Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

ユニジョイナー経年劣化問題その後➌

前回の続編です。

【本シリーズ表紙画像】
いきなり図面は味気なく表紙が必要、画像在庫も少なく使い回します。


3.計測結果に基づく考察
3-1.KATOレイアウトプランの検証
計測結果からフィーダー設置基準作成の為に、KATOレイアウトプランを検証します。

【KATOレイアウトプラン集】・・・前々号より転載
KATOレールセット組み合わせの全長約6mエンドレスレイアウトプランです。 ポイント2ヶ所は定位固定の直線、引込線を無視した単純エンドレスと考え、1電源1ヶ所給電です。

6番ポイント2個は186mm長、フィーダーレールS62Fと長さ合わせのS621本が62mm長の26本レールで構成され、エンドレス1周は5952mm、約6mです。 従って最大給電距離、フィーダーから一番遠い地点までのレール長は3mです。 目に見える姿はその通りで、全線フレキレールジョイナー半田付けなら良いのですが、ジョイナー接触抵抗が加わります。

レール26本でジョイナーも26ヶ所です、その接触抵抗をレール長換算すると、電気的なエンドレスレール長は2m近く長くなります。 そしてエンドレス1周給電抵抗は2.72Ω、最大給電抵抗は1.36Ωになりました。

具体的な編成例の消費電流については上記記事で解説してます。

【考察に使用する大消費電流列車】・・・2M12連室内灯点灯
消費電流の多い2M12連を選び、このレイアウトを走行させた場合、S62F給電点は12Vでも次第に速度(電圧)低下し、最遠点では10.65V/11.2%低下します。 単一電気区間で段付きなく徐々に変化するので感覚的違和感が少なく、KATOはヨシとしてるのでしょう。
結論-1:KATOレイアウトプランは負荷電流1A列車走行時、電源電圧が11.2%変動する。


3-2.KATOエンジニア情報の検証
KATOエンジニア情報から、KATOがどの程度の電圧低下&ギャップ電圧差までなら実用上問題ないと考えているかが解ります。

『最大給電距離4m』を8mエンドレス1ヶ所給電条件で数字に置き換えてみました。 最大給電抵抗は1.81Ω、前記列車走行時の電圧低下は1.79V/14.9%になります。 一般的用例、1M6-7連室内灯なし編成なら消費電流は330mA、電圧低下は0.6V/5%で1/3になります。 
結論-2:KATOは12V/1A列車走行時、連続的に変化する電圧低下を最大15%まで実用範囲と考えてる。(あくまで最大値、推奨レイアウトプランはマージン確保の11.2%)

『両渡線外側レールギャップなしは電圧降下抑制目的』の意味を考えます。 KATOレイアウトプランを単純化したオーバルエンドレスで、S248とS62をWX310に置き換えたので、全長が同じでジョイナーが1ヶ所少なく、電気的エンドレス長は7827mmになります。

また両渡線ギャップは一般的で全用法対応可能な、TOMIX同仕様の外側レールギャップ付きで考察します。 こうすると形はエンドレスでも両渡線で完全区分され、電気的に両端ポイント付き直線レール2本になります。 この複線エンドレスの給電点はどこでしょうか?

両渡線対角位置にフィーダー線路設置すれば、両渡線ギャップ両端電圧低下が等しくなり、ギャップ通過時速度変化が起こりませんが、一般ユーザーはこんな使い方まずしません。

このプランでは両渡線右側に待避線付き駅設置が普通で、電源位置はココ、フィーダー線路は必然的に配線に便利な両渡線隣になります。 すると電気的に両端ポイント付き直線レールの一端に近い位置からの給電になります。 両渡線ギャップ両端電圧低下はどうなる?

両渡線とフィーダー線路直結の場合、給電距離は両レール310mm/62mm各半分にジョイナー1ヶ所換算値75mmを足した262mm、逆方向が7565mmでアンバランスになり、12V/1A列車走行では両渡線ギャップ通過時に2.52V/21%電圧差でガクンと速度変化が発生します。


JR型車両走行お座敷運転&組立式レイアウトの複線エンドレスと相互乗り入れ両渡線はごく一般的用法、6-12連列車走行用エンドレス長6mも6畳間設置で一般的です。 そこで両渡線通過時に21%の電圧変化で速度変化が発生したら、ほぼ確実にクレームになるでしょう。

【通販メーカー製品紹介ページより】
そのクレームを解決には補助フィーダーが必要で、複線なのでフィーダー線路S62FX2本の追加購入が必要です。 S248置換の場合S186も2本(4本組販売)必要になります。

【通販メーカー製品紹介ページより】
補助フィーダー設置場所は多分駅区間反対側、S62F付属コードでは届かず延長コード2本が必要になります。

【通販メーカー製品紹介ページより】
更に2フィーダーをまとめて電源接続する分岐コネクターも2個必要、この説明受けたユーザー怒り出すでしょうね。 ユーザー負担を軽減し、クレームトラブルを避ける目的でKATOは両渡線外側レールギャップをなくし、電圧低下/速度変化を半分10%に抑えてます。
結論-3:KATOは12V/1A列車走行時、異なる電気区間電圧差を最大10%までと考えてる。


3-3.フィーダー設置基準前提条件の見直し
本シリーズを書き進める過程でフィーダー設置基準作成の前提条件見直しが必要と感じてました、コメントでもその指摘を受けてます。

【本シリーズ前号➋より転載】
電気区間境界電圧差1.5Vで問題が発覚し、1/3の0.5Vなら多分OKの感触に基づいた前提条件でした。 しかし電圧差は絶対値でなく変化率パーセントで考えるべき性格だからです。

問題発覚時試験運転列車は確かキハ58系5連、1M純正室内灯(キロ28は白熱球)装備で編成消費電流は12V/0.6A、計測は19.5Ω抵抗負荷で約6V/0.3Aで実施しました。 発覚時の1.5V差を比率換算すると25.6%、1/3の0.5Vは8.5%になり、KATO基準と近い値になります。


3-4.考察まとめ(1次)
計測結果に基づいて行ってきた考察のまとめです、1次としてるのはジョイナー接触抵抗経年変化要因検証が未実施だからです。

➊は直感的にご理解いただけると思います。 ➋は今回の考察で筆者が導き出した多少強引な推定で、重要なのはパーセントでなく、レール抵抗1.8Ω/1.2Ωの絶対値です。 特に多くのレイアウトが採用するキャブコンでは『給電レール抵抗1.2Ω以下』が重要な意味を持ちます。 ➌は前回計測結果、➍は今後明らかにすべき内容です。


ではまた。

ユニジョイナー経年劣化問題その後➋

前回の続編です。 従来線改修の為のユニトラックフィーダー設置基準、延伸線敷設の為のPecoフィーダー設置基準を明確にする確認実験です。

【問題発覚区間を往く夕焼け列車】
ブログネタにしなければ即実験開始で結果が得られますが、写真撮影だけでなく難しい電気関係理解には、頭の中の考えを図面化して説明する必要があり10倍近い時間を要します。 その積み重ねが電気関連過去記事アクセスが多い拙ブログの資産になってると思います。


1.実験計画立案
運転感覚的に電気区間境界部電圧差上限は0.5Vではないかと仮説を立てました。 では0.5Vになるのはユニトラック線路長・ジョイナー数幾つなのかを明らかにする実験を行います。

要素は二つありレール抵抗とジョイナー接触抵抗です。 新品時のジョイナー接触抵抗はほぼゼロと思われますが実験確認が必要です。 抵抗計るならテスター?、違います、趣味用テスターの100倍の精度が必要で、別の計測方法を工夫するしかありません。

ユニトラックは新品S248を2本接続し、一端に抵抗負荷、他端から電源供給します。 例えば負荷に1Aの電流を流したとすると、電圧計測➊-➋及び➌-➍の電圧差からレール抵抗が解ります、0.01V差なら10mΩ、レール抵抗は40.3mΩ/mになる訳です。 そして電圧計測➋-➌が同じであれば新品時のジョイナー接触抵抗は無視可能なほど小さいと解ります。

延伸線はジョイナー半田付け敷設(ポイント部除く)予定なので、コード55フレキレールのレール抵抗を計測します。 枕木埋め込みコード80はKATOと同じですが断面形状が異なりますし、使用金属導電率が同じとも限りません、個人的に結果がどうなるか楽しみです。


2.実験計測実施
2-1.ユニトラック
実験計画はS248で解説しましたが手元に未使用S248がありません。

未使用新品ユニトラックは、延伸線トンネル内敷設用の写真R315/45度とR348/45度高架橋レールだけで、コレ使って実験します。 曲線中心レール長は247.2mmでS248とほぼ同じ、レール端ワニ口クリップ接続なので230mmとして実験結果から抵抗値計算します。

実験用負荷には湖南電源改修で使用した10.8Ωを流用します。 筆者所有安物テスター抵抗計測モードは100mΩ分解能で10.75Ω-10.84Ωは10.8Ω表示です。 電圧計測モードでは小数点以下2桁10mVの分解能があります。 実験精度を向上させる為に電流1Aで計測します。

R315/45度2本を接続し一端に10.8Ω負荷を約10cmのワニ口クリップジャンパー線で接続しました。 ジャンパー線追加で表示が0.1Ω増え10.9Ωになりました。 ジャンパー線抵抗があるのは確かですが、0.1Ωかどうか、0.02Ωなのか0.15Ωなのかは解りません。 なおこの実験中負荷抵抗は10.8Wのヒーター発熱するので木製台上に置いてあります。

テスターを直流電圧計測モードに切り替え、レール反対端に電源接続し、抵抗両端電圧が10.91V、つまりV=IR(オームの法則)で電流1Aに調整し、ダイアルを固定します。

テスターを約230mm離れた1本目レール終端部に接続して電圧計測すると10.99V、0.08V上昇してました。 負荷電流1A時にR315/45度レールの行き帰りで0.08Vの抵抗損失です。

今度はジョイナー反対側、2本目レール端の電圧計測しました、前の計測点との距離は約20mm、ユニジョイナーが間にあります。 0.03V上昇し11.02Vになりました、計測不能と考えてたユニジョイナー接触抵抗が1Aの試験条件では安物テスターで検出できました。

最後に更に約230mm離れた電源給電点電圧を計測すると、1本目レールと同じく0.08V高い11.10Vでした。 計測には当社開業時に購入したKATOハイパーDを使用してます。 こうすれば計測可能と行った実験ですが結果に驚いてます、予想以上に抵抗が大きいのです。


◆ユニトラック計測結果まとめ
未使用ユニトラック初期値の計測が終わり、この結果からレール抵抗とジョイナー接触抵抗を算出し、フィーダー設置基準作成基礎情報にします。

負荷電流1A時に230mm離れたレール間の電圧差は2本共0.08Vで計測結果は信用できそうです。 ただし分解能が小数点以下2桁なので真値に幅があり、計算結果の中央値345mΩ/mを採用します、誤差±5%程度です。

未使用品では無理と思えたジョイナー接触抵抗が計測できましたが、計測機性能不足で真値0.017V~0.026Vの幅があり誤差が大きくなってしまいました、またジョイナー接触抵抗は1ヶ所レール何mm分と換算した方が解り易く、フィーダー設置基準考える際に便利です。


計測結果をレール抵抗345mΩ/mでレール長に換算すると49-75mmになります。 ジョイナー接触抵抗は挿抜で増える事はあっても減る事はまずありませんので、ジョイナー1ヶ所を最大値であるレール長75mmに換算して以降の検討を進める事にします。 別途確認しますが当社従来線では、ジョイナー接触抵抗が初期値の数倍に増加してると考えられます。


2-2.Pecoフレキレール
同じ実験セット使うので、引き続き手持ち未使用品Pecoフレキレールを計測しました。

10.90Vに合わせたかったのですが調整微妙でこれが限界、10.92Vでダイアル固定です。

Pecoフレキレール全長915mmなので、前の計測点とは約900mm離れてます。 計測結果は0.31V高い11.23Vでした。

この計測結果からPecoフレキレール抵抗を計算すると計算値344.4でKATOユニトラックと同等でした。 同材質なら断面形状違っても断面積が同じならレール抵抗も同じになる道理で驚く事ではありません。


さて、今回の実験で得られたデータをごう解釈し最終的にフィーダー設置基準にまとめてゆくかがこれからの課題です。 結構難しそうです。


ではまた。

ユニジョイナー経年劣化問題その後➊

今年春に発覚したユニジョイナー経年劣化問題のその後です。 敷設8年の従来線にどう対策するか悩み、暫定対策を実施しても効果不十分でした。 一番確実なジョイナー半田付けは実施不能、大工事になる補助フィーダー追加にも施工の基礎データが何もありません。

【拙ブログ2021年4月3日更新】
問題発覚時に『がおう☆』さんに納入したHyper-G湖南仕様検収試験で問題が発生して改修が必要になり、そちらを優先した結果半年間検討を先送りするしかありませんでした。

【上記記事より転載】
接触抵抗増加しても通電不良は発生しておらずKATO信頼性設計の問題ではありません。 ジョイナー接触抵抗への筆者配慮不足が原因で、使用条件が過酷過ぎました。 まず全体の半分に20年以上前に購入したユニトラックをそのまま流用して敷設してます。 ジョイナー新品交換の発想さえなく、お座敷運転挿抜で初期値が新品より劣ってたと思われます。

そこに道床/レール/ジョイナー塗装、吹付ならまだしも筆塗でタップリ塗料が浸み込んだでしょう。 更にバラスト固着ボンド水、良くこれまで持ったとも言え、何らかの電気的リニューアル工事が必要と判断しました。


◆暫定対策
問題発覚直後に行った暫定対策について説明します。

ユニトラックジョイナーはプラ製ジョイナーカバーに収納されており、接続状態では相互の道床凹部に嵌まり込んでます。 従来線はこの状態に塗装とバラスト撒布してあります。

レイアウト敷設状態でもマイナス時計ドライバーでこの様にジョイナーを押し、レールとの密着度を向上させる事が可能です。 鑑賞方向から実施すると塗装剥がれ懸念があるので、問題発覚区間全てのジョイナーに対し非鑑賞方向から両レールにこの措置を行いました。

その後ジョイナー隙間から接点復活剤をシュッと一吹き、これで問題ないレベルに改善し、数年は大丈夫と目論んだのですが、期待値の半分ほどの効果しかありませんでした。 従来線のリニューアル、及び延伸線フィーダー設置仕様を決める為に基礎データが必要です。


◆KATOフィーダー設置推奨条件
従来線は『電気区間最大給電距離3m未満』の設計条件で敷設しました。

【前出記事より転載】
駅間距離が短い生野-中山平間は給電距離2.8mと1.8mの位置にフィーダー線路S62Fを設置し、他の2駅間は約9mと長いので給電距離3m未満になる2ヶ所にS62Fを設置しました。 その後、KATO推奨条件が最大4m未満と知り安心したのですが、この情報をどこで得たのか解らずKATO HPを確認しました。 しかし、どこにも掲載されてません。

【30年前のKATO総合カタログ】
所持する昔の総合カタログにも載ってません、小文字で見落とした可能性有りますがね。 で、『多分あの時』と思い当たる事がありました。

敷設完了後の通電試験で笠松信号所でショート事故が発生し、調べたら両渡線外側レールにあるハズのギャップがなく、スイッチバックで別電気区間にすると当然ショートします。 なおTOMIXはギャップ付きですがクロス部無電区間で低速通過不能です。 余談さて置き、KATO相談窓口に電話し、技術的質問したいとエンジニアと話させてもらいました。

8年前ですがQA1-3は間違いありません、その際4・5をついでに確認したのだと思います。

【KATO総合カタログより】
カタログ掲載のお座敷レイアウトプランです。 エンドレス全長約6mでフィーダー1ヶ所、一番遠い場所の給電距離が3m、なるほど最大給電距離4mからマージン持たせてます。

【同上】
こちらも同じレールセットの6mエンドレスプランですが、ポイント2個を待避線使用してます。 この図面のフィーダー位置不適正です、ポイント外側レールは電気的エンドレスですが、内側レールにギャップがあり、給電距離が一方0.2m他方6mになるからです。 それにより速度段差が出る可能性があります。 適正位置は両ポイントからほぼ等距離のエンドレス中央部です。 このプラン集見てたらトンデモナイ記載がありました。

最新カタログに同様記載あるかどうか知りませんが、『なじませツナギ』1-2mm差なら解りますが、10-20mm差をレールやジョイナーに負担掛けて強引に繋ぐ方法です。 KATOにチョッとガッカリさせられました。


◆最大給電距離が意味する事
最大給電距離は何で決まるのかと考えてみました。 KATOから聞いた4m(マージン込3m?)の電気的・使用感覚的な意味です。

ユニトラックはキャブコントロールの両ギャップレイアウト組込用途も含めて設計されてます、最大給電距離4mとした極端な例です。 1周16mエンドレスを半分に2ギャップで区分し、各電気区間中央にフィーダー設置した例です。 ギャップ両側の給電距離が等しいので速度差は発生せず、フィーダーからの距離による速度低下が気にならなければOKです。

もう一つの極端な例です、1周8mエンドレスを半分に2ギャップで区分し、各電気区間終端にフィーダー設置した例です。 ギャップ両側の給電距離は一方が30mm他方が4mでレール/ジョイナー抵抗による電圧差が生じます。 速度差が気にならなければOKですが・・・。


ではどの程度の電圧差ならギャップ通過時速度差が感覚的に気にならないのでしょうか? 問題発覚時は1.5Vでした、1Vでも気付いたと思えるのでNG、でも0.5Vなら『ポイント通過時に少し速度変化?』程度と思われ、許容限0.4-0.5Vの様です、今後それを調べます。


ではまた。