記念切符から見える時代相
昔も今も変わらず鉄道事業者は記念切符を良く販売します。 『開業』『開通』『▲周年』『電化』『新型車登場』理由は何でも良いのです。 記念切符とイベント開催で利用客増えれば増収ですし、記念切符を記念品として購入して貰えば丸儲けだからです。
最近では真岡鉄道や大井川鉄道など記念切符販売を収益の柱にしてる地方私鉄や、第三セクター鉄道も見受けられます。 昔の記念切符を年代順に俯瞰すると、その時代の鉄道の置かれた環境変化が見えてきます。 と言う訳で表題のテーマ記事になりました。
★昔の記念切符
★1949年4月 福島-米沢間電化
戦後の記念切符としては最も古い物の一つで、国鉄発足が1949年6月1日ですから、鉄道省時代に発行されてます。 福島-米沢間電化の記念切符が販売されてます、下の切符は往復乗車券です。 戦後の方針や施策の混乱振りを露呈した様な電化で、製造されたばかりのE10は職場を失い、不幸な最後の新製蒸機になりました。
★1949年6月 阪神間鉄道75年
1949年6月に、阪神間鉄道開通75年の記念切符が販売されてます、これが実質的に国鉄最初の記念切符です。 大阪から三ノ宮までの普通乗車券で運賃は記載されてません。 大都市圏なのに、イラストが蒸機なのが何とも時代を感じさせてくれます。
★1949年10月 日米野球
1949年10月に米国野球チームが親善訪問し各地で試合が行われました、名古屋の試合では名古屋鉄道管理局が名古屋-中日球場前間の普通乗車券の記念切符を販売してます。
★1956年11月 東海道本線全線電化
1956年11月に米原-京都間が電化され東海道本線全線電化が完成し、記念切符が販売されてます。 画像は京都から山科行の普通乗車券で、優等列車用電車登場前なので、記念切符の顔は当時の国鉄花形電機EF58です。 前の3枚の7年後、記念切符らしくなってます。
★1956年11月 山手線複々線化
東海道本線全線電化完成同月に東京でも大きな動きがありました。 田端-田町間を複々線化し、山手線と京浜東北線の分離運転が可能になり記念切符が販売されてます。 裏面には発行背景説明が記載されており、記念切符としては珍しい例です。
★1958年4月 山陽本線姫路電化
東海道本線全線電化完成の2年後、1958年4月に山陽本線姫路までの電化が完成し記念切符が販売されてます。 姫路電化は岡山電化の前段ステップで、関西から西行する普通列車が客車編成から電車に置き換えられた程度で、大きなダイヤ変更はありませんでした。
★1959年9月 日光線電化
翌年1959年9月には日光線電化が完成し記念切符が販売されてます、宇都宮から東京電環行の乗車券です。 当時国鉄は東武と観光客を奪い合う日光戦争の最中で、東武の1720系特急ロマンスカーに後れを取ってました。 電化前のキハ55系準急『日光』に替わり、東武対抗で151系並み装備の157系準急『日光』を充当し、準急デラックス電車と称してます。
★1960年3月 準急『あきよし』運転
博多と山口を結ぶ準急『あきよし』運転開始時に、準急券の記念切符が販売されてます。 券面印刷日付が読み取れず調査した処、1960年3月20日運転開始と解りました。
★1960年10月 山陽本線岡山電化
姫路から更に西へ進んだ山陽本線電化は2年半後、1960年10月に岡山に達し記念切符が販売されてます。 記念切符は姫路電化時も同じですが、普通乗車券です。 大元駅は岡山南郊の宇野線の駅であり、当時は岡山港線と岡山操車場貨物専用線の分岐駅でした。
★1960年10月 北海道鉄道開通80周年
同じく1960年10月は、北海道の鉄道敷設から80周年の節目に当たり、記念切符が急行券として販売されてます。 筆者が就職・結婚・育児に忙殺されてた1980年の100周年の北海道では、さぞや盛大なセレモニーが開催され、記念切符も販売されたでしょう。
★1960年11月 仙山線全線電化
仙山線作並-山寺間は奥羽山脈越え長大な仙山トンネルがあるので、早く直流電化されてました。 仙台-作並間が交流電化試験線に選ばれて、1955年から試験が開始されました。
交直両用試作電車クモヤ790の試験も始まり、予想を大きく越える好結果を得たので、試作直前まで進んでたC63は開発中止され、新幹線に至る国鉄電化計画の礎が固まりました。 記念切符の電化とは山寺-山形間直流電化時で、後に全線交流電化に変更されてます。
★1960年12月 ディーゼル特急登場
その2ヶ月後、1960年12月に国鉄初のDC特急キハ81系『はつかり』が登場し、特急券が記念切符として販売されました。 キハ81は量産型キハ82系の先行試作的位置付けで、目的を良く果たし(?)トラブル発生が多く、巷の評判は良くない形式でした。 そして何故か『はつかり』を最後に、特急列車運転開始記念切符は販売されなくなりました。
★1961年4月 東北本線仙台電化
仙山線試験で自信を深めた国鉄は、多数の変電所設置に多額の費用が掛かる直流電化を仕掛り中の山陽本線/信越本線/中央本線までとして、以降電化予定の東北本線/常磐線/北陸本線/九州域内線など全てを、商用(50Hz/60Hz)20kV交流電化に決定しました。
そのトップバッターとして東北本線黒磯-仙台間電化が1961年4月に完成し、記念切符が販売されてます。 優等列車用の交直両用電車がまだ完成してなかったので券面は交流電機で、記念切符は準急券になってます。 福島行か仙台行の客車編成準急用です。
★1961年4月 四国輸送近代化完成
四国地形の背景にキハ55系と覚しき車両をデザインした『動力近代化完成』記念切符です。 これは四国鉄道管理局管内の旅客列車無煙化が達成した記念切符だと思われます。 試作DL、DD50も四国でしたし、国鉄はDF50を多数四国に配属してました。
★1961年6月 常磐線勝田電化
東北本線仙台電化に遅れる事2ヶ月で常磐線取手-勝田間電化が完成し記念切符が販売されてます。 筑波山と偕楽園を背景にあしらった長編成新型電車の券面デザインで、土浦-東京電環間の普通乗車券になってます。
★1961年6月 小郡-久留米電化
東北本線/常磐線電化工事と並行して、西でも電化が進み、常磐線取手-勝田間と同時に完成し記念切符が販売されてます。 小郡-久留米間とありますが、実際は小郡-下関間直流電化と門司港-久留米間交流電化の二つの工事を同時に完成してます。 下関-門司間の関門トンネルは開通時から直流電化されており、門司駅構内にデッドゾーンが設置されました。
この年10月にサン・ロク・トウダイヤ大改正があり、キハ82系特急『おおぞら』『白鳥』『つばさ』『まつかぜ』が運転開始されてますが、運転開始記念切符は販売されてません。 とても1回では終わりません、今回はここまでにします。「続く」
ではまた。
















