Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

摂津鉄道の砕石場①

当社コンセプトのルーツはTMSに掲載された摂津鉄道です。 製作記連載中に定期購読を止めたのでその後の進展を知りませんでした、鉄道模型から離れ興味を失ってたからです。

再開後にその後の進展を知ったのは摂津鉄道製作記が収録された『レイアウトモデリング』です。 改めて摂津鉄道の素晴らしさに感動すると共にあるアイディアが湧き、記事作成に内容転載の必要が出てきました。


しかし具合の悪い事に『レイアウトモデリング』の著作権期限が1年少々残ってるのです。 趣味ブログ引用で商業目的でも批判や誹謗でもないので著作権者も大目に見てくれるとは思いますが、警告や削除要求があれば従うしかなく、記事品質が低下してしまいます。

そこで著作権期限満了の元本TMSから転載する事にしました。 便利な世の中で片田舎でも50年以上昔のマイナー雑誌バックナンバーが簡単に入手できます。 70年前TMSはプレミア価格ですが、この時代は1冊¥1,000と安価、摂津鉄道製作記掲載号3冊調達しました。

当社延伸線倉元駅には廃鉱山跡地を建設予定です。 当時は炭鉱だけでなく鉱山閉山が相次いだ時代で、その時代の象徴として、また廃線跡は魅力的な製作対象だったからです。

【JAM2018出展品より】
資料集めしましたが鉱石を積み込むホッパーの資料が乏しく、製作に必要な細部構造が解る先行事例が意外に少ないのが実情でした。

【JAM2018出展品より】
訪問したJAM2018にいくつかの鉱山モジュールが出展されてましたが、参考になれどイメージにピタリと合う作例はありませんでした。

【JAM2018出展品より】
ホッパーから貨車への積み込み口はこのイメージですが、閉山して数年後の姿となるとどの様に朽ちて自然に還ってゆくのか見当がつきません。

【JAM2018出展品より】
またホッパー以上に難物なのが廃鉱山の象徴として設置計画した従業員宿舎の廃墟、ウェザリングで古びさせた建物とは全く異なるテクニックを駆使しないと雰囲気が出ません。

という訳で設計したものの製作法の目途が立たず暗礁に乗り上げたままでした。 そんな時『レイアウトモデリング』で摂津鉄道砕石場を見たのです、『コレだ!』と思いました。

【TMS1967年6月号表紙より】
これまでイメージしてたホッパーは線路脇に建つ背の高い密閉型貯蔵タンクで、そこから斜めに鉱石を落として積み込むタイプでした。 摂津鉄道砕石場の様に上に貯めて下に落して積み込むタイプなら製作がかなり容易です。 どこから運ぶ?には、コンベアに替わり作例に倣いZゲージフレキを使った鉱石運搬トロッコラインで解決可能なので方針変更です。

TMS1967年6月号と『レイアウトモデリング』を比較すると記事記述と挿絵・図面類が同一で、異なるのは表紙カラー写真原版が追加掲載されてるだけでした。 転載時の加筆編集なしと解り、古本購入が勿体ない気もしましたが著作権懸念フリーには替えられません。

実例として関西本線河内堅上駅付近の砕石場写真が掲載されてます。 左が砕石/選別装置、右がコンベアで運ばれた砕石積み込み装置ホッパーです。 作者は砕石/選別装置製作を省略(見えない部分にある想定)し、コンベアをトロッコに替える為に実際事例は少ない福知山線石生駅付近にあった簡素構造のこのタイプを選んだと書いてます。

給炭台に近い構造で、自作雪崩覆いに似てるので取っ付き易いです。

【ホッパー設計図面側面図】
設計図面が掲載されてます、勿論16番で1/80スケールですが、図面縮尺1/150はNスケールサイズ感が掴み易く助かります。

【ホッパー設計図正面図】
正面図もあり構造が良く解ります、やはり雪崩覆いに良く似てます。

【ホッパー脚と梁】
ホッパー脚と梁は作例では♯70レールを使ってます、スケール換算するとNでは0.95mm、1mm角真鍮線で組めば良さそうです。 2.5mmH材を使いコンクリート造りにしてしまえば簡単ですが、雪崩覆いや県道洞門と同じになり、ここは繊細さ重視で真鍮線を使います。

ホッパー上部構造です、側面に砕石こぼれ防止木柵Dを再現しておりこれも頂戴します。 Eが砕石吐出口で、ホッパー底面はテーパー付きの砕石が出易い構造と考えてたので意外でした。 A内部テーパーも考えられますがE配置が不自然、要アレンジかもしれません。

足と梁の♯70番レールパーツはエポキシ接着剤で組み立ててます、この図Eが砕石吐出しハンドル、16番でφ1mm真鍮線なのでNでは0.5-0.6mm真鍮線になります。 図面にあるトロッコラインの素材・構造解説は別ページに記載されており、次回紹介になります。

ホッパー組立中写真で、足と梁6本で5スパンです。 2軸貨車3両分強の長さで斜めに3個の砕石吐出口からどう積み込むのか良く解りません。 テーパー付き底中央に吐出口1個、貨車1両に吐出口2ヶ所から落とした方が綺麗に積めると思います。 その場合は吐出口と脚スパンの関係が設計課題になります、給炭塔の石炭吐出口を参考にしたいと思います。

普段まず見えない下から見上げた組立完成ホッパーです。 コレ見ると貨車には2軸/4軸があり、形式により長さも違うので、小振りな吐出口多数から臨機応変に積んでた様にも思えます。 作者は実物を参考に製作しており、見えないからと手抜きしたとは思えません。

細部仕様は設計図面引く時に考えるとして、細かい構造材を組み合わせたこの作品の造形は繊細さ・細密感と共に存在感が出てくる様です、ようやく懸案だった廃鉱跡地ストラクチャ製作の目途が立ちました。[続く] 


ではまた。

Hyper-G湖南仕様改修④さて次は

Hyper-G湖南仕様改修は、奥の手回路採用で蒸機常点灯問題解決の目途が立ちました。

【『Hyper-G湖南仕様改修①』より転載】
でもまだ4件の要改善点の③番が解決しただけ、今回は④番と②番の片付けを行います。


2.蒸機速度計表示不一致問題
元々この問題は個別改善不能な問題でした、しかし常点灯性能と密接な関係がありその改善によりほぼ解消すると予想してました、解説用にまず出力電圧特性変化を計測しました。

従来回路と奥の手回路はToffが異なるので出力電圧も異なり、その関係は上図の様になります。 横軸はコンパレータデューティー比で、Vcomp電圧と読み替えてもOKです。 19.5Ω負荷条件で、ショットキーダイオード追加により出力電圧が0.55V低下してます。

Hyper-G速度計は常点灯調整時0km/h表示、ノッチオンで上昇するVcomp電圧差を車種選択SWでギア比差を補正して表示してます。 常点灯調整は走行開始電圧から余裕を持たせる必要があり、ノッチオン時則発車でなく、速度計表示10km/h前後で走行開始します。

検収試験で問題のなかったキハ58で従来回路/奥の手海路の調整と表示を考えます。 従来回路常点灯1.0V、走行開始1.5Vで図示しました。 奥の手回路の場合は赤矢印に平行移動するだけで表示特性変化なし、変化するのは常点灯調整ダイアル目盛り位置だけです。

蒸機の従来回路は検収試験で常点灯可能範囲なし、当社再現試験で最小安定発振周波数ピンポイントですから余裕ゼロ、ノッチオン即走行開始し速度計も上昇します。 奥の手回路は最小安定発振周波数で十分な常点灯輝度が得られました。 ここでノッチオンすると一瞬間を置いて速度計表示10km/h前後で走行開始し、同一速度計表示電圧が0.55V下がります。

【生野駅夜景】
検収試験結果では25km/h表示時の蒸機感覚速度が45km/hでした。 この20km/h差が半分弱にはなりますが完全一致は??です。 0.55V差は19.5Ω、1M7連室内灯点灯負荷条件で、蒸機単行想定47Ω(0.24A)負荷では0.55Vが0.67Vになり感覚速度が一致する方向です。


コアレスモーター車の電圧vs速度特性は通常モーター車と異なっており、再検収試験で確認していただき、残念ながらコアレスモーター蒸機速度計を現状のLOCOモードで使用するか、1.4倍表示のEC/DCモードで使用するか選択してもらうしか方法がありません。


3.各ノッチ加速特性改修
要改善3点目は納入仕様のノッチ3-5が高加速で使い難く1・2で十分と言う内容でした。

納入仕様ベースは当社延伸線用4ノッチ仕様で、参考にE231系加速特性を記入してます。 E231系は仕様が3種あり、中距離運転線区用は2.7km/h/sec、30秒で81km/hの加速特性で、一番緩い傾斜ラインで示してます、ダッシュ力より省エネ重視です。 他に3km/h/sec、3.3km/h/secの仕様があり、一番高加速タイプは山手線等駅間距離が短く運転密度が高い線区用で30秒で99km/hの俊足です、一番急傾斜のラインで示してます。

送品仕様は4⇒5ノッチ化、出力高電圧化の変更に加え、安全性保証回路損失増加補償等様々な変更をしてます。 今回指摘を受けそのプロセスを詳細に追った処、ノッチ1・2がE231系換算値相当でベース仕様よりほぼ1ノッチ分高加速になっていたミスを発見しました。


蒸機が新型電車と同じ加速特性では実感を損ない要改修です。 加速率を低下するには最高出力電圧を下げる方法と、最高出力電圧到達時間を長くする方法があります。 お客様の『がおう☆』さん希望に従い後者を選択しました、何たって神様の声ですからね(笑)

速度制御回路のR63~R71の9本の抵抗か各ノッチ加速特性と惰行特性を決めてます、最小変更で最大効果と言うより手抜き策としてR67 33kΩを66kΩに変更する方法を選びました。 C51アルミ電解コンデンサ330μF充電で加速、放電で惰行とブレーキ特性が決まります。

R63~R66はマスコンロータリースイッチに実装されてます。 高機能基板に戻った場所にR67 33kΩ、そこからジャンパー線2本で330μFアルミ電解コンデンサに接続されてます。 図黒点線ジャンパー線を33kΩ抵抗に置き換えれば改修完了なので簡単です。

この変更で上表の様に加速特性は2/3弱から半分に低下し、一方で惰行時速度低下が少しゆっくりになります。 納入仕様はブレーキボリュームSWオン時458kΩ⇒82kΩに放電抵抗変化してますが、目立つ速度段付きが発生してないので問題ないと判断しました。

作図して視覚的に検証します。 ノッチ1はゆっくり加速になり、納入仕様ノッチ1は改修仕様ノッチ2.3相当に、ノッチ2はノッチ3.8相当に変化しました。 車種によりノッチ1-4(ノッチ5は急加速用)を使い分けられる特性に改善されました。 なお実車加速特性は本図上で直線になりますので、ノッチ2発車後2⇒3⇒4と進める操作法もあると思います。


残るは安全性保証回路非動作問題だけですが、これが結構厄介なのです。 再現実験含めて作戦を立案中です、もう少しお待ちください(滝汗)


ではまた。

Hyper-G湖南仕様改修③奥の手とは?

前回出力トランジスタToffを短縮する回路手段『奥の手』で蒸機常点灯性能が大幅に改善される様子を紹介しました、今回はその種明かしです。

【生野トンネル】
公開に当たり解説用に追加実験を行いましたが、お断りした様に100%の自信を持てないので推奨できません、採用の際は各自判断による自己責任でお願いします。 また専門的な質問をされてもここで公開した解釈以上はお答えできませんので、予めご了承ください。


★奥の手とは?
出典を再発見できませんでしたが、スイッチング電源研究論文に『Toffを更に短縮するには●●●が有効と言われている』の●●●とは、『コレクタ・ベース間にショットキーダイオード追加』と書いてあったのです。

前回改善効果を掲載した回路は、上図の様に出力トランジスタ2SA1359コレクタ・ベース間にショットキーダイオードBAT43を追加してます。 

低損失テープLED室内灯検討時に購入したBAT43の残りで実験しました。

【BAT43データシートより】
ショットキーダイオードはTR01/TR02のベース・エミッタ間やシリコンダイオード順電圧約0.7Vより順電圧が低く、BAT43は機内温度上昇込みの40-50℃、この用法の使用条件では0.2~0.3Vと低くなってます。


★従来回路の動作解説
奥の手回路の動作解説の前にオリジナル出力回路動作を復習します。

TR01オフ時はTR02ベース電流が流れないのでTR02もオフ、2個のトランジスタで構成される電子スイッチはオフで出力0Vです。

TR01オン時はR14/R13でベース電流22.5mAが流れTR02がオンします、TR02エミッタは電源電圧12V、ベースは0.7V低い11.3Vです。 出力コレクタはトランジスタが損失ゼロのスイッチなら12Vですが、コレクタ・エミッタ間電圧Vceだけ低い電圧になります。 Vceはベース電流Ibが大きくなれば小さくなり、コレクタ電流Icが大きくなれば大きくなります。

【2SA1359データシートより作図】
コレクタ・エミッタ間電圧Vceとコレクタ電流Icとの積がトランジスタの損失になり熱に変わります、Hyper-Gはベース電流22.5mA動作点を選択し、最大出力1.2A時の損失を0.84W、トランジスタ最大定格1.2W/50℃の70%にディレーティング(余裕30%)してます。


ベース電流Ibを増やせばVceが下がり損失も減るのですができない理由があります。 トランジスタはオンは簡単ですがオフに時間Toffが掛かる特性があり、ベース電流Ibを増やすと益々オフし難く、つまりToffが長くなるのです。 ピンポイントで動作点選択してます。

オフし難さは波形からも読み取れます。 TR01は黄矢印部でオフしてますが電圧12Vにならず11.3Vが横軸4目盛り2μsec続いてます、この間微小なベース電流が流れTR02はオフせずコレクタは12Vのまま、スイッチ切ってもすぐにオフしない不完全スイッチなのです。


★奥の手回路の動作解説
さて奥の手回路の動作解説ですが、論理明快にスパッと説明できません、Tr02オン時に各部を流れる電流で考えて行きます。

エミッタ電圧12V、ベース電圧11.3VなのでR13の電流は24mA固定、R14の電流1.5mAを引くと22.5mAになります。 従来回路ではこの22.5mAがベース電流Ibでしたが、奥の手回路ではIbとショットキーダイオード電流Isの和が22.5mAになります。 負荷電流Icが小さい時はベース電流が少なくて良いのでIsが大きく、Icが大きい時はIsが小さくなります。 IcによりVceが変化するのでIb/Isを計算式で求めるのは非常に困難です。


TR01がオンからオフする過程では、コレクタ・ベース間ショットキーダイオードが、エミッタ・ベース間0.7Vより低い順電圧なのでTR02を早くオフさせToffを短くしてます。

波形で説明するとショットキーダイオードの効果でTR01オフ時にオレンジ矢印部電圧をすぐに12VにしてTR02をオフさせToffを短縮してます。 見方を変えるとショットキーダイオードはTR02コレクタをベースより順電圧高い電圧にクリップする働きをしており、Vceを大きくし損失も増えます。 この損失増加すなわち発熱量増加を検証する必要があります。

計算で求めるのが困難なら現物確認が一番です、デューティー100%出力電圧最大で負荷470Ω/25mAと19.5Ω/0.6Aの2条件でショットキーダイオード有無によるVceを実測しました。 0.6AではVceが0.23Vから0.5Vへ増大、損失は0.14Wから0.3Wに増えてます。


最大負荷1.2AのトランジスタVceは0.7Vでコレクタとベース電圧が同じになるのでショットキーダイオードは非導通、ないのと同じです。 0.6A以上が図の実線になるか、点線の様に早く従来回路と同じになるか不明ですはが、トランジスタ最大損失は同じで許容内です。


★高速スイッチングダイオードを試してみた
トランジスタ損失増加は許容内でも発熱量増加は避けたいですし、出力電圧0.2~0.3V低下もできれば低く抑えたいのが本音です。 順電圧0.2~0.3V低損失ショットキーダイオードを使ったからで、順電圧0.4~0.5Vのダイオードがあれば良い処取りができそうです。

秋月で順電圧高目のショットキーダイオード探して手配する前に、手持ちの汎用高速スイッチングダイオードを試してみる事にしました。

【1N4148データシートより】
高速と言ってもシリコンダイオードなので使用域順電圧は0.55~0.69Vと高目ですが、TR02エミッタ。ベース順電圧より少しでも低ければ効果があるハズと追加実験しました。

実験結果は上図の通り効果ありました。 Toffが2.0μsecから1.0μsecになるだけでBAT43の0.5μsecには及びません、主目的の蒸機常点灯性能改善が不十分では意味がないので1N4148の実験はこれで打ち切りました。

【前号より転載】
その後秋月ショットキーダイオードを調べましたが、リードタイプで仕様を満たす品種はなくBAT43採用を決めました。 パルス幅1μsecを切る出力波形は何度見ても魅力的です。


ではまた。