Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

水タンクとスポート 前編

シナリーガイド著者K氏寄稿記事の紹介です。 筆者は親から離れて旅が可能になった高校進学から無煙化まで10年ありましたが、マニアを除けば厄介者扱いされてた現役時代蒸機を知る最後の世代が高齢者になりました。 その後の復活蒸機のイベント列車は別物です。

復活蒸機は別物でも、若い人に興味を持ってもらうのは嬉しい事で、例えばイベント列車乗車の子供に『SLって何?』と質問すると、『石炭を燃やして煙を吐いて走る機関車』の答えが返って来るでしょう。 間違ってませんが中抜け、主役の水が見落とされ易いのです。


電機は架線からエネルギー供給されるので、燃料搭載不要で航続距離の概念もありません。 蒸機は燃料の石炭とエネルギー源泉の水を搭載し自給しないと走行できません。 その搭載量と搭載比率、そして航続距離はどうなってたかご存じでしょうか、D51を例にします。

D51標準型の燃料・水搭載量は合計28t、機関車重量の1/3を超えます。 また燃料・水運搬に牽引力を使っており、その比率は3%弱です。 車両運用上は航続距離が長い方が有利ですが、長大なテンダーで牽引力を減らす事もできず、バランス的にこの値になってます。  

【D51キャブからテンダー方向を見た画像】
外tから見えるのは燃料の石炭だけですが、テンダー上部に薄く搭載されてるだけで、大部分は水タンクなのです。 では合計28tの燃料・水比率がどう決められたのでしょうか?、航続距離がキーワードになります。


仮に燃料と水が同時になくなる比率で搭載すると、勾配や牽引トン数によりますが、およそ40km前後の航続距離になり、頻繁に機関車交替が必要では使い物になりません。 そこで時間と手間のかかる給炭に対し、短時間で補給可能な給水に着目し、100km強走行可能燃料搭載で航続距離確保を優先し、水は20-30km毎に頻繁に補給する方法が選択されました。

【姫新線ダイヤ】・・・機関車駐泊所の風景より転載
先日姫新線佐用機関車駐泊所紹介で、無給炭で姫路-佐用間往復可能なので給炭施設はないと書きました。 省略しましたが以下の事も解ります。


➊姫路-佐用間46K走行には途中で給水が必要で、蒸機牽引区間列車終着駅播磨新宮(姫路から22km)に給水施設があったのはほぼ確実。
➋姫新線姫路-新見間蒸気牽引普通列車は単機で168km区間を走行できず、津山で機関車を交替してた。(機関車交替の為、停車時間が長い)
➌少なくとも、佐用-津山間に1ヶ所、津山-新見間に2ヶ所、給水施設を持つ駅があった。


以上はK氏が簡単に書いてる事の背景説明前振りですが、蒸機は機関のエネルギー効率が低い上に、多くの施設と人手が必要な、恐ろしく非効率な正に前世紀の遺物だったのです。

最初に『水タンクは機関庫の付属物ではない』と書かれ、水タンクがある場所として以上を挙げてます、前振りで説明不要だと思います。 また、『機関庫のない小レイアウトの駅にも水タンクは見逃せないストラクチャで、停車時間が長いレイアウト駅には置くべき』『過去のレイアウトにスポート設置例がほとんどない』とも指摘されてます。


◆水タンクの種類と付帯設備
水タンクには機関区が置かれた駅の大型の物から、停車時間が長い峠麓の小駅の小型の物まで様々なタイプがあります。

大きく分けて線路脇に設置され直接ホースで給水する直接式と、駅構内地下配管で必要箇所で給水可能にしたスポート式があり、双方機能を備えた物もあると説明してます。

最もありふれて一般的な中型水タンク例を図解してます。 井戸が水源でポンプで汲み上げ揚水菅でタンク上部から注水して貯水します。 ホースが付く給水口とスポートへの送水管は短時間給水の為に太くなってます。 給水用足場や夜間給水作業用照明も設置されてます。 図示ありませんが、オーバーフロー用排水管付き水タンクもあります。


◆明治期から使われ続けた水タンク
水タンクは鉄道発祥時から必要で、国営化前の私鉄時代に建造された物も残ってました。

関西鉄道時代に建造されたレンガ製塔に乗った大型水タンクです。 奥の給炭台もレンガ台の古めかしい物で、塔丸窓には私鉄時代『関』のマークが入ってたハズと書かれてます。

蒸機大型化に伴い、昔の水タンク台を嵩上げしたタイプです。 寒冷地で配管に凍結防止ワラが巻いてあり、奥に見える給炭台は屋根付きです。

これも国営化前の私鉄時代に建造された水タンクです。 四角い塔の上に乗った径が大きく背の低いタンクが古い水タンクの特徴です。

石垣を組んだ高台のレンガの低い台に乗った四角い水タンクです、 国営化される前の日本鉄道時代に建造された物らしいと書かれてます。


◆近代型蒸気に似合う水タンク
時代が下がるとレンガ製塔はコンクリート足に変わりました。 足の数はタンクサイズにより4/6/8本ですが、6本が一番多かったと書かれており、筆者記憶とも一致します。 

スポート給水専用の大型水タンクで容量は47㎥だそうです。 大型でもD51積載量2両分少々ですので、揚水ポンプ稼働時間は長かったと思います。 姫新線始点姫路と終点新見に機関区が置かれており、そのほぼ中間に位置する津山にも機関区が置かれてました。

こちらは機関車駐泊所のコンクリート6本足標準サイズ水タンク、直接式でホースが付いており、スポートがないので送水管はありません。

駅舎から一段下がった場所に建つコンクリート6本足標準サイズ水タンクで、線路から離れてるのでスポート式でホースはありません。

盲腸ローカル線分岐駅鷹ノ巣の小型水タンクです。 こんな小さいのは見た記憶がなく、多分国鉄最小クラス水タンクではなかと思います。

水タンクの先に転車台がありました。 阿仁合線は距離が長くC11逆推進運転はしんどかったのでしょうか。


◆当社の水タンク
露太本線従来線生野駅と延伸線倉元駅に水タンクがあります。

市販品選択肢はKATOレンガ積みの古いタイプと、トミーテックコンクリートの2タイプで、いずれも給炭台とセットです。 水タンクは6本足のトミーテックが良かったのですが、ポンプ小屋が不細工で、周囲詰所群とのマッチング優先でKATOを選びました。 井戸カバーとポンプ小屋、レンガ塔に緑色のタンク、ハシゴと点検用ハッチ、全て定石通りです。

レンガ塔の給炭台側に入口扉があります、このタイプは塔内に配管が通ってるので外観はスッキリで、水量計が印刷表現されてます。

倉元駅の水タンクは機関車駐泊所にあり、入庫蒸機にはホース、停車中蒸機にはスポートで給水するタイプで、市販品がないので自作するしかありませんでした。 記憶頼りで設計し、K氏記事を参考にしてませんが、驚くほど第2図の代表的水タンクに合致してます。


相違点は沢の水を水源にしてる想定で井戸がない事、小型揚水ポンプなので小屋でなくカバーにした点で、唯一の痛恨事は水量計が付いてない事です。 リブ付タンク本体に流用したタミヤセメントキャップがドンピシャ嵌り、タンク色も一番多かった濃緑を選んでます。

【倉元駅給水タンクと乗務員詰所 夜景】
製作中に気付いて設置した照明2灯も大正解、着工できなかった課題の足場にGM洗浄台が使えたのも大きく、どこにもない『昔見たありふれた水タンク』を再現できました。 出来栄えはウデ次第ですが、記憶に残るオリジナルストラクチャ完成は嬉しい物です。


ではまた。

×

非ログインユーザーとして返信する