Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

広葉樹もどきの製作前編

今回は田園風景を一休みし、拙ブログ初の工作記です。 非都市型レイアウト製作者の方は、樹木が足りないと感じていないでしょうか? 樹木を「スポンジ塊を除く幹を持つ植物状物体」と定義すると、露太本線には約350本ありますがまだ足りません。 大雑把な分類は、樹木完成品15%、製作キット15%、残りは自作です。 その大部分が針葉樹、色やサイズを変えても樹形はどうにもなりません。 大型広葉樹を植えたい場所があり、5本製作しましたので紹介します。 なぜ「もどき」なのかは追々明らかになります。

まず用意するのは、ヤキトリ串と手芸用針金です。 自宅にあった造花等に使う0.6mmほどの柔らかい針金で、手芸店または百円ショップで手に入ると思います。

ヤキトリ串に持ち手4cmほどを残し、作業性向上の為に茶色油性マーカーで着色します。

ヤキトリ串の先端約20mmから8mm間隔で、ヤスリのフチで一周溝を掘ります。 寸法精度は不要で、下地が全周見えればOKです。 溝数で樹高が決まりますので、今回は11溝(樹高約130mm)1本、9溝(同115mm)2本、7溝(同100mm)2本にしました。

手持ち手芸用針金は長さ20-30cmなので、無駄が出ない様に先に切っておきます。 今回の場合、45-75mmまで5mm毎に各10本、80・85mmが6本、90・95mmが2本です。

先端から遠い溝から2本組みで順番にねじっていきます。 9溝の串に85-65mmペアを装着した状態です。 ポイントが2点あります、1点目は左右対象ではなく約120度の角度、上から見て最初が3時ー7時方向なら次は5時ー9時、更に次は3時ー7時と繰り返す事です。 2点目は溝に喰い付くよう余裕を詰めてからねじり始め、かつ左右同回転方向にねじる事です。 喰い付きが甘い場合はラジペンで増し締めしてから、瞬間接着剤で固着します。

一番大きな11溝の串に針金を装着完了した状態です。

上から見るとこんな形です、枝は3時、5時、7時、9時方向しかありません。 葉を茂らせても9時半から2時半の150度には枝も葉もない樹木の骨格です。 手抜きやコストダウンが目的ではなく、レイアウトで最も貴重なスペース効率向上のアイディアです。

旅館裏としもた屋裏、背景画の前に広葉樹が2本立っています、それぞれ樹高120mmの大木です。 奥はKATO樹木キット広葉樹大で、手前は自作広葉樹もどきです。 背景に対して30度ほどの浅い角度から見ても、どちらも同様に見えます。(筆者の感想です)

壁際から見ると違いが解ります。 しもた屋軒先と背景距離は90mmですが、KATO広葉樹は枝の一部が軒上に出ます、大型広葉樹は、ストラクチャ1軒分を超える直径約10cmのスペースを占有します。 一方旅館軒先と背景距離は60mmですが、軒上に出ずに配置可能です。 広葉樹もどきを使うと「狭いスペースには針葉樹しか植えられない」のジレンマを解消することができ、壁際の風景製作の幅が広がります。

次の工程は幹と枝のお化粧です。 峡谷製作でプラスタークロス網目処理に苦労し、下地用に購入したまま使う機会がなかった、ターナー製グレインペイント黄茶を用います。

塗るのではなく、太い筆で柔らかいパテを置いてくる感覚で、幹と幹に近い枝及び根元の部分をコーティングします、乾燥後はザラザラした質感になります。 幹先端と枝先は葉を付ける作業の邪魔になるので、コーティングしません。 写真のパレットと合板製樹木スタンドは、樹木製作専用ツールで、完成後植樹までのストックにも使用しています。

前編最後の工程は幹と枝の塗装です。 色はマホガニー、グレインペイントでコーティングした部分を塗ります、奥2本が塗装済み、3本目の作業中です。


今回が初工作記でした。 製作課程を紹介するには、製作の何倍も手間がかかる事を改めて知りました。 工作記を連載されている皆様のご苦労が少しは理解できました。


ではまた。

田園風景-3 踏切から線路沿いに

今回は踏切から線路沿いに進みます。

このエリアの建設時の様子です。 中央手前が中山平駅の駅端で45cm基台上に敷設しています。 その先から40cm基台エリアに入り、線路は50mm木製ブロック上をプレートガーダー橋へ至り、その先も50mm嵩上げされた路盤上に水平に敷設されています。

線路より50mm低い基台が、様々な風景製作の鍵になっています。 写真奥のレイアウト南端は、反対側の峡谷同様天井が低く、背景設置用合板の高さは30cmしかありません。

踏切下水田から南方向の眺望です、線路沿いに3枚の水田が続いています。 左から右へ手前は緩く、奥へ行くほど急傾斜になる自然地形です。 そこに畦を築いて水田を作り、路盤を整備して鉄道が敷設され、この景観になったという想定です。 エンドレスを折り畳み、複線状に配置した区間なので、列車すれ違いの風景にしてみました。

踏切から分岐した農道は水田の間を下り、写真下レイアウト端面で左折し水田沿いに進む想定です。 3枚の水田は、乾燥後のわらぼっちをその場で細断した、すき込まれる前の姿を再現しています。 撮影用にフィールドグラスと0.8真鍮線で自作した可動式ハザカケを置きました、雰囲気重視のオーバーサイズです。 用水路は農家1から鎮守様、踏切下を通って中央の水田、そして左右へと流れており、すべての水田の高さが違います。

2番目の水田も同形状で高さが5mm低いだけです。 コーナー部は、用水路を通す為、路盤の一部が石垣になっています。 アクセサリーにキット付属の距離標乙号と、爪楊枝と板紙で製作した野立看板を配置しました。 地酒・学生服・穀倉地帯お米の看板は見慣れた車窓風景でした、設置後手入れされていない様子でかなり汚れています。

3番目の水田は2番目の7mm低い位置にあり、左側を削り、右側の低地から土を掻き上げて畦を作った、「一粒でも多くの米を」時代の象徴で5角形になっています。 肥料用のモミ殻焼きがあります。 山側本線は次第に傾斜が急になり、石垣の下を走ります。

水田右側のアップです。 わらを積み上げたコレも「わらぼっち」と呼ばれています。 枯草色フィールドグラスと0.8mm真鍮線の工作です。 わら小屋はキット(どれだが解りません)付属品に、自作ハザ棒置場の差し掛けを追加して配置してあります。 ここが踏切からの農道(レイアウト外なので製作していない)の終点です。

わら小屋の先は下り傾斜の灌木帯が河原まで続きます。 山側本線は落石止めを潜ってトンネルに入り、谷側本線は落石止め手前から右カーブし、次第に高くなる石垣の上をコンクリート擁壁に守られて進みます。 擁壁は自身の角度と線路のカーブで底面が曲線になるので、型紙を取り板紙から製作しました。 0.8t板紙、商品名「布目板紙」は強度と弾力があって造形自由度が高く、塗装も容易なので非常に重宝し多用しています。

落石止め覆道としては洞門が有名ですが、柱幅が太く線路間に設置できません。 モデル化のベースとなる簡素なタイプを探したところ、この写真(旧富内線、鵡川ー穂別間)を見つけました。 山側コンクリート壁、鉄骨構造のスリムな落石止め覆道です。

トンネルポータル高整合の為、上部はコンクリートの背が高い落石受けに、骨組を太くしてモデルより頑丈なタイプに変えてあります H鋼は2mm工作用角材を板紙でサンドイッチ、土台と上部コンクリート壁は3x10mm工作用角材、山側コンクリート壁は3mm合板に板紙貼り合わせ、クロスバーは2mmプラ角棒、金網は網戸ネットを使っています。 プラ塗装表現は自信がなく、塗り重ねが容易な木と紙で作れるものは何でもの方針です。

夕陽を浴び鈍く光る落石止めにしたいと思い、薄く溶いた「黒鉄」「赤鉄」「ダークコッパー」(銅葺き屋根の色)「フラットアース」「フラットブラック」「ダークグリーン」を10回ほど様子を見ながら塗り重ね、イメージに近付けました。

「田園風景-1」から3回に渡り紹介したエリアの全景です。 広がる水田の中に伸びる鉄路と、のんびりした農村風景は、レイアウト製作でぜひ実現したかった風景です。

稲穂が夕陽に輝きます。


謝辞

鉄道模型から半世紀離れ、浦島太郎状態での初レイアウト製作開始に際し、道しるべとなったブログがあります。 「Nゲージレイアウト 郷愁の情景」kyoshusenさんです。 設定年代もシナリー重視のコンセプトも近く、製作過程の「素材」「技法」だけでなく、「背景」「根拠」までを詳細に公開されています。 また、筆者が知らなかった鉄道関連知識などの教示を受け、非常に参考になりました。 この場をお借りして改めて感謝申し上げます、kyoshusenさん、大変ありがとうございました。   【lofthonsen】


ではまた。

田園風景-2 鎮守様からお寺へ

田園風景の続編です。 鎮守様前を右折して道なりに南方向へ進みます。

鎮守様の並びは、芽が出たばかりの冬野菜(例:野沢菜)畑です。 スタイロフォームに5mm間隔で溝を掘り、フラットアースで塗装後、リアルサンドを撒いて畝に苗を描いています。 畑は水平とは限りません、この畑は左へ向けて傾斜しています、「水がない」「水を保てない」「傾斜地」など、水田にできないから畑にしたと言えるほど稲作中心でした。 右側畑のビニールトンネルは、情景小物ビニールハウス2セットを使用し、テカリ消しのウオッシング後、薄めたフラットアースを数度ムラ塗りしました。 それらしくなりましたが、作物がほとんど見えません、実際もそんな感じなので良しとしています。

前回紹介した水田の奥も水田で5mm高い位置にあります。 元来の緩傾斜地に、畦を築いて水田開発した地形です。 ここには稲を天日干しするハザカケがあります、ジオコレ農家Fの付属品ですか、プラ質感がNGなのでフィールドグラスを張り付けてあります。

ハザカケ水田の前に農家1があります。 ジオコレ農家Eの小屋と焼却炉を農家Fの倉に置き替えて豪農風にしています。 敷地内には柿の木があり、農作業が一段落すると軒先の干し柿作りが見られます。 農家1の先はリンゴ畑になっており、急坂がお寺の山門まで続きます。 また、屋敷裏には防風林として針葉樹が4本植えられています。

農家1防風林の裏をスイッチバック信号所へ向かう本線が通っていおり、上には発着線が見えています、33/1000勾配で高低差が大きくなっています。 直線が続き単調になり易い区間ですが、防風林や鎮守の森が線路と列車を隠し、風景に変化を与えてくれます。

農家1のサイド面です、ジオコレベースの植込みは実感が乏しいので、フォーリッジを貼り付けました。 この側面は何もなく淋しかったので、ジャンク部品で材木置場を自作しています、材木素材は細い竹ヒゴです。 遠景にお寺の建物が見えています。

踏切からの道路は、谷奥のお寺で終点です。 お寺本堂は、植林された針葉樹の山ふところの敷地に、鐘楼とシンボルツリーの杉の大木と一緒に建っています。 ジオコレ山門は立派過ぎるので、本堂敷地から階段を下った低い位置に配置してバランスを取りました。

山のお寺は夕景が一番似合います。 お寺を囲む山は、木製柱と合板切り出し稜線・尾根の剛構造で、古新聞と布粘着テープで山容を整えプラスタークロスで製作しています。 フォーリッジクラスター塊と幹付き樹木を混ぜて植樹し、単調になるのを防いでいます。

本堂背後の崖は板紙をベースにして、素材にバラストとコーヒー滓を使っています。

本堂はローソクをイメージして暗くしましたが少々やり過ぎ、夜景のバランスを崩してしまいました。 山門前街灯に加え、山門内にも夜間来訪者に備えた灯りがあります。

ストラクチャー配置説明用航空写真です。 農家1の敷地は道路から少し下がり、道路・水田と角度を持っています、道路が細い道だった昔からという想定です。 農家1からの坂道は直登せず、一旦右へ行ってから左へ蛇行して山門に至ります。 道路は踏切から道祖神まで10mm、農家1まで15mm、山門まで30mm登り、本堂境内は階段で更に30mm高い場所です。 この様に、傾斜の緩急と微妙な角度を意識して風景製作をしています。

お寺山門アップの夕景です。 こうでもしない限り、苦労して貼った山門の千社札を見ることができません、完全なアイディア倒れです。

「お寺へ続く道」、お気に入りの撮影アングルです。


ではまた。