Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

電源製作⑧出力回路容量2A化

電源製作8回目は1.2A基本設計回路の2A高容量化です。 変更点はACアダプタ、過電流保護素子、出力回路の3点です。 16番用16V仕様に絞る予定でしたが、これまでの設計で12V/16V設計共通化が容易と解ったので、12V/2Aについても解説します。
[追記2022.03.29]Hyper-G電源は12V/1.2A容量/1CH特化に軌道修正し2A容量はサポートしてません。 本記事はブログINDEX『Hyper-G高性能電源』にも掲載してない技術検討資料ですので、その点をご理解の上お読みください。


8.容量2A化
8-1.予備調査
半世紀前の16番パワーパックは普及機が16V/1.5A、高級機が16V/2A~2.5Aでした。

【『半世紀前のTMS1963年9月号前編』より転載】
当時の高級機トランジスタコントローラは16V/12V/8V切替式2.5Aでした。 KATOの16番対応電源はスタンダードSXが16V/1.2Aでこれが電流容量下限、ところがハイパーDXは15V/2Aで電圧が違います。他社はどうなのでしょう?。

例えばコレは1CH、15V/2Aでした、16番は15V/16Vどちらでも良いのでしょうか。

天賞堂は1CH、15V/3Aです、半世紀経っても16番用モーター消費電流はあまり変わってない様です。 という事は16V/2Aを必要とされる方が多いと思われます。 電源製作①最初の一歩で2CH、1.2A用として推奨した電源を使い1CH、2A設計を行います。


8-2.KATOハイパーDの分解調査
最大電流3Aの2SA1359で2A仕様の設計するには放熱板が必要です。 市販品は放熱板を使ってるのか、あるいはPcが高い素子を使ってるのか?、その疑問を解消する為、所有するKATOハイパーDを始めて分解調査しました。

ゴム足下でケースねじ止めに決まってると4ヶ所外したら2ヶ所はメクラ、と思ったら裏の2ヶ所がケース止めねじでした(汗)

ありましたね放熱板、計測したら1.2t、30mmx100mmのアルミ平板でした。 出力素子はトランジスタでなくスイッチング電源用パワーMOS FET2SK2232でした。

過電流保護に筆者がポイント切替電源で推奨し、今回の電源にも採用予定のポリスイッチを使ってます、1.35Aタイプ、2倍の2.7Aでトリップし回路を遮断します。

そしてハイパーDで評判が悪くDXで廃止したショートリセットボタン、そのラッチ用に2SK2232を奢ってます。 左側に0.18オームの金属皮膜抵抗が見えてます、ダミー負荷を付けて出力電圧上げると両端電圧上がります、ポリスイッチ入ってるのに何故?

【『ポイント切替電気講座⑦』より転載】
答えは多分これ、2Aの電流制限回路作動検出用です、ショート時回路遮断と電流制限の二重安全、さすがにKATOさん、TOMIXオモチャ設計とは月とスッポンです。

ついでにPWM回路使用部品をチェックしました、左のタイマーIC555で発振回路を構成し、右のコンパレータIC2903でPWM波を発生させてます。 2903は本講座使用2403と同特性で出力電流が少ない兄弟機種、なのに出力が鈍ってるのは常点灯前提設計でないからと推定します。 真面目で信頼できるKATOには好意的判断してしまいます(笑)


8-3.容量2A出力回路設計
2A仕様には放熱板使用前提で、2SA1359動作点をどこにするか決めます。

出力2A(赤点線)特性図によると1.2A仕様の31mA/16Vではトランジスタ損失が大きく、出力電圧低下だけでなく熱破壊リスクが高くなります、23mA/12Vでは10Wを超えて多分燃えます。 損失1V程度に抑えるには60mA以上のベース電流が必要と解りました。

16V/2A仕様はTR02ベース抵抗R13 470ΩにR15 470Ωを並列追加してベース電流を2倍の62mAにします。 それに伴いR10 33kΩから供給されるTR01ベース電流が不足するのでR11 33kΩを並列追加して補います。(R10を18kΩ1本に変更してもOKです)

12V/2A仕様の場合はTR02ベース抵抗R13/ R15及びベース・エミッタ間抵抗3本を330Ωに変更すると、TR02ベース電流が68mAとなり16V/2Aとほぼ同じ動作点になります。 2A仕様は12V/16V兼用設計できませんのでご承知置きください。

1.2A仕様は単体ディレーティング0.9Wで設計してきました、hFEにより2A時のトランジスタ損失は0.8V~1.1Vにバラつき、最悪条件は1..1Vx2A=2.2Wと2.5倍近くなります。 この特性の場合小型放熱板で3W、中型で5W、大型で7W程度にPcが高くなります。

放熱板は大は小を兼ねるので秋月調達可能部品からこれを推奨します。 取付の際は部品取説及び『ヒートシンク』で検索し注意事項を参照してください。 また放熱効果を高める為、電源ケースにスリットを入れる等、空気流通に配慮した設計をお願いします。


8-4.常点灯性能への影響確認
2A仕様は1.2A仕様に比べ、ベース電流が増え立ち下がり応答遅れが大きくなります。 制御可能デューティー比下限が高くなる事が予想されるので影響を確認します。

ベース電流が2倍になった16V/2A仕様の安定出力下限電圧は、1.04V、ヂューティー6.5%でした。 1.2A仕様0.95V/5.9%よりわずかに悪くなってます。

ベース電流が3倍になった12V/2A仕様の安定出力下限電圧は、0.65V、ヂューティー5.4%でした。 ベース電流大幅増により1.2A仕様0.55V/4.6%より悪くなりました。


以上4回に渡り高性能のコア出力回路設計を解説しましたが、難し過ぎたと思います。 それはこのシリーズアクセス数低下に如実に表れてます。 しかし設計プロセスと妥当性を記録に残すにはこれ以上簡単にするのは無理でした。 内容理解は部分的でも『どうやら市販品より高性能の電源を自作できそうだ』と感じていただければ十分です。


製品メーカー設計技術者は《目標仕様達成》《安全性/信頼性確保》《目標コスト達成》《開発納期》の厳しい制約の中で、仕様書から理論設計し実験で確認を繰り返し高性能・安全・お手頃価格の製品を市場へ届けてます。 筆者の場合、納期なし、コストは出来高払い、信頼性保証義務なし(手抜きはしてません、念の為)なので非常に気楽です。


ではまた。

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