Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

続・静態保存に想う

脱線話題が連続し恐縮です、どうにも静態保存蒸機の過剰装飾が気になり調べました。 電機や電車の保存車両は現役時代のままの姿なのに、何故蒸機だけ?という疑問です。

1966年7月筆者撮影の青梅鉄道公園スナップに写る9600(静態保存展示)は現役時代の姿です。 唯一の装飾要素はランボードからキャブ下白線ですが、これは現車でも珍しくありませんでした。 仲間が全国各地を走っていた時代ですから当然かもしれません。

2011年定年退職後の北海道ドライブ旅行で立ち寄った旧広尾線愛国駅の静態保存9600はどうだったか調べると、ロッド・ナンバープレート色差し、デフ縁取りなど化粧が施されていました。 どうやら静態保存蒸機の装飾は、無煙化達成後に始まりSLブームで加速した様です。 あるいは劣化防止錆止め塗装を兼ねているのかもしれません。

と言う事で峠を越えた松本平の静態保存蒸機を見に出かけました。 中央東線・篠ノ井線沿線自治体は、山梨県境富士見町を除き、茅野市・諏訪市・下諏訪町・岡谷市・辰野町・塩尻市・松本市・明科町(現安曇野市)・麻積村と軒並み蒸機を静態保存しています。 上の写真は松本市郊外工業団地内公園に保存されているD51です、屋根はありません。

ご多聞に漏れず厚化粧で、配管を丹念に金色塗装してあります。

敦賀を振り出しに静岡(電化前東海道本線)を経て長野入り、昭和48年廃車まで県内で活躍しており地元ゆかりの蒸機です。 この看板辻褄が合いません、中段の「昭和43年11月27日まで37年7ヶ月」は「昭和48年11月27日まで34年7ヶ月」の誤記の様です。


ところで蒸機無縁の飯田線沿線3市(伊那・駒ヶ根・飯田)にもD51が静態保存されています、一体看板に何と書いてあるのでしょう。 長野は盆地毎に言葉文化が微妙に異なり、伊那谷3市の静態保存には対抗意識が強い県民性が関係しているかもしれません。

機関士席の前方視界は予想以上に狭く、左カーブでは進行方向が全く見えなかったと思います。 踏切警報機・遮断機設置は一部だった時代なので、頻繁に汽笛を鳴らしながらの走行は安全上の必然だったと解ります。

運転席から振り返ったテンダー入口、機関助手の職場です。 給炭は50-100km毎、給水は20-30km毎という知識はありましたが、炭水仕切り板を見ると圧倒的に水積載量が多かった事が実感できます。(ちなみにD51積載量は石炭8t、水20tです)

少し引き返した塩尻市役所敷地内に静態保存されたD51です、取材日は桜満開でした。 筆者には懐かしい駅名板です、右小野(現中央本線支線)左広丘・洗馬、現在は右みどり湖・洗馬、左広丘です。 旧塩尻駅は新宿―名古屋・松本の線路配置で、名古屋と松本・長野間の列車は塩尻で進行方向を反転していました。 新宿ー名古屋間夜行準急きそ廃止以来、中央東西線直通定期列車はなくなり、塩尻駅は現在地へ移転改修されました。

155号機にも東海道本線本務機の時代がありました。 昭和45年1月まで20年間長野県内で活躍した後稲沢第一へ転籍、中津川で廃車を迎えたとあります。 この看板も廃車時期昭和48年を42年と誤記しています、40年間修正せず放置の様です。 諏訪エリア看板と合わせて見ると昭和48年に県内蒸機の大量廃車があった事が解ります。 

この155号機も松本172号機と同じ屋根なし保存です。 前回と合わせ6両の静態保存蒸機標準仕様はランボード白線とロッド色差し、オプションはデフ・キャブ縁取り、動輪・手摺り・配管塗装等様々です。 過剰装飾の背景は、機関区・国鉄工場が譲渡先へ送る際、娘を嫁に出す様に着飾らせたのではないか?が筆者推定です。 何故蒸機だけ?については、蒸機が人間臭い機械であり、国鉄職員に愛されていたからだと考えられます。

155号機ロッド類は錆一つなく他の静態保存に比べ段トツに綺麗です、市役所敷地内なので専任者がこまめに手入れしているのかもしれません。 思わず触りたくなる鈍い輝きに惹き寄せられ、触れてみると油に馴染んだ鉄の感触と微かにグリスの匂いがしました。

テンダー後部の梯子に「架線注意」の表示がありました。 蒸機晩年の職場環境を表している様で面白いと感じました。

せっかくここまで来たのだからと、本山宿初訪問の次途に数軒古民家が残っていた旧塩尻宿へ寄ってみました。 しかし20年の歳月は半端ではなく、残っていたのは重文指定された切妻屋根出格子が美しい1軒のみでした。 人が住んでいない家は、文化財的価値は別にして、静態保存蒸機と同じだなと妙に納得して帰途につきました。


ではまた。

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