Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

黎明期のNをTMSはどう見ていたか

70年を超えるTMSの歴史で新製品紹介欄に始めてNゲージ製品が登場したのがこの号です。 紹介されたのは勿論関水金属(KATO)C50とオハ31系で、この記事を読むと当時のTMSがN最初の製品をどう見てたかだけでなく、Nゲージの将来をどう見てたかも解ります。

【TMS1966年月号表紙】


◆関水金属C50/オハ31系製品紹介
通常の新製品紹介は1ページが標準、話題を集めた新製品でも2ページ、半ページの新製品車輛も珍しくなかった時代に、TMSはN初の製品C50とオハ31系に4ページを割いてます。

蒸機・客車共に当時の16番車両の半額の価格設定でスタートしました、現在のN製品の約1/3の価格です。 他の物価は約7倍上昇してますから、感覚的価格は現在の2倍強、N蒸機が2.5万円前後の換算になり、決して安い鉄道模型ではありませんでした。

関水金属はかなり早い時点でNゲージシステム・車両の発売予告をTMS誌上で行いましたが、発売されてなおTMSは一切論評しませんでした。 鉄道模型マニアは鉄道模型界オピニオンリーダーTMSがどの様に評価するのか固唾を飲んで見守ってる状態でした。

TMS自ら新製品紹介が難しいと認めてます。 仮に『小さ過ぎるしディテールも甘い、16番に取って替るのは無理』と酷評したら、Nの順調な発展はあったかどうか?、それだけの影響力をTMSは持ってました。 この新製品紹介記事でN製品化の裏話が公開されてます。

関水金属は最初TTゲージ(1/120スケール、12mm軌間)のC50試作機を持ってTMS編集部を訪問し、TMSの『やるならNが良い』の助言に従ってNの製品化を決定したそうです。 従ってTMSは火付け役の当事者、折良く届いた常連F氏の評価レポートを使ってます。


この話は広く知られてるかもしれませんが、筆者は始めて知りました。 TMSが裏話を伏せて紹介記事を書けば手前味噌の提灯記事になり、公平な第三者F氏に譲ったのはフェアな態度です、なおF氏とは先日紹介したトロリーラインレイアウトの製作者です。

以下F氏のレポートからです。 冒頭に『鉄道模型界に一紀元を画すとも言うべき関水金属の9mmゲージが10ヶ月の予告期間を経ていよいよ発売された』と書かれてます。 早速机の上で走行させると脱線する、TMS編集部筆の製品説明書(そこまで肩入れしてたんですね)通り、線路を固定したら快調に遡行する様になったとも書かれてます。

走行試験後に早速分解調査、車両製作者でもあるF氏にとって内部構造は興味の的です。 各種金属とプラ部品を上手く使い分け、小型化工夫が随所にあると好評価してます。

16番蒸機は1軸駆動でロッドで他動輪へ動力伝達してますが、ロッドが華奢なNでは無理、上図の様な2軸駆動です。 現在の駆動方式がどうかは分解経験がなく解りません。

分解は更に進みます、マニアは自分が好きな分野の探求心旺盛です。

構造解析なら前写真までで十分ですが、記事として掲載される前提の読者サービスでしょうか、これ以上分解不能状態までバラしてます。

続いてテンダーです。 『テンダー本体は黒色プラ製でリベットも美しい、台車枠はドロップ製でオハ31の台車と同様に16番に劣らぬディテールを持つ』と好評価してます。

Nゲージ初の動力車搭載モーターは、TKK製HOレーシングカー用の一部改造品でした。

絶縁車輪を使わず絶縁チューブ車輪で両輪集電する方法は16番でも存在したが、台車枠を集電板に使用する方法は始めてと書かれてます。

オハ31をF氏は『プラスチックの特長を最大限に発揮した好ましい車体で、16番客車との1/7の体積差を感じさせない堂々とした風格を持っている』と非常に高く評価してます。

F氏はC50牽引力とオハ31牽引抵抗を上図方法で計測し、7-8両牽引可能の結果を得てます。 F氏実験は3両で、多くの車両で実験したTMS編集部では10-11両だったと注記してます。

台車マウントカプラーはそれまでの鉄道模型になかった物で、計算式(不明)で求めた通過可能最小曲線半径は72mmだそうで、小型レイアウトを可能にすると書かれてます。

ただし小型軽量故に初期製品はカプラースプリングが強過ぎ、早急な改善を求めてます。 レールについても書かれてます、発売時はR300とR270で16番標準より広い複線間隔30mmでした、ユニトラックシステム化の際に33mmと悪化させてしまった様です。


以上でF氏評価レポートは終わり、最後の半ページにTMS編集部が追記しまとめてます。

F氏指摘のカプラースプリング問題に加え、TMSは集電性改善を求めてます。 現在のKATOコアレスモーター搭載車の走行性能は当時の16番に比べ信じられない高水準、走行がぎくしゃくするのはレールが汚れてるからで車両側の問題とは考えないレベルです。

関水金属にNを薦めたからと言って、製品の出来が悪ければTMSは後押しできません。 新製品に付き物の初期不良や要改善点はある物の、日本Nゲージの将来を背負う関水金属に対し精一杯のエールを送ってます。

そして新製品紹介記事をこの様に締め括ってます。 『Nならレイアウト作れる、でも・・・』と様子見してた鉄道模型ファンの背中を、近日発売の電動ポイントと共に大きく押した記事になったと思います。


ではまた。

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