Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

レイアウトスペースを考える 後編

前回レイアウトと言えば16番だった60年前の状況と、未完に終わった筆者建設計画の話をしました。 また北海道の自然風景に特化した小型レイアウト再評価の話と作者後書きを最後に紹介しました。 実はこの後書きには続きがありました、以下の通りです。

【作者後書きより】
16番レイアウトでここまで潔く捨てた作者でさえ、9mmゲージに転向後は運転本位レイアウトを製作したいと述べてます。 910X1700mm狭小サイズだからこそできた割り切りが、スペース制約のタガが外れると抑えてた欲望が噴き出すのかもしれません。

【前々号より転載】・・・N化でどうなる?
16番⇒N化でスペースは3.5倍に拡大します。 曲線半径と走行可能車両制約は消滅します、Nは車両製作を楽しむゲージではなく、比較的安価な完成品スケール車両を購入し、走らせて楽しむレイアウトに適したゲージとしてスタートしたからです。


N市販車両の充実に従いレイアウト製作を志す人はほぼ全員Nへ走りました。 『Nならスペース問題が解決し、やりたい事を諦めずに済む』と考えたからです。 それは半分正しく、半分間違ってったと思います、何故そう考えるかをこれから説明します。

【N化でこうなる!】
900x1700mmの16番狭小スペースはN化により16番大型レイアウトを上回るスペースに拡大します。 大型車両4両編成走行可能な複線エンドレス・高架リバース線・ヤードと機関庫・トロリーラインまである絶対無理と思ってたスペースが手に入ったのです。 それではスペース問題が解決したNレイアウト製作者達は何をしたでしょうか。

16番小型レイアウトでは小型機関車+17m級客車3両、または自由形寸詰め4連、大型レイアウトでもスケール車両4連が限界で我慢を強いられました。 Nでは1200x2000mmサイズで6連が可能になり、ほぼ全員6-8連運転可能な設計をしてます。 スペース余裕はありますが、長編成でホームも長くなり駅全長は16番時代とほぼ同じになってます。

Nなら2列車運転は当り前、エンドレス複線化や増設、リバース線追加、その間を結ぶポイントや連絡線増設などの線路引き回しに多くの方がスペース余裕を費消してます。

16番では諦めてた機関庫・転車台・詰所群やヤードにも多くの方がスペース余裕を費消してますが、見落とし易い注意点があります。  複線区間・駅構内・ヤードなど線路が並ぶ場所でスペース3.5倍メリットを活かせるのはPecoだけ、KATOは2.8倍、TOMOXは2.5倍に圧縮されます。 50mmの16番複線間隔に対し、両社Nの複線間隔が広いからです。

【16番大型レイアウトのサイズと線路配置例①】
初期Nレイアウトは16番からの転向で、それまでかなり大型レイアウトでしかできなかった事が1200x2000mmサイズで可能になると、我慢ができずスペース余裕の80%以上を上記①/②/③に使ってました。

【16番大型レイアウトのサイズと線路配置例②】
その結果、レイアウト奥少なくも片側は山とトンネル、手前に同方向曲線が3-4本も並び、手前余剰コーナーは一方がヤードか機関庫、他方は都市型なら工場か変電所、ローカル型なら神社か農家と田畑の、かつて16番大型レイアウトで見た風景の再現になりました。

運転重視と言ってもスペース余裕全てを線路と鉄道関連施設に使った訳ではなく、街並み等のストラクチャも16番時代より充実しました。 これには全て自作するしかなかったのが、比較的安価で簡単に組めるストラクチャキット市販品増加が背景にあります。

しかしスペース余裕をシーナリーの充実、すなわち自然な鉄道沿線風景に使ったレイアウト製作者は、摂津鉄道が手本を示したにも関わらずほとんど現れませんでした。 16番で刷り込まれたスペース概念から抜け出せず、その縮小コピーに終わってました。

Nレイアウト平均的サイズ1200x2000mmは、16番換算で2250x3750mm、製作者は広大なスペースだと勘違いしたのです。 広大何てトンデモナイ、実寸180x300mに過ぎず、東京駅構内線は短辺にギリギリ収まりますが、新幹線ホームは長辺から100mはみ出します。


このエリアに6連2列車運転複線エンドレスに加えて、あれもこれもと詰め込むので、自然な風景再現など望むべくもなく、スペース余裕活用法の半分間違ってたと考える理由です。 では当社は16番計画から45年を経たNレイアウト設計をどうしたかのお話です。

計画倒れに終わった16番レイアウトは自室鴨居上の2.7m四方ドーナツ型、45年後のNレイアウト建設予定地は屋根裏2.0x4.1mドーナツ型、1.25倍面積にスケール換算加えると4倍近く拡大したスペースの広大さに呆然となりました。 その感覚を具体的に例示します。

【レイアウトサロン表紙 新モンカルライン】
バイブルの一つ『レイアウトサロン』に掲載された新モンカルラインと言うレイアウトがありました。 2.7x5.0mサイズ、他の大型レイアウトの2倍の巨大サイズで、当時国内最大の個人レイアウトだったと思います。

【新モンカルラインより】
ストラクチャ・シーナリーも充実し、同誌にTMS山崎氏の訪問記が掲載されてます。 『新』から解る様に2代目で、作者は住居と別棟ガレージ2階に建設してます。 当時日本の上位2-3%に属する上流階級作者作品で、ただ溜息で眺めるしかありませんでした。

筆者が建設を思い立った屋根裏Nレイアウトスペースは、スケール換算すると雲の上どころか銀河の彼方だった新モンカルラインの倍以上あったのです。 例えれば友人に付き合って宝くじ買ったら1等大当たりの様な物で、このスペースどうしようと悩みました。

自室鴨居上2.7m四方ドーナツ型はサイズとして大型ですが、エンドレスを1200mm幅主基台に折り畳む為にR450で、キハ20単行可、C56タイプ蒸機+17m級客車3両の設計でした。 スペース的には楽々10両可能でしたが、ローカル線なので欲張らず6両としました。 最大列車長を1.2-1.3倍に収め、駅全長を短くする事を優先したのです。

欲望の解放を止め、45年前と同じ単線エンドレス1本にしました、元プランがあったからできた事です。 交換施設のない仮乗降場をローカル駅に変更して優等列車運転性を向上し、中央駅とスイッチバック信号所のグレードアップに留め、線路密度上昇を避けました、

本格的機関区も魅力的でしたが、転車台なし補機基地機関支区に留め、線路より付帯設備を充実する選択をしました。 Nレイアウト製作者の多くはスペース余裕の80%以上を①/②/③で費消すると書きましたが、当社の場合①/②/③トータルで20%程度に抑え、残り80%を④/⑤鉄道関連以外のストラクチャ増設とシーナリー充実に割り当てました。

その結果上図設計になり、『スペース余裕は忘れろ』と自分に言い聞かせたので、詰め込み過ぎを警戒する余り、当初計画には鎮守の森がなく北町商店街も2軒少なく、後から追加する一幕もありました。 多分他のレイアウト製作者から見れば、当社はスペース無駄使いで勿体ないと映ると思いますが、これでもまだ詰め込み過ぎなのです。

生野街並み張出しを除く当社スペースを地図に落すと、東京駅が駅舎・駅ビル含めて収まる程度で、このエリアに3駅路線と大峡谷まで入れるのは、やはり詰め込み過ぎです。


レイアウトの16番⇒N化でスペース余裕は広がりましたが、スペース制約が少し緩和したに過ぎず、猫の額の土地に鉄道建設する制約は依然として存在してます。 走行列車が主役で他は前菜かデザートの様な物の考え方を否定する気はありませんが、もう少しシーナリーを重視した、見て温かい気持ちになれるレイアウトが増える事を願ってます。


ではまた。

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