比較するコンパレータ回路です。 Hyper-G PWM用高速コンパレータを使用すれば、1μsec未満で応答します。

基準電圧ダイオード1N4148直列抵抗は、最初10kΩ/1mA(青丸)を考えましたが、正常時誤動作しない範囲で低い方が保護回路動作し易いので33kΩ/0.3mA(赤丸)にしました。

安全性保証回路固定ナットを外し、スペーサーを介して2階建ての子基板追加方式です。

安全性保証回路とは電源/GND/両CH回路系GND/ラッチ回路ベースの5本で結線します。 このパッチ回路を例えると、回路系GND電圧上昇でTR93/TR94をオンさせる設計が力不足なので、アドオンターボチャージャーを取り付けてパワーアップするのに似てます。

トランジスタを寝かせて薄くます、どちら向きに取り付けるかはケース取付部品や配線干渉の様子で後で決めます。 半田付け苦労しない様に、余裕の部品配置、青ラインはパターン面ジャンパー線接続です。 はてさて最後の悪足掻きは果たしてどうなる事やらです。


ではまた。