半世紀前のTMS 1966年10月号➊
この号には前回更新『レイアウトに合わせた機関車製作』記事も掲載されてます。 更に以前公開した下記記事もこの号からです。
先につまみ食いした訳で、著作権期間満了で内容紹介できるTMSが残り少なくなったので、喰い伸ばし策を実行してるのです。
【TMS1966年 10月号表紙】
表紙写真は本号掲載の交通博運転会のスナップです。
1.表紙見開き天賞堂広告
筆者が裕福な家庭の子供だったら親に買ってもらいたかった天賞堂9600の広告が掲載されてます。 サラリーマン平均月収が3万円の時代でしたので、現在の8万円前後です。
広告コピーに『蒸気機関車が消えていく時代です』とありますが、この時点で2,500両以上の蒸機が現役で最多数を占めてました。 しかし無煙化への道筋は国鉄中期計画で決定済みで、9年後1975年に全廃されました。 第一次SLブームは1970年頃からです。
2.交通博運転会
毎年の様に万世橋時代の交通博物館で運転気が開催されてました。 GW期間が多く、屋外でのライブスチーム運転が呼び物になってました。
この年は夏休み期間中の8月20/21日に開催されてます。 記事と写真によると16番組立式レイアウトのみで、前年出展した9mmゲージレイアウトは出なかった様です。
個人レイアウト所有は高嶺の花、レンタルレイアウトは存在せず、103系/115系の1M3T4連は約1万円、この様な運転会に持ち込む編成物所有でさえ、学生には難しい価格でした。 従って中高生鉄道ファンの多くは、運転会を見て溜息を付くのが関の山でした。
仮に国鉄電車4連所有してたとしても、走らせる場所はお座敷運転か組立式レイアウトであり、運転会は貴重な場だったのです。 一方TMS誌上に作品発表する高名なモデラーは自作車輛お披露目の晴れ舞台であり、先輩やライバルと情報交換のチャンスでした。
16番レイアウト製作にはスペースの壁がありました、20m車通過曲線はR600、最低R550だったからです。 個人レイアウトに用意可能な1200X1800mmに収まらず、多くのレイアウトはR450を選択し、17m級旧型車両やフリーまたは寸詰め車両を採用してました。
このスペース問題がNゲージ普及で解決されるまでの間に様々な工夫が行われ、その一つがTTゲージ、1/105、12mm軌間でした。 一時はレイアウト実現手段としてTMSが推奨しレイアウトも発表されましたが、Nに淘汰されました。 そのTTゲージ車両の発表です。
3.作品グラフ&製作記より
発表作品は国鉄最大の電機EF58です。
TTはテーブルトップの略で、自作するしかない車輛の工作可能範囲にあり、輸入品レールが使えた様です。 国内ナロー用10.5mm軌間レールも入手可能だったので、何故TTjまたはTTn3 1/2,、10.5mmを推奨しなかったのか不思議です。 N一人勝ちになった現在どうでも良い事ですが、新幹線開業後、TMSは1067mm狭軌感に冷淡だったと思います。
作者は10年前にTTゲージC59を発表してます。 TMSは秀作C59を凌ぐ外観・機構共に傑作であると絶賛してます。
その絶賛された機構とは走行用と外観の台車を別々に製作した事で、第1/2/5/6動輪を駆動輪とし、第3/4動輪を従輪の様に首振り構造にしてる事です。 外観は2CC2軸配列ですが、走行性能上は2B1+1B2であり、曲線走行性能を大きく向上させてるのです。
車体を外すと中身はギッシリ、駆動・制御系以外のスペースに大きな鉛ウェイト2個を積んでます。 左端の切替スイッチは避雷器に見せかけて車体を外さずに操作可能にしてあり、モーター/ライト個別ONと双方ON/OFFの4切替になってます。
製作記に図面が掲載されてます。 前後駆動輪の動力伝達は多少伸縮性のあるゴムジョイントで結ばれてます。 ところで10年前のC59とEF58は何を牽いてたのでしょう、似合うのは旧客特急編成ですが最低7-8両、多分海外型客車編成だったと推定してます。
動力装置はこの様に構成されており、外観の3軸台車は飾りに過ぎず、動輪を支える機能はありません。
作品グラフ2番目はタンク貨車4両で、緩急車加えてタンカー列車編成になります。 スケールモデルに見えますが実は自由形です。
プロトタイプは国鉄線を走ってたこの辺の私有価車で、自由形にしたのは作り易さとタンク素材の特殊性が背景です。
この記事を執筆した常連寄稿者N氏は初心者でも製作できる木と紙の車両や、金属車体初挑戦者向け製作記を多く発表され、筆者は中学生時代に氏の記事に従いトキ15000 4両製作した経験があります。 台車を2両分しか入手できず、2両は車体完成廃棄でしたが。
N氏はアイディアマンで、一番自作が難しい貨車タンカーにマーブルチョコレート紙筒利用する事を思い付きました。 両端を切り落として中央部を使用するので、紙帯で切断面をケガキ、カミソリで切ります。
反対側はキャップをずらしてケガキ、カミソリで切ります。
妻面鏡板は27mm角材を8角形、16角形と加工してφ25mm丸棒を作り、先端をサンドペーパーで凸形加工し、紙筒に嵌め込み接着してます。
タンク上部のドームはφ18mmの柄杓の柄を切って加工です。 部材継目にラッカーパテを塗り込み、サンドペーパーで仕上げてます。
紙と木製車体で軽いので、強度アップを含め車台枠はチャネル材、アングル材、真鍮板半田付けで製作しウェイトも積んでます。 初工作でもできる程簡単ではありませんが、『作れそうだ、やってみよう』と背中を押してくれるのがN氏の製作記でした。
ではまた。