Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

レイアウトの水田を実感的に!

『ご趣味は?』と訊かれ『俳句を少々』なら『高尚なご趣味ですね』、『ゴルフに凝ってます』なら『健康に宜しいですね』、しかし『鉄道模型です』には『面白そうですね』の返事でも、内心良い年して電車で遊んでると思ってないかと気を回す、そんな肩身の狭さを皆さん感じてるのではないでしょうか?、残念ながら鉄道模型の社会的認知度は低いですね。

【夕焼けのキハ】
人間には興味があり熟知した部分は細部までこだわり、興味が薄い部分にはこだわらない特性があり、特に趣味の分野ではその特性が強く出る傾向がある様です。 例えば筆者は模型車両の細部仕様にこだわりません。

【当社KATO旧型キハ58】
当社KATO旧型キハ58の口元が淋しいと取り付けたパーツはキハ20系用です、何処が違うか知らず興味も薄いので同じ設計思想気動車だからOKで済ませてます。 一方で同一形式車番の違いとか、D51XXX号機は門鉄デフで補助HLの形態は・・・と個体にこだわる方もいらっしゃいます。 趣味とはそんな物、自己満足の世界ですから価値観多様性を認め合わなければ会話が成立せず、こだわりの押し付けは偏狭マニアと言われるだけです。

【2018.11.18更新】
従って今回のテーマも筆者個人のこだわりです。 地方在住が長く、田畑や農作業を日常的に見慣れた目からすると、レイアウトでは隙間埋め程度にしか扱われてない田畑は実感に乏しく、以前にも上記記事で水田の地位向上を試みました。 今回はその続編第二弾です。


★水田には水の入口と出口が必要
レイアウトに製作される水田は田植え後の姿が一番多い様です、水面に映る脇を走る列車の姿は昼も夜景も美しいからだと思われます。

【当社水田の用水路】
満々と水を張った田にそよぐ苗、水はどこから?、用水路がありません。 田植え後低温の日は深水管理、水田水位を高くして苗を守ります、水を出し入れして細かく管理してます。 水田に必要不可欠な用水路/排水路を備えた水田は拙作以外1例しか知りません。

【農水省技術レポートより】
用水/排水方式には大きく分けて3種類あります。 最初は『田越し灌漑』、米作史の主流を占めたやり方で江戸時代中期まではコレでした。 真っ平らな土地は埋立地を除きまず存在しないので、水田は畔を築いて開墾され一枚一枚の標高差で水が流れる仕組みです。

【姨捨の棚田】・・・千曲市HPより
現在この方式を採用してるのは急傾斜地の棚田くらいです。 水田個別の水位管理ができず、村総出で共有水田の耕作してた時代は良くても、土地所有権が明確になった明治以降は次第に姿を消し現在に至ってます。

【延伸線南基台棚田設計図】
延伸線に小規模な棚田を製作予定です、真四角な棚田は不自然なので手間の掛かる工作になります。 急坂脇の流れが用水の水源です。

【農水省技術レポートより】
2番目の方式は『用排兼用型灌漑』です。 水田脇の用水路から給水し排水する方式で当社従来線水田は全てこの方式です。

【中山平駅裏水田】
黄色▼に給水口が緑色▼に排水口があります、各水田間に3.5mm標高差を付けてます、でないと1本流路のこの方式で水の出し入れができません。 斜度換算すると約3%で、傾斜地の水田に多く使われてます。

【用水路と給水口】
水田用水路と給水口例です、用水路水位が水田面より高く仕切り板抜けば水が入る単純な仕組みで、仕切り板替わりに土嚢積んだ場所もありました。 用水路傾斜により排水口では水位が逆転し排水、構造は同じです。

【排水口と給水口】
仕切り板排水口(左)と給水口(右)を設置した水田です。 複数水田を並べる場合、用水路作れなくても高さを少し変えるだけで風景に変化を与え実感が増すと思います。

【圃場整備された水田と用水路】
当地移住の37年前、この場所は中山平駅裏の様な水田が並んでました。 平成7年に1年休耕して圃場整備が行われ、水田大型化、用水路も拡幅されました。 その結果排水口と用水路標高差が大きくなり従来方式は排水が畔を崩すリスクがあり排水口構造が変わりました。

【パイプ式排水口】
水田側の仕切り板式排水口は同じですが、埋設パイプ排水で畔強度に悪影響を与えない様にしてます。 パイプ排水方式は傾斜が強い土地の水田で想定時代から使われてました。

【従来線段々水田の排水パイプ】
従来線南基台で標高差が大きい水田で再現してます。 写真拡大すると細かなホコリだらけ、そう言えば1年以上掃除してません(汗)

【国交省教育資料ページより】
信州の水田はほとんど傾斜地ですが、越後平野や庄内平野には見渡す限り水田が広がってます、用水路/排水路はどうなってるのでしょうか。

【農水省技術レポートより】
それが3番目の方式『用排分離型灌漑』です。 用水路と排水路別ける事で平坦な土地でも水の出し入れ可能になります。 ただし平坦と言っても上記米どころ平野地形図確認すると、水が流れるわずかな傾斜地です。

【国交省教育資料ページより】
地下水源、取水口や取水堰で川の水を取り込み水門で水量調節、田植え前が最大水量、冬季が最小水量です。 自然流下用水路で水田に給水する仕組み解説図ですが、最後は川に戻される用水路の先と排水口/排水路が省略されてます、子供達にキチンと教えましょうね。

【用水路出口】
用水路には出口があります、田植え時期に大量の水を流すのでその土地の水系、川に戻すのが普通です、従来線では1ヶ所製作してます。 一方排水路は水田が水源で不要な水を抜くだけなので、水系に戻される事もあれば地下浸透式閉水路の場合もあります。

【用水路分岐点水門】・・・『水田って軽く扱われてませんか?』より転載
水田地帯に用水路は網の目の様に張り巡らされており、その分岐点には小さな水門が設置されてます、水利権が設定されてるからの様です。

【用水路分岐点と水門】・・・ここも要掃除
従来線水田に1ヶ所製作しましたが水門ハンドルが製作困難です。 機械時計部品使えないかと調べましたがダメでした。 延伸線数ヶ所と倉元駅給水塔にハンドル必要でエッチング屋さんに外注するしかなさそうです。


ところで穀倉地帯平野にも傾斜があると書きながら『ンッ』と思ったことがあり調べました、八郎潟干拓で誕生した大潟村です。

【大潟村HPより】
干拓地が水田となってる大潟村は平坦なハズで水田に水利の為の標高差があるとは思えません、調べて解った事は以下の通りです。

【大潟村HPより】
◆大型村全体が堤防で囲まれており、標高はマイナス数m。
◆堤防外水位で天井川(湖?)の様な用水路は水田より高い。

◆排水路は水田より低く、2ヶ所の施設で汲み上げ排水してる。
大潟村は減反政策の犠牲になった村として有名です。 広大真っ平で真四角の水田に昭和の農村の香りがないと感じるのは筆者好みもありますが、風景には水平垂直の直線だけでなく微妙な傾き、段差、曲りがないと幾何学的で落ち着きが悪いからだと考えてます。


以上、実際の水田とその関連施設、拙レイアウトの製作事例を紹介しました。 最初にお断りした様にこれは個人のこだわりであり、実感に乏しいと他レイアウトを批評する気は毛頭ありません。 拙記事がレイアウトに水田製作される方の何かの参考になれば幸いです。


ではまた。

×

非ログインユーザーとして返信する