Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

半世紀前のTMS 1968年12月号②

[2022.08.10付記]機芸出版社転載許諾済。
前回の続編でTMS1968年12月号からです。

今年は各地で桜開花が早く信州も例外ではありません。

【上川土手4/7撮影】
例年は4月20日過ぎ、遅い年はGW中も見頃でしたが今年はこの週末が見頃、2-3週間早い桜の季節到来です、河川敷の水仙も見頃です。


◆国鉄蒸機3題
市販キットをベースにして自分好みの1台に仕上げる追加工製作記です。

改めて記事を読むと『好みの1台』仕上げるにはベラボーな手間とお金が掛かってます。

最初はC56、ベースキットは鉄道模型社製ですがそのままでは気に入らず、動輪を若干オーバーサイズのトビー製18.4φに交換し、下回りひ弱さ解消とスピード感を演出してます。

ロッド類は全てカツミC12キット部品に交換してます。 先輪とテンダー車輪はスポークタイプに、カプラーもケーディーに交換、結局2両分部品で1両仕上げた形になってます。

2両目はC59戦後型、ベースキットはカワイ製ですが下回りの鈍重な印象が気に入らないと、カツミ製C62/D52用部品とほぼ総入れ替えしてます。 自作するか市販キット組んでそのまま使うの中間にキット加工があり、パイピングやブレーキシュー等ディテールアップは大してお金掛かりませんが、この作例の様な加工は懐に余裕ないとできませんでした。

3両目はD51、カツミ製品ほぼそのままですが牽引力アップの為にモーター換装し、ロッド色差しと作者自宅に近い八王子機関区所属機にナンバー変更してます。 鉄道模型の楽しみ方は人それぞれ、弄り回すのが楽しみと考えるマニアが存在してました。(今もかな?)


◆CdS利用の可動式アクセサリ
CdSは硫化カドニウムの化学記号で、この素材を使った光センサーを利用した装置です。 現在ならフォトダイオードやホール素子を使った通過センサーで構成可能です。

日本の電子技術が世界水準に近付いた時代ですが、TMS執筆陣には専門家が居なかった様で、この記事は鉄道模型雑誌Railway Modeller掲載記事にヒントを得て試作と書かれてます。 レールサウンドシステムなど鉄道模型に係る新技術は海外から来る時代でした。

光センサーで列車接近/通過を検出してリレーを動作させ、保線区員を自動待避させるアクセサリです。 ギアで往復運動を回転に、2回路リレーでFF(発振回路)動作させれば警報機付き自動踏切に応用できます。


◆クモニ13製作記
Nで模型化されてるクモニ13の16番モデル製作記が掲載されてます。

TMS製作記には友人3人同一モデル競作が数度あり、筆者記憶ではD51とED42がありました。 この作者も友人3人で電車の競作を思い立ち、単行で楽しめバラエティに富むクモニ13に決まったそうです。

作者は鋼体化切妻タイプを選択しペーパー車体で製作してます。 当社は非電化ローカル線の設定ですが、101系登場以前の旧型国電と言うより省線電車には懐かしさを感じます。


◆シーナリーのテクニック
この号には7ページを割いてTMS主筆山崎喜陽氏の筆になる『シーナリーのテクニック』と題した風景製作技法が紹介されてます。

TNS誌上で公開されたレイアウト製作記に風景素材や製作法解説はありましたが、主役の車両製作記に比べ簡単な記述でした。 例えば『金網骨格に紙粘土で製作』と書いてあっても読んで作れる訳でなく、この記事はレイアウト風景製作の画期的な物だったと思います。

その巻頭言で脇役扱いだったレイアウト風景製作の重要性を説いてます。 筆者独断では『龍安寺鉄道延長部』が風景重視の始まりで『摂津鉄道』で完結したと考えてます。 現在はスタイロフォームやスチレンボード全盛時代ですが、先人の足跡を辿ってみましょう。

それまで標準技法だった木材骨格に金網下地、紙粘土を盛る剛構造に代わり、ここでは米国鉄道模型誌に掲載された紙テープ骨格に建築用プラスター利用の比較的容易な自然地形製作技法が紹介されてます。 とは言えレイアウト風景製作専用素材など何もない時代、プラスター=石膏でないの基本から、素材種類や特性と注意点、調達先の解説から始まります。

この技法は現在で言えば簡易骨格にプラスタークロスを貼って下地とし、ライトセメントで地表面製作する方法に近く、地形自体の強度が高く紙テープ骨格の強度不要な方法です。

新しい風景製作法の必要ツールも紹介されており、地表面製作のプラスター加工には油彩ペインティングナイフが良いと説明してます。

紙テープ骨格の上に10cm角大に切ったキッチンペーパーか薄手タオル地をプラスターに浸し貼り重ねます、新聞紙ではプラスターが十分浸み込まず下地強度が不足する様です。

上塗りは2回、1回目はハケで薄塗り、2回目を馴染み易くする為の様です。 2回目はペインティングナイフでプラスターを厚く盛り付けて岩肌などの地表面を造形します。

プラスターは固まると表面がツルツルになるので、乾燥前におが屑をフルイに掛け、または水で溶かないプラスター粒を撒布して地表面表現、その後着色です。 リアルサンドやカントリーグラスがある現在は簡単に製作可能な地表面表現に大変手間が掛かりました。

この技法のNレイアウト適用例も紹介されてます、骨組みは16番より一段と簡素です。
下地を貼り終えた状態です。
プラスター盛り付け造形着色した完成状態、プラスターのハリボテで通常使用に十分な強度でも強い力加えればバリンと割れたと思います。
仕上げ工程の必要ツールです、着色は油絵具です。

カツミ指定席だった裏表紙は学研のMINITRIX Nゲージに変わってます、TMS定価も5年間で¥140から¥200へ1.5倍の値上げです。


ではまた。

半世紀前のTMS 1968年12月号①

[2022.08.10付記]機芸出版社転載許諾済。
掲載広告の雑感だけで2回も飯を食わせて貰った本文紹介、工夫なしタイトリングです。

5年の時の流れを端的に表してるのが、表紙画像がNレイアウトである事です。 1963年以前は16番レイアウトかハンドメイド16番車両でした。

巻頭に写真集広告が載ってます。 鉄道車両ファンには2人種存在し、多数派は時代を問わず車両その物が好き、でなければ蒸機模型がこれほど売れる訳ありません。 筆者は働く姿を見た車両にしか興味のないマイノリティで、鉄道草創期蒸機には興味がありません。


◆作品グラフから
最初は巻頭の作品グラフからです。

タンクロコ3両の製作記ですが、このロコ達は優れた蒸機自作を志す作者がそれぞれ別の技術習得を目的とした習作、つまり練習台で何とも遠大な計画と言うしかありません。

南薩鉄道5号はエッジングリベット表現と蒸機製作で最も精度を求められるシリンダーブロック回りの製作技術習得が目的のモデルです。 これはこれで当時のスケールモデル平均値を十分クリアしてると思います。

2両目国鉄230型はパイピング技術マスターを主目的とし、薄板張り合わせ技法でバルブギアを製作したモデルです。

最後の国鉄1800型はリベット打ち出しと小径ドリル穴開け習熟を目的にしたモデルです。 Nが勢力拡大しつつあったこの時代でも車両製作が鉄道模型楽しみの大きな柱だったと解ります。 Nスケールでは欲しい未発売蒸機の100%自作はまず無理ではないでしょうか。

作品グラフ2番手は木曽森林鉄道ボールドウィンで、現在も静態保存されてます。 軌間9mmで1/87スケールならHOnですが、1/80をやや下回るの表現で1/83-84と推定されます。

キャブ一杯に収納されたモーターが選択スケールの要因だと思われます。 注目すべきはレール、9mm軌間でもN用またはN用加工でなく枕木間隔が広いナロー専用レールです。

能勢電鉄と言われても馴染みがなく調べると阪急グループ、兵庫県の地鉄と解りました。 ウィキペディアによるとポールカー60型は能勢電鉄自社開発最後の形式で、以降は全て阪急譲渡車両になった様です。 スハ44車体キットを流用したモデル化です。

内部構造はこんな具合でポール集電可能になってます。 解説に『棒型モーターを使用した床下伝動』とありますが、床板一部切欠きモーター落し込みを床下伝動と呼んでました。

その目的はサイドビューにモーターを見せずスッキリさせる事で、現在NのEC/DCは100%床下伝動と言えます。


◆レイアウト紹介
この号の表紙を飾ったNレイアウト新八里九里観光鉄道の紹介記事です。

『新』の命名は『旧』がある訳で、最初は16番レイアウトでした。

オリジナル16番レイアウト八里九里観光鉄道はTMS147号で紹介されており、特集シリーズレイアウトサロンに再録されてます。 147号から246号で8年余の時間が流れてます。

16番時代は複線エンドレスにリバース線を組合せヤードを追加した線路配置で、サイズは1600x2790mmでした、Nにスケール換算すると853x1488mmになります。

新八里九里観光鉄道サイズは910x1650mmで一回り大きなサイズ、それでもキャスター付きベッド下収納ですから、Nが如何にレイアウト向きか良く解ります。 作者は複線エンドレスはそのままに、リバースを諦めヤードを縮小し、折り畳みエンドレス長距離運転と直線区間ホームを優先してます、前作不満点を改善した線路配置案だと思われます。

【新八里九里観光鉄道全景】
線路敷設の項に国産R300とR270及び5番ポイント(KATO)、イタリア製R192(Peco)の記載があり、当時のKATO製レールはポイント5番、複線間隔30mmだった様です。 1971年に弟のNゲージ購入時には道床付きレールがなく、合板に固定した経験があります。

調べるとNレールシステムは後発のTOMIXが先行しており、KATOユニトラック発売は1980年でした。 ユニトラック移行時に4番ポイント設計都合で複線間隔30mm⇒33mmの変更(改悪)するしかなかった様です。

筆者経験によると合板直接敷設走行反響音は酷く、ここに示された1mm厚紙スペーサー効果は2mmコルクマットより相当小さく、路盤設置高架部を除き反響面積が広い平坦区間ではかなり賑やかだったと思います。

現在は時代設定だけでなく地方設定できるほど豊富な車種が入手可能ですが、この当時は選択肢が少なく、将来は国鉄型に統一したい希望を持つ作者も米国型車両に頼る状況でした。 この3年後にはKATOからキハ20系、C11、C62とブルトレが出てましたから、国鉄型車両が充実し始める直前だったと言えます。

レイアウト特化のNとは言え制作環境が現在ほど整っておらず、ストラクチャは一部自作、他は西ドイツ製(メルクリン?)中心に設置されてます、『西ドイツ』も死語ですね。 写真に多数写ってる架線柱全て自作とは思えず、これも外国製品だと思われます。

当然トンネルポータルの様な小物も販売されておらず自作するしかありません。 作りたい物を作る製作法に知恵を絞るのは、今も昔も変わらぬレイアウト製作者の性の様です。


ではまた。

ユニジョイナー経年劣化発覚!

人生に三つの坂有りという言葉があります、『上り坂』と『下り坂』そして『まさか』だそうです、その『まさか』が当社で発生しました。

【日に1本の特急がやってくる】
『アレーッ、変だな~』が発生したのは、湖南電源が完成し当社従来線生野-中山平間レール磨きをして試験運転の際でした。 『何か速度上昇がゆっくりだな』と思ったら。

右手本線から画面中央中山平駅端ポイント通過し、構内線電気区間に入るギャップで速度が急に上昇したのです、これまで発生した事がない現象です。 本線フィーダーから電気区間端のここまでのユニジョイナー接触抵抗による電圧低下が疑われます。 線路敷設以来間もなく8年、ユニジョイナー接続信頼性には良くない噂もあり、これは調査が必要です。

従来線電源は非PWMですがマスコン/ブレーキ制御で速度計付きです。 ノッチ1で最高速になるまで放置し、生野-中山平間本線フィーダー線路で電圧計測すると6.99Vでした。

その時の制御盤はブレーキオフ、マスコン1、速度計はSLモードで78Km/hでした。 ノッチ1最高出力電圧設計値6Vに比較し1V高いですが、無負荷なので高電圧が出力されてます。

中山平駅端ポイント近くで計測すると6.98V、0.01V違いますが実際は最小桁がパラパラ変動しており変化なしです。 通電不良は発生してないと確認できました、問題は無視可能だったジョイナー接触抵抗が経年劣化により速度に影響するほど上昇してる事です。

ならば抵抗値を計測すれば良いとフィーダー線路をクリップジャンパーでショートし隣のレールで抵抗値計測すると0Ω導通でした、当り前ですが1歩1歩の確認が重要です。

で、先程の中山平駅端ポイント近くで計測すると表示が安定せず計測不能でした。 そこで給電距離半分弱の小川鉄橋で計測した処、やはり表示が安定せずシャッターが切れた時は4.1Ωでした。 0Ω導通でないのは事実ですが、計測値は過大で信頼できず意味を持ちません。 どうもこの安物テスターでは10Ω未満の微小抵抗計測が正確にできない様です。

試みに小川鉄橋からジョイナー2ヶ所フィーダー寄りの南基台奥で計測すると0Ω導通、この区間に問題あるのは間違いありませんが、ジョイナー接触抵抗は負荷電流で変化する可能性が高いので試験法を変更しました。

生野-中山平間フィーダーは生野駅端ポイント先のS62Fのフィーダー線路で、構内側はポイント開通方向へ給電し、給電距離は1番線が1.47m、留置線が1.83mです。 中山平側給電距離は2.80mでKATO推奨4m未満に対し余裕あるので補助フィーダーは設置してません。


中山平-笠松及び笠松-生野間は約9mの駅間距離なので各2ヶ所のフィーダーから給電してます、生野-中山平間も2ヶ所にしてあれば今回の問題は発生せず、と言うより見逃してたハズです。 発生したのを幸い、起きてる事を解析し対策を講じたいと思います。

実使用条件に合わせた負荷試験を湖南電源設計時に使用した抵抗ダミー負荷を使い実施します、抵抗値19.5Ωなので12Vでは0.62A、1M7連室内灯装備編成相当の負荷になります。

19.5Ω負荷を中山平駅端ポイント付近にクリップで取り付けました。 抵抗の発熱で道路が溶けない様に、フィギュア台座取付用キューブ材をスペーサに流用してます。

フィーダー線路部の電圧は6.51Vで解放電圧6.99Vより0.5V弱低下しました。 この差は電源出力トランジスタ損失増加とフィーダー線路までの配線抵抗損失を加えた物です。 

次に抵抗値計測で異常値を示した小川鉄橋、給電距離1mで計測すると5.69V、フィーダー線路から0.82Vの大幅低下です。 ここから中山平まで大きな変化なければ鉄橋右側ジョイナーの接触抵抗増大が原因で一件落着なのですが、そうは問屋が卸しませんでした。

次のチェックポイント野立看板前計測値は5.13V、小川鉄橋から0.8mで更に0.5V以上の電圧低下です、どうやらどこか1ヶ所の問題ではなく、複数個所同時多発問題の様相です。

電気区間端に近い給電距離2.55mのタミー負荷接続した測定点の計測値は4.36V、フィーダーから2.15Vも低下しては速度上昇鈍いの当然です。 また野立看板から0.75mで0.7V以上の大幅電圧低下、どうやら給電距離と電圧低下の関係は一定ではなさそうです。

その関係を表にまとめると以上の様にバラついてます。 この結果からジョイナー接触抵抗増大は1ヶ所でなく数ヶ所、というよりほとんどで発生し程度もバラバラの様です。

では急に速度上昇した中山平駅構内線は何V?という疑問が生じ、負荷抵抗付け計測ました。 結果は予測に反し5.86V、生野-中山平フィーダー線路6.51Vより0.65V低い値です。 この差は制御盤からフィーダー線路までの配線長差による抵抗損失しか考えられません。 それでも直前区間の4.36Vと1.5V差ですから速度急上昇は至極当然の結果です。

念の為負荷抵抗外すと6.99Vで生野-中山平フィーダー線路解放電圧と同じ、やはり配線抵抗です。 フィーダー配線には1.5A容量線使ってますが、線路敷設時は配線して走らせて体感できる異常なければOK、車両負荷時電圧計測して確認する人はまず居ないと思います。

これから線路敷設ならジョイナー半田付けが最善策で延伸線ユニトラック敷設部は追加工します。 でなければ補助フィーダー多数設置の予防措置がありますが従来線には適用できません。 発覚したのはこの場所でもユニジョイナー接触抵抗増大は全線で進行してます。 問題が発生し、何が原因で何が起きてるか解りましたが、さてどう改善するか・・・です、


★湖南電源検収試験落第!
業務提携先の湖南総合運転所様から受託した湖南電源、先日納品しましたが検収試験をパスできず落第!、送り返される事になりました。

【『がおう☆』さん4月2日更新】
納入仕様未達の問題点3件と、使用して解った改修要望点1件です。
◆問題点-1:保護回路非動作
出荷検査で電源出力端ショートで動作確認しましたが、フィーダー配線、レールの抵抗込条件は未確認でした。 KATO Hyper-Dの鋭敏な動作が使い難かった経験から、少しダルな応答性にしたのが裏目に出た様です。
◆問題点-2:蒸機常点灯ができない
今回拙記事のユニジョイナー経年劣化が関係してそうです。 従来線上で出荷確認し狭いが実用範囲と判断しましたが、電圧低下で常点灯域がある様に見えてた可能性が高いです。 どちらにしてもTOMIX N-1001-CLに劣るなどプライドが許しません、改善します。

◆問題点-3:蒸機(ロコモード)層時計表示が非現実的
速度計表示が高過ぎる原因は色々考えられますが、低過ぎるの指摘で???です。 現品確認して何が起きてるか解析するしかありません。
◆改善要望点:ノッチ3-5の加速が早過ぎる
これはチョイ変で改修できます、何たってお客様は神様ですから(笑)


ではまた。