Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

TMS夏季大学 半世紀前の鉄道模型界事情

先日予告した1963年7月号の『TMS夏季大学』です。 執筆者はレイアウトや自作車両を誌上発表してる常連モデラーです、中々面白い内容なので必修科目をおさらいします。

開校の辞より。
『鉄道模型は誠に高邁で深遠なるお遊びであります。 今や老いも若きも、あるいは妻子を忘れ、あるいは学業を忘れてこの趣味に血道をあげております。 誠に慶賀すべき現状ではありませんか。』 戦後18年、世の中が豊かになり鉄道模型がお金持ちの道楽から庶民の物になった時代です、以降半世紀この状態が続いており誠にご同慶の至りです。


1.数学

16番では実寸を1.25倍(=1/4を足す)してゼロを2つ取ると1/80でした。 電卓登場は10年後、そろばんで縮尺換算してたんですね。(筆者は使えません) 1/150のNは計算で求めますが、ストラクチャの畳一枚定尺が6x12mmなので感覚が掴み易いです。


ここでは欲しい車両や必要部品価格を足し算し、資金捻出に必要な残業時間を割り算し、そして趣味を楽しむのに一番重要なのは時間という結論になってます。


2.語学

TMSを鉄道模型マニアの教科書、聖書と持ち上げ投稿者の心得を一くさり。 日く、『名前を堂々と誌上に載せてるオニイチャンよ、君の記事を読者が何度も首を捻って読んでる事を忘れちゃいけないよ、完成作品を前に嬉しさの余り、辛かった工作ではここぞとばかり強調し大向こうの同情を得たい気持ちは良く解る、ダガネ、それが当大学で語学を取り上げた理由・・・』と、斜め読みして解る文章、読んで楽しい内容を提唱してます。


現在は苦労の強調は格好悪いと価値感が変化、むしろサラッとやってのけた風に書くのが流行りの様です。 「解り易くて楽しい内容」はブログにも当て嵌る事、筆者含め管理人たる者、以って肝に銘ずべし。 エッ、電気の話は難しい?スミマセン(笑)

上記写真のオリンピックとは1年後1964年の東京オリンピックです。 その後は漫談調、植木等さんの『無責任男』など当時の流行歌を知らないと理解が難しいフレーズです。 『「いい人いるけどお見合いしない」てな事言われてその気になって、結婚したのが大間違い模型も電気も丸でダメ、オイラはリモコンされてる哀れなテンダードライブ、解っちゃいるけどやめられねぇ、夜中にモケイいじってたら、女房に引っ張り込まれてハイソレマデヨ、ふざけやがってふざけやがってこのヤロー、泣けてくる~。 カワイイベービーハイハイと誕生、1M2Tでエンジン加熱』てな具合で続きます。


3.物理学

物理学にフレミング左手の法則が出てきます、電気の重要性は今も昔も同じです、誌上にトランジスタを使った高周波機器お目見えなんて記述もありました。『鉄道模型は直流と低周波交流で事足りるので簡単です、要するに電気を通したい所に導体、通したくない所にギャップを切ったり絶縁体を使い、行きと帰りの道筋を作ればOK』正に至言です。

講義はカーブ遠心力を打ち消すカントに向かいます。 勢い余って外側脱線か、長大編成が内側にドタリンコか、『カーブが小さいのにロコとオハフが180度反対方向なんて事はしない、犬が西向きゃ尾は東にして下さい』、Nでも時々見る風景です。


そして物理学最後の一言、『ギヤーがキイキイいったり、台車がガタガタするのは、作者に物理学がハッパを掛けている音と知って、もう一ふんばりして下さい』


4.心理学

心理学は運転会で発表された作品についての会話から始まります。 称賛・自慢までならカワイイのですが、ライバル意識・嫉妬心が絡んでくるとややこしくなります。 『趣味と芸術性を目指しながら、小社会を形成している鉄道模型の世界は強い個性を持つ集団となる可能性があり、ややもすると人類社会葛藤の縮図になりかねません』とあります。


現在はブログという個対公の便利ツールが個対個の軋轢を和らげてくれます、靴の上から足を掻くもどかしさは別ですが。 鉄道模型界が強い個性派集団である事は今も昔も変わりなく、ブログは適度な距離感を保つお付き合いツールとして機能してると思います。

『マニアの中には趣味の公表を恥じて、読書とかスポーツと調子を合わせている人も見受けられます。しかし公表には決断力を要するのも確かです』コレ、今でもありますね。


鉄道模型の魅力は余人には解りません、低い社会的認知度は半世紀前と同じ、「物好きだね」につい反論したくなります。 執筆者は説明しても無駄、こんにゃく問答がよろしいと薦めてます。 『「そんなに汽車が好きなら国鉄に勤めれば良かったのに」には「ハハハなるほど、でも釣りを楽しむ人が皆漁師になる訳じゃないでしょ」』でな具合です。


5.医学
工作中の切り傷や火傷処置法ではなく、心の病を論じています。 『鉄道模型はマニアに強烈な刺激を与えます、熱に浮かされた患者は文字通り寝食を忘れて模型に没頭します、運転会など期限付きの場合は徹夜も辞せぬ努力が続けられます』今も昔も同じですね。


熱し易く醒め易い日本人特性では鉄道模型楽しみの奥義を極める事はできないと諭し、『何十両も製作後に初期作品が嫌になってしまう、そんな事がない方は幸せです』 筆者もレイアウト初期製作部にやり直したい場所が山ほどあり満足は一瞬です。 レイアウトに完成なしとは、鉄道模型マニアの自作品に対する心情を表す言葉だと思います。

『最近各種キットや完成品が次々と発売され、欲しい車両を比較的容易に所有できる様になりました、この調子でレイアウト関連用品が発売されたなら、鉄道模型と医学の講義はナンセンスになるでしょう』 私達は執筆者が夢見た環境で鉄道模型を楽しんでます。


そして『慶賀すべきこの現象は私達の大先輩が過去20年間、モーターや動輪を自作した労苦の賜物である事を思い合わす時、私達も将来の繁栄に向かって漸進的努力に傾注せねばなりますまい』 全て自作の時代からこの時代を経て現在があります、メーカー努力もありますが、先輩モデラーの地道な努力が実を結んでいる事が良く解ります。


お断り:TMS本文記事を大意を変えずに短縮編集しています。


ではまた。

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