CLK講座 線路敷設アレコレ❸カント
鉄道線路は曲線部で外側レールが内側レールより高く、つまり枕木を傾斜させて敷設されてます。 曲線外側への遠心力で列車が転倒するのを防ぎ、曲線通過速度を高くする為です。 レイアウトでもカント有無は実感を大きく左右する要素で、是非取り入れたい物です。
【TMS表紙を飾ったレイアウト】
★カント付敷設
カント付レールはKATO/TOMIX共に複線用が市販されてるだけで単線用は存在しません。 従って曲線線路道床の外側にスペーサーを挟んで固定し、傾斜を付ける必要があります。 どの程度持ち上げれば良いかは、実物の鉄道線路敷設の基準に明記されてます。
カント量は両レール高低差で規定され、軌間との関係は上表の通りです。 最大値は越えてはならない限界値で、実際はその6-7割の標準値が採用されてます。 大きなカントは曲線外側からの強風時に内側転倒リスクがあるので、安全率を見てこの様になってます。
Nは標準軌模型なので、実物標準値90-105mmを1/150換算すると、カントは両レール高低差0.6-0.7mmになります。 レイアウトに強風は吹きませんが、実物よりはるかに急曲線半径に曲線90度以上の長編成列車走行は内側転倒リスクが高く、標準値採用が無難です。
両レール0.6-0.7mm高低差を付ける為に、24mm幅道床を何mm持ち上げれば良いか計算すると1.60-1.87mmでした。 直線線路は水平、曲線線路はカント付き、ではその境界部は?、実例で解説します。(参考:道床幅が狭いTOMIXの場合は1.23-1.44mmです)
【曲線部踏切からの風景-1】
自宅から市内に出る道の中央本線踏切は曲線区間にあります。 狭軌在来線のカント標準値60-70mmですが、線路間踏板に合わせ、線路両側踏板も傾斜してるので、踏切内高低差が100mm近くあります。 トレーラー通行禁止、車高下げた車や出っ歯スポイラー装着車は蛇行して通過します、底打ったりスポイラー破損のリスクが高いからです。
【曲線部踏切からの風景-2】
前写真より下り線側に寄った撮影画像を拡大すると、甲府方200mほど先まで直線水平で、そこからガードレール付緩和曲線が始まると同時にカントが付き始めてるのが解ります。 つまりカントにも緩和カントがあり、緩和曲線がないレイアウトではどうするかです。
【カント付き曲線通過列車】
当社従来線はユニトラック道床外側を板紙2枚重ねで1.6mm持ち上げ、線路高低差0.6mmの標準カント敷設です。 写真は南西コーナーのR358/45度、R481/15度、R718/15度カーブで、直線接続部分から60mmで板紙1枚、120mmで2枚の緩和カントを付けてます。
60mm毎を選択したのは、南端に128mmの短直線があり、その先のプレートガーダー橋間のR358/45度にカント付ける際、281mmの線路長に緩和カントを各120mmにすれば、わずか41mmですが本カント区間を作れるという理由に過ぎませんが、不自然さはありません。
【緩和カントから本カントへ】
プレートガーダー橋東基台側の30度カーブにもカントを付けてます。 D51テンダー後部はプレートガーダー橋出口で水平ですが、車体は緩和カント上にあり、前端は短い本カントに差し掛かってます。 2枚の写真でカント付き敷設の効果が良く解ると思います。
それではカント付き曲線線路敷設の実演です。 作例はR282/45度ですが、手持ちR315/45度を使います。 0.8t板紙からR300/R330 30mm幅の線路敷設ベースを切り出します。
次に線路敷設ベースに貼り重ねるカント用板紙を切り出します、外側R330、内側R315の15mm幅ですが、ユニトラック道床内側は空洞になってるので、8-20mm幅でOKです。
線路敷設ベースにカント用板紙2枚を貼り重ねましたが、実際の施工はサブテレインまたは4mm合板に線路敷設ベースを接着し、乾燥固着してから2枚を順次貼り重ねてください。 前に説明した様に勾配区間ベースは平面でなく捻じれてるからで、先に3枚接着すると正確な敷設ができなくなるからです。 カント付き線路敷設を解説する目的の3枚先行貼り重ねとご理解ください。 解り易い様にカント用板紙縁をマーカーで黒く塗ってます。
3枚貼り重ねた板紙上に60mm間隔で両面テープを貼り、曲線線路を接着します。 写真例は接着しただけですが、ユニトラック道床が捻じれた状態の接着ですので、長期信頼性確保の為に、実際に敷設する際は60mm間隔ポイントで瞬着固定します。
曲線外側が板紙2枚1.6mm持ち上がり、手前水平から徐々にカントが付いてる様子が解ると思います。 これで両レール間高低差が0.6mmになります。
次に1.5mm厚コルクシート2枚で路盤を形成し、路盤(犬走り)とレール天面を4mmにする工程です。 曲線線路内側は直線線路と同じく2枚貼り重ねます(実演省略です)が、外側は1段目を60mmだけ貼ります。0-60mm区間はコルクシート1.5mm、60-120mm区間は板紙1枚0.8mm、120mmから先の区間は板紙2枚重ね1.6mmになってます。
60-120mm区間線路外側に板紙(写真赤色)を貼ると線路外側は1.5mmと1.6mmでほぼ平坦になります。 この上に2枚目コルクシートを貼ると線路外側は3.0-3.1mmになります。
つまり本講座曲線線路カント付き敷設断面は上図の様になっており、路盤は曲線外側が0.1mm高いだけでほぼ水平、両レール高低差0.6mmのカントが付き、通常路盤-レール天面は4mmですが、曲線外側はカント分+αバラストが高く実感的になります。
【過去記事より転載】
この曲線カント付き敷設法でR282/45度と連続するR481/15度を敷設しますが、単独で存在するR481/15度7本は線路長126mmで本カントを付けられません。 駅構内4本はカントなし選択肢もありますが、本線上3本はS字カーブでカントを付けたい処です。
そこで、60mmを50mmに短縮し26mm区間を板紙1枚で持ち上げる方法をお薦めします。 ほんの少しでも傾けば感知でき、雰囲気が盛り上がるものです。
ではまた。















