一難去ってまた一難 道は険し
前回速度計用電圧計表示問題は原因解析できないまま、分圧比変更で強行突破しました、一難去ってまた一難、三角波バラツキの影響が別の場所に出てました。 新製品開発では良くある事ですが「もう勘弁してよ~」が本音です。 初の設計で自作電源スタンダードを目指す挑戦には通らなくてはならない道、試練と考えるしかありません。
【山は雪模様】・・・山に雪が降り始めると霞がかかった様になります。
★基板取付方向反転
本件にも係りますが、制御盤部品組込み前に基板取付方向を反転しました。
当初予定は裏からパターン面が見える配置でしたが、ゼロ調整やり直しや回路修正が容易な様に反転しました、取付部品配線余裕が減りますが何とか届きます。
反転すればスペーサー3段を2段にして配線余裕を増やそうとしましたが、電圧計校正VRツマミが基板半田付け部に当るので諦めました。
★三角波バラツキ影響その2
1.発生現象
前回の例もあるので、他部品組込み前にシステム動作確認したら、基板単体確認ではOKだった部分で別の不具合を発見しました。
【電源ON時にゼロにならない!】
ノッチOFF、ブレーキMax、常点灯Minで電源ONすると、速度計表示が0.7km/hになりました、ゼロでなくてはなりません。 常点灯ボリュームを回すと下がり、一定以上でゼロ表示で安定します。 電気的変更は再ゼロ調整だけなので原因が推定できました。
2.発生メカニズム
原因確認実験です、開発プロセスオペアンプ交換で三角波レベルが変化してました。
それでVcompゼロ調整を1.7Vから1.1Vに変更しました。
常点灯ボリュームMinなら、オペアンプバッファ出力も同じ1.102Vのハズなのに1.363Vになってます、つまり正しくバッファ機能を果してません。
ノッチOFF、ブレーキMaxなら常点灯Vcompと同じハズの速度計オペアンプバッファ出力は更に少し高い1.392Vでした。 速度計は1.392Vと1.363Vの差0.029V/29mVを分圧表示します、つまり速度計は正常動作、オペアンプバッファに異常があります。
Vcompが三角波Lレベル1.2Vを超えてるので電源出力はゼロでなく0.46Vでした。 そして時間と共に下がっていきます、三角波の起動ドリフトがある様です。
3.原因解説
矩系波/三角波発生回路を含め2回路入りオペアンプを3個使ってます、オペアンプ出力は内部回路構成に起因するロスで0-12Vをフルに使えません。
【『電源製作②三角波発生回路』より転載】
PWM電源の元になる矩系波発振回路で見るとLレベル0.9VがGND側飽和電圧、Hレベル11.6Vで0.4Vが電源側飽和電圧で、出力として使えない電圧領域です。
【『電源製作②三角波発生回路』より転載】
設計初期使用オペアンプが三角波Lレベル1.8Vでバラツキ上限に近かったので、ゼロ調整余裕がありましたが、下限1.2Vでゼロ調整すると余裕不足でバッファとして正しく機能せず、ゼロ調整ボリュームを更に低電圧側に回すと出力は上限電圧11.6Vになります。 オペアンプの約半数、Lレベル1.5V以下でこの問題発生の可能性があると解りました。
4.解決策の検討
4-1.三角波H/Lレベルシフト
高電圧側余裕があり2.5V-10Vにシフトすれば根本的解決です。 でも言うは易し行うは難し、振幅が変化すると全ての設計検証やり直しになるので避けたい方法です。
4-2.入出力フルスイングオペアンプ採用
入出力飽和電圧が非常に小さいオペアンプに変更すれば問題を解決できます。
コストアップ許容しても問題は電源電圧5V、新たに5V電源を作り、ロータリースイッチバッファは5Vでは不足なので12Vで1回路使い、常点灯と速度計バッファにコレ使う。 でも高機能電源基板最初から作り直しになるのでこれも避けたい方法です。
4-3.瓢箪から駒
解決策あれど失う物多し、半ば進退極ってフト思い出した事がありました。
あの時大ヘマで不良在庫になったLM358Nはどうなんだろう?という思い付きです。
過去データ調べたらバッチリ!、LM358Nは周波数特性も電源側飽和電圧もNJM4580DDに劣りますが、GND側飽和電圧わずか0.2Vで今回問題解決に最適な特性でした。 設計変更不要で不良在庫品にオペアンプ交換するだけ、一石二鳥です。
5.効果確認
こんな場合にICソケット使った効果が表われます。
オペアンプ2個(基板4枚なので8個)をNJM4580DDからLM358Nに交換しました。
オペアンプバッファが正しく機能してる事を確認します、ゼロ調整は1.104Vです。
2回バッファを通過した速度計オペアンプバッファ出力も1.104Vです、GND側飽和電圧が小さいLM358Nへの交換でバッファが正常動作する様になりました。
これで速度計表示問題解決とパネル面に裏返すと、ななっ何とゼロでなく-0.7を表示してます。 常点灯ボリューム回して調整するとゼロ表示になります。 オペアンプバッファ問題解決したら速度計電源ON時の次の問題が見えてきました。
♬一つ山越しゃホンダララッタホイホイ、越しても越してもホンダララッタホイホイ♬
30年以上前、設計納期が迫る深夜の実験室でコーヒー飲みながら歌ったざれ歌です。 こうなるとノイズの可能性大、オシロスコープで各部を追って行くしかありません。
真犯人発見!、オペアンプ入力ゼロ調整点は綺麗な直流なのに、バッファ出力にノイズ、ここは低インピーダンスでノイズ耐性高いと油断してました。 1.1Vに0.46Vp-pどうも70kHzで発振してる様子です、PWM基本波27.4kHzはヒゲの形で乗ってます。
ここは大容量でも操作感に影響ないので、オペアンプ1番Vcompと4番GNDジャンパーに100μFアルミ電解コンデンサを基板表面側実装、ノイズはピタッと消滅しました。
[専門的解釈]速度計オペアンプバッファ入出力直流分は1.069Vで同じですが、70kHz交流分は高周波特性が劣るLM358Nでは入出力で数μsecの位相遅れが出ます。 その位相差分を分圧抵抗とノイズ除去C53/0.1μFが積分し-0.7Vを表示してたと解釈してます。
で、めでたく電源ONで速度計ゼロ表示、ようやくゴールに辿り着きました。
でもこんな事も、マイナス表示禁止機能あれば防げますが許容するしかありません。
異常現象は発生してませんが、念の為に速度計オペアンプバッファ出力とGND間にも100μFを追加しました、安心保険料、おまじないの様な物です。
さんざん手こずった速度計表示問題が片付き、先へ進める様になりました。 なお今回の結果に基づき、高機能電源⑦基板製作 その1を追記訂正します。
ではまた。