Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

Hyper-G湖南仕様改修⑭ヒゲ退治

亀の歩みの様なHyper-G湖南仕様改修は、ようやく『軽負荷時ヒゲ対策』を残すのみになりました。 早く完成しなと『がおう☆』さんレイアウト完成しそうですし、試験運転ニーズがあるハズです(滝汗)

【早くしないと日が暮れる】
前回書いた様にこの件を最後にしたのは様々な要因の複合汚染で、他の問題解決後でないと何を見てるか解らない可能性があったからです。


◆ヒゲ問題は根が深い
また問題の軽負荷時ヒゲは、安全性保証回路追加前にはなかった現象で、削除不能な安全性保証回路関与が確実な根が深い問題と解ってました。

【旧データより加工】
その証拠がこのデータ、蒸機常点灯特性改善の為にBAT43奥の手回路追加時の出力波形で、手持ちHyper-G電源使用で470Ω負荷0.5V出力、立ち上がりにヒゲは発生してません。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑤』より転載】
湖南電源に安全性保証回路追加したらピーク23Vのヒゲが発生しました、モーター信頼性悪影響を避けるには16V、できれば15V(KATO Hyper-Dピーク電圧)以下に下げる必要があります。 電源パスコンや安全性保証回路損失低下で改善しましたが、不十分な現状です。


◆現状レビュー
様々な問題対策改修をしたので、軽負荷時ヒゲの現状を整理します。

ヒゲ発生の根本原因はPWMオン瞬時に急増する電流です、10.8Ω負荷で約1Aです。 安全性保証回路なしの場合は回路系と電源出力GNDが共通なので大きく振られる事はなく、ヒゲの発生もわずかで許容内です。


安全性保証回路は電流検出の為に回路系と電源出力GNDを分離した結果、ポリスイッチ抵抗で電流が電圧に変換され振られます。 出力TRスイッチング速度が非常に速いので、フィーダー出力までの長い伝送路の配線コイル成分と、配線間を含めた回路図に現れないコンデンサ成分でヒゲ=高周波ノイズが発生してます。 その様子を波形で確認して行きます。

上赤色が出力TRエミッタ、縦軸2V/目盛です、PWM立ち上がり時に9.5V-13.0V、3.5Vのヒゲが出てます。  下白色が基準GND(回路系GND)とPS GND間、つまりポリスイッチ両端で、縦軸1V/目盛です。 PWMオン時だけ0.35V上昇してる事から、ポリスイッチ抵抗が約0.35Ωと解ります。 1.3Aでトリップすると一気に上昇しラッチ回路をオフします。

GNDプローブをPS GNDからDR SW GNDへ繋ぎ替えました、その間は20cm弱の配線だけですが、PS GNDになかった-0.8V-1.6V、2.4Vのヒゲが発生してます。 10MHz以上超高周波数帯でしか起きない現象です。

GNDプローブを負荷GNDに繋ぎ替えました、DR SW GNDからは約2.2mの配線です、ヒゲが大き過ぎるので縦軸2V/目盛に切り替えてます。 ヒゲは-3.8V-5.0V、8.8Vと4倍近くに成長してます、ここから給電してレール2-3m先は?と考えると空恐ろしくなるほどです。


電源出力基準のGNDがこれだけ振られたら出力にヒゲ出るのは当然です。 出力TRエミッタヒゲはGNDヒゲの回り込みで、それがパスコン追加効果が限定的だった理由です、GNDヒゲを大幅減するしかありません。 また配線抵抗により0.35Vは0.5Vに上昇してます。


◆改善策の決定
現状レビューにより、Hyper--Gの超高速スイッチングノイズが安全性保証回路追加により、大きく拡大されてるという皮肉な事実が解りました。

考え得る改善策は以上の通りで、高速スイッチングでシャープな波形のHyper-G特徴を性能低下させる根治療法とヒゲをリミッタで抑え込む対症療法があります。 出力トランジスタのスイッチング速度が遅い品種変更案は設計やり直しで非採用、スピードダウンコンデンサ設置を有力案として検討し、ツェナーダイオード対症療法をバックアップにしました。


◆スピードダウンコンデンサとは?
コレ筆者造語です。 スイッチング電源回路ではスイッチング速度を早くする為に設置する『スピードアップコンデンサ』が良く知られてます。 それと真逆の使い方をして早過ぎるスイッチング速度を、ヒゲを抑え性能に悪影響ない程度遅くするスピードダウンです。

簡単に解説します、興味のない方は読み飛ばしてください。 一般的なスイッチング電源制御信号出力はアクティブ・ハイ、制御信号H(電源)で出力TRオン、L(GNDまたはオープン)でオフの論理になっており、制御信号出力と出力回路接続は上図の様になります。

スピードアップコンデンサは図R10と並列に設置し、制御信号L⇒H切り替り時にTR01を瞬時にオンさせ応答速度を早くする役割を果たします。

Hyper-G採用の高速コパレータは、制御信号出力がオープンコレクタTRで、TRオフ(オープン)時にR10で出力TRオン、TRオン(接地)時に出力TRオフの逆論理になってます。 上図コンパレータ出力=TR01ベースは、出力TRオン時0.7Vオフ時0Vの動作をしてます。

さてR10並列にコンデンサ追加した場合を考えます。 コンパレータ出力0.7V⇒0V時、出力TRオン⇒オフ時は、コンパレータ出力TRがコンデンサを瞬時に充電するので変化なし、従って立ち下がり特性も変化なしです。


コンパレータ出力0V⇒0.7Vの場合は、コンデンサ充電電荷をR10で放電するので、コンデンサがない場合より時間が掛かります。 0.6V-0.7Vの間でTR01が徐々にオンするのでち上がりを遅くするスピードダウン効果があります。 ノイズ周波数成分から計算した最適値は100pF-330pF(p=ピコは1兆分の1)、手持ちは102K(1000pF)しかありません。


◆102Kスピードダウンコンデンサの性能評価
理論最適値310倍の102Kでは立ち上がりが鈍り過ぎると思いますが、ヒゲへの効果検証と発注が必要なコンデンサ容量値決定基礎データとして102Kを追加して計測を行いました。

負荷GNDの-3.8V-5.0V、8.8Vのヒゲは-2.0V-1.6V、3.6Vと半分以下になりました。 特に影響度が大きいプラス側は5V⇒1.6Vで1/3以下です。 もっと劇的なヒゲへの効果あると思ってたのですが意外でした。 ここからは102K追加の変化をBefore/Afterで見て行きます。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑬』より転載】
最初のBeforeは10.8Ω負荷、常点灯Max調整の出力波形です、負荷両端の計測です。 PWM立ち上がり時のGNDの5Vヒゲが、出力TRエミッタ電圧低下の原因になってます。

Afterです、Beforeでは0V⇒10Vが1μsecでしたが、黄点線丸の様に約2倍になっており、明らかに立ち上がり速度が遅くなってます、また出力TRエミッタ電圧低下も減ってます。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑬』より転載】
2番目の比較計測は470Ω負荷の出力ヒゲが問題になった条件です。 常点灯Max出力電圧2.30V、ヒゲピークは15.6Vでした。

この波形見た時には思わず声を上げました、4V近いヒゲがわずか0.8Vに改善されました。 10.8Ω負荷時の波形より立上り時間は相当短く、行けるかもと期待が膨らみました。 しかし立ち上がり速度は遅くなっており、その影響で常点灯Max出力電圧が低下してます。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑬』より転載】
3番目の比較計測は470Ω負荷、最小安定発振調整です。 常点灯出力電圧0.23V、ヒゲピークは16Vでした、 波高値12Vキープは高常点灯性能のキモなので結果が気になります。

そのAfterがこちら、波高値12Vをクリアしヒゲも許容内に改善されてます。 立ち上がりが遅くなってパルス幅が狭くなり、最小安定発振出力電圧が0.18Vに低下しました。 結果的には蒸機常点灯調整範囲が広くなりました、こうなると蒸機負荷も計測したくなります。

【『Hyper-G湖南仕様改修⑪』より転載】
蒸機負荷のBeforeは損失低減前のコレが最新データです。 最小安定発振出力電圧0.16Vで、ヒゲのピークは18.0VのNGレベルでした。

立上りが遅れてパルス幅が狭くなり、最小安定発振出力電圧は0.097Vに低下、ヒゲは14.0Vピークに改善されてOKです。 抵抗負荷より最小安定発振出力電圧が低いのは、黄点線丸部のモーター逆起電力の影響です。 スピードダウンコンデンサ容量減らすと、ヒゲのピークは確実に上昇します。 様子見した手持ち102Kが偶然にドンピシャの結果でした。

最低安定発振出力電圧0.1V弱の常点灯で、実用下限値をクリアしてます。 以上の確認結果により102Kスピードダウンコンデンサ追加を軽負荷時ヒゲ対策として採用決定しました。


これで一件落着?、実はそうではないのです。 軽負荷時ヒゲは伝送路の高周波ノイズ拡大と解りました。 湖南電源メインCHとサブCHは6Pケーブルで接続されており、サブCHは伝送路が長く確認が必要です。

今にして思えばコンパレータ2回路だから簡単に2CH化可能と考えた浅はかさを呪いたくなります。 1CHなら全体に1.3Aポリスイッチ入れるだけ、安全性保証回路不要で、軽負荷時ヒゲに悩まされる事もありませんでした。 でもここまで来たら今更後に引けませんね。


ではまた。

×

非ログインユーザーとして返信する