Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

摂津鉄道 晩秋の蔵本村

摂津鉄道『晩秋の蔵本村』は、昨年『レイアウトモデリング』で始めて読みました。 従来線製作前に読めば良かったと思う部分と、風景重視レイアウトパイオニアの大先輩に失礼かもしれませんが、自分の製作スタンスは間違ってなかったと安心する部分が半々でした。

【前号より転載】
今回『レイアウトモデリング』は発表記事のまま転載してると確認できました。 改めて読み直すと、『道を切り拓く先駆者の苦労』をつくづくと感じました。 誰もやらなかった事を成し遂げる為に、綿密な実地調査と考察、そしてモデル化への取捨選択をされてます。

日本の農村の原風景という言葉がピタリと当て嵌る静かな村の佇まいです、筆者幼時記憶に残る昭和30年前後の北関東の風景に重なります。


★集落の類型化
蔵本村の設計は家屋配置の基本となる集落の類型化から開始してます、

筆者経験でもA散村は広大な北海道を除くと例が少なく、B集村かC街村が多い様で蔵本村は集村、当社北基台は県道沿いの街村に分類できます。


★農家の建物調査
現在はキットを購入して組むだけで設計不要、時代考証不要でその時代のストラクチャを入手できますが、何も先行事例がない製作は情報収集の調査から始める必要がありました。

農家は母屋の他に付属建物が多いのが特徴で、どの様な建物がどの様に配置されてるのかを理解しなければなりません。

TOMIXわらぶき農家のプロトタイプ然とした農家です、写真上の正面(通常南側)と写真下の裏面(北側)、及び様々な物が置かれた側面(西側)は表情が全く違います。

 

わらぶき農家の外回り設計には内部構造理解が欠かせません、典型的な田の字間取りです。 作者は内部基準で外回り製作してますが、キットベースで室内製作する場合は拙レイアウトわらぶき農家や倉元駅舎の様に外回り基準で内部設計製作と順番が逆になります。


GMローカル駅舎は外回りと内部構造が矛盾しない設計でしたが、TOMIXわらぶき農家は中央に屋根固定の太いステーがあり内部工作に苦労しました。 開放的な座敷なのだからもう少し考えてよと言いたい処です。

わらぶき屋根は通常入母屋ですが右の様に寄棟もあり、また棟の形も変化に富んでます。

摂津鉄道の時代設定記載を見た記憶がありませんが、作者の世代と走行車両から昭和20年代後半と推定してます。 筆者が知る昭和30年代の農村は瓦屋根が増えており、確かにこのタイプの農家を良く見掛けました。(母の館林実家隣の農家がこのまんまの建物でした)

付属建物として特徴的な蔵にも調査は及んでます。

そして最後に農家建物配置をいくつかにパターン化されてます。 母屋正面南向きが原則ですが例外もあり、製作した蔵本村でも道路や敷地の必然性で母屋東向き農家を混ぜ、実感を盛り上げる要素に使われてます。 現在の農家市販キットもこの配置に準じてる様です。


★地形の重要さ
『晩秋の蔵本村』はストラクチャ個々の品質と実地調査に基づく配置の妙もありますが、もし完全に平坦なベースに製作されたとしたらその魅力は半減したと筆者は考えてます。

御覧の様に右辺は水田で線路に接するのでほぼ水平ですが、左奥コーナーが一番高く、前辺に近付くに従って傾斜が緩くなる傾斜地になってます。 実際に埋め立て地(筆者は落ち着かず嫌いです)以外完全な平坦地はまず存在せず、自然らしさが欠落してしまいます。

この地形造形をする為にこの様な台枠を製作してます。 水田と住宅敷地以外水平な場所はないと言って良く、地形の重要性を優先しない限りこんな手間の掛かる事はしません。

【拙レイアウトより】
緩やかな傾斜が建物敷地や田畑に高低差を生み、トータルとして自然らしさを生みます。 当社コンセプトに最初に自然があり、人が住み付き家屋や田畑を作り、最後に鉄道が敷設されたと書いてますが、摂津鉄道も明言してませんが同じ考え方で製作されたと思います。


★小物で生活感を演出
建物製作は調査結果を基に適度な簡略化で製作されてます。 時代環境と素材環境が異なるので割愛しますが、小物については大いに参考になるので、適用事例を紹介します。

晩秋農村の風物誌干柿は当社もやりたかったのですが、スケール0.6mmほどのサイズで従来線は断念しました、延伸線で挑戦したいです。

物干に洗濯物があります、1/80だからできる芸当かもしれません。 写真では解り難いですが庭先にモミが干してあります。 農家屋根は切妻・寄棟・入母屋と形でも、わらぶき・瓦葺きと材質も変化に富んでます、この部分だけ見ると変化させ過ぎかもしれませんが。

代々村長を務める旧家には庭がしつらえてあります、旧家にふさわしい重厚な屋根です。

庭の製作図で砕石場に出てきたテングサ使うとこんな外観の植物製作可能と解りました。

水田の稲株は試行錯誤の末ミシンで縫って裏側を接着固定し表面をカミソリ切断、起毛固着で製作されてます。 このセクションで1万株、全体で10万株、その回数カミソリで切ったと思うと気が遠くなります。 モミ殻焼きからは発煙装置で煙がたな引いてます。

 

発煙装置は延伸線でぜひやりたい事で、壊れたドライヤーヒーターニクロム線や碍子管など材料は揃えてあります。 この裏面写真見ると発煙装置以外にも配線らしき物があり、建物照明配線にも思えますが本文記載ありません、夜景楽しめたら言う事ないのですが。


★まとめ
摂津鉄道蔵本村はリアルなレイアウト風景製作の秀作で、風景重視レイアウト製作者にとって、半世紀経てなお目標となる優れた先行事例です。

記事に登場するのは8620牽引のダブルルーフ客車ですが、C58/C57牽引のオハ35/オハ61や10系気動車も良く似合う風景だと思います。

田舎道だからウネウネさせてるのではありません。 最初は獣道の様な踏み跡、家が建ち出入りの通路が設けられ、耕作で行き来し、やがて大八車や馬車・耕運機が通りと、長い歴史の中で決まってきた道筋で、地形や建物と整合したウネウネだからこそ自然なのです。


この記事読んで製作意欲が湧いてきました。 年初の計に延伸線北基台製作を掲げながら、温かくなったのに何も着手してません(滝汗)


ではまた。

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