Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

ユニジョイナー経年劣化問題その後❿

今回は新品レールで敷設し、塗装/バラスト撒布してないトンネル内区間のジョイナー接触抵抗劣化を計測し、塗料やボンド水の影響がどの程度あったのかを明らかにします。

【本シリーズ表紙画像】


4-6.塗装/バラスト撒布影響度の調査
対象となるトンネル内区間はレイアウト南北に位置し、天井が低く作業困難な場所にあります。 作業開始前にまず前回の後始末です。


◆ジョイナー半田付け部の補修
電気的補修は完了しても外観補修はまだです。

彫刻刀でジョイナーカバーを掘った半田付け箇所は、酷い外観です。

半田コテ熱で前後のレール塗装もダメージを受けてるので、面相筆でフラットアース塗装しました。 表面に出ませんが半田も塗ってます。

KATOブラウンバラストを撒布し絵筆で形状成形、ボンド水溶液スポイト滴下して乾燥の工程です。 撮影前に掃除機で余分吸い取ったら少し凹みが、ボンドが薄かった様です。


◆計測-9
計測区間何処にするか迷い、選んだのは一番作業容易で見せたくない場所になりました。

良く言えば『余剰品の効率利用』、実際の処『単なるケチ』なのですが、中山平から東基台北側を30年前R315で半周し斜めに横断して複線状に沿わす部分の寸法合わせに、S29必要で購入した端数レール余りのS45.5x2本を含む5本の短いレールで敷設してあります。


4番ポイント付属のS64も大量に余り、勿体ない精神で各所に使用してます。 ジョイナー接触抵抗ある事は理解してても、これほど大きいとも経年劣化するとも全く思わず、上手く余剰レール活かせたと喜んでました。 720mmの計測区間に何とジョイナー6ヶ所です。

ショート点はS248のトンネル入り口付近、レール天面を磨き塗料皿と重しを置きます。

トンネル内を延伸線側から見るとこんな具合、ここから手を差し入れてレールクリーニングしてました。 トンネル出口の塗料皿が見えてます。

計測点レールにテスター接続すると計測値は安定して0.11Ωでした。

ところが0.11Ωは約3.2m相当、6ヶ所ジョイナーで実レール長の4.4倍です。 ジョイナー劣化度計算結果5.5倍!、塗装/バラスト撒布区間より大きいのは変で何かミスがあります。 結局テスターワニ口クリップを咥え主に接触してたレール側面の接触抵抗でした。


この計測失敗から。
➊N用洋白レールは走行電流が流れる天面も汚れるが側面も汚れる。
➋レール側面クリーニング不要だが、中古レール使用時はジョイナー交換と同時にジョイナー篏合部レールを磨かないと接触抵抗が大きくなる。

レール側面を念入りに磨いて再計測、結果は0.3Ω低い0.8Ωになりました。 そう言えばレールクリーニングして1周走らせて1ヶ月放置すると、再度レールクリーニングしないとスムースに走行しません。 このレール素材は非通電常温放置でも通電性が悪化する様です。

再計測結果からジョイナー接触抵抗劣化度計算すると3.56倍になりました。 3.56の小数点以下に意味はなく3倍強で、どうやら塗装/バラスト撒布による水分影響はなさそうです。 でもこれで結論付けるのは情報発信者として少々乱暴、追加計測する事にしました。


今度は高精度な電圧変換抵抗値計測をしますが、この区間では無理です。 抵抗接続は畑使って何とかできても、給電点と屋根裏区画が異なりテスターで電圧合わせ込みができない事に加え、測定精度確保にはレール塗装を完全に剥がし磨き上げる必要があるからです。

計測場所は西基台北側のダブルループ線トンネル内、S348/45度高架レール6本で敷設した270度カーブ区間です。 400x450mm点検口がありますが、基台面から天井まで350mmしかない狭いスペースです。

レイアウト入口から計測場所を見た構図です。 床マットから基台台枠まで330mm、仰向けに手摺で体を支持し滑り込む空間です。 峡谷奥背景用補助照明を設置してあります。 Hyper-Dを床面に置きフィーダー線をテープで仮止め、補助照明使用して撮影しました。

精度10倍の電圧変換抵抗値計測なので測定誤差を除去する為、抵抗接続点と給電点のレール側面/天面をウェスに研磨剤を薄く塗って良く磨き、レールに残ると走行車両に悪影響が出るので、別のウェスに無水エタノールを浸して良く拭き取りました。

計測区間隣のS124高架レールに木片を置いて10.9Ω抵抗をセットし、計測区間R348に接続ました。 書けばコレだけ、やるのは地獄でした。

給電点にHyper-Dフィーダーを接続、手探りでダイアル回し10.90Vに合わせました。 三脚使えず、液晶画面も見えないので片手持ち山勘撮影で10枚ほど、使えるのがありました。

給電側電圧計測結果は11.95Vでした、電流1Aで1.05V差、つまり計測区間給電抵抗は1.05Ωです。 こちらも手持ち山勘撮影で、照明は補助照明を目一杯捩ってようやく明るくなる程度、シャッター速度が遅くなり手振ればかり、何とか使えるのは1枚だけでした。

計測値からジョイナー接触抵抗劣化度を算出すると3.12倍になりました。 笠松信号所下トンネル内抵抗値直接計測法の3.56倍より低い数値ですが信頼度はコチラが高く、8年経過で塗装/バラスト撒布なしでも3倍強の劣化度、水分の影響はほとんどない様です。


ちなみに3.12倍を笠松信号所下トンネル内区間に適用して計算すると0.733Ω、1桁表示で0.8Ωでしたのでまあまあです。 テスターワニ口クリップ部を研磨剤で磨き直せば0.7Ωになるかもしれず、塗料皿ショート接触抵抗が0.02Ωあればやはり0.8Ω表示です、概算値を知る簡便法と割り切ってます。 兎に角面倒な計測完了してホッと一息です。


ではまた。

ユニジョイナー経年劣化問題その後➒

前回本シリーズの発端となった速度段差異常現象は、ジョイナー経年劣化ではなく、特定箇所の接触不良が主因と言う意外な事実が判明しました。

【本シリーズ表紙画像】


5.ジョイナー接触不良箇所の修復
4-6.項として、塗装/バラスト撒布なし新品レール敷設8年後のジョイナー接触抵抗劣化度計測を予定してましたが、特定箇所不良が発見されたので、その修復を優先させます。


5-1.修復法-1
接触不良ジョイナーが特定できたので、新品交換が一番ですができない事情があります。

【問題箇所付近】
原因除去の正攻法ですが、S62Fジョイナー交換には最低両側6番ポイントとR718、場合によってはR481まで一旦ベースコルクシートから引き剥がさなくてはなりません。 S62F部の踏切も撤去、道床肩部両面テープバラストもやり直しの大工事になるからです。 敷設時と異なり手前ストラクチャ類も設置済、自信も気力もなくこの修復法は採用できません。


5-2.修復法-2
生野-中山平間補助フィーダー設置、その場所が接触不良箇所発見で条件変化しました。

追加フィーダー設置するなら給電距離をほぼ均一にする観点から、現フィーダーから約2m中山平寄りのキハ52位置付近が最適です。 レール面から約70mm下の基台裏までフィーダー線をどう通過させるか大きな課題でした。 でも特定箇所不良なら話は変ります。

前回不良箇所発見の為レール1本毎に計測した経過を省略しましたが、南基台南端直線部で1.8Ωでした。 ショート点の先電気区間端までに4番ポイントとS60レールがありますが、ここから給電すれば上限値2.4Ω以内に収まります。 接触不良箇所は放置の選択肢です。

【南基台南部】
ただしこの直線はS64x2なのでS62Fは使えません。 S64間ジョイナーカバーを使わずにジョイナー裏にフィーダー線半田付けし隙間を埋める工法になります。 両側R348の引き剥がしと補修は必要ですが、周囲に壊し易い邪魔物がなく何とか実施可能だと思います。

【線路敷設中の南基台】
またこの部分は築堤になるので、左手木製50mmブロック嵩上げでなく台形足と集成材路盤なので、フィーダー線は路盤に穴を空け、背景板下から奥へ逃がす事が可能で、狭い場所に潜り込んでの作業になりますが実施可能です。 これやる前に修復法-3の実施確認です。


5-3.修復法-3実施と確認計測
修復法-1は実施不能、修復法-2は接触不良箇所放置です、でも発見して放置は気持が晴れません。 不良箇所が手前側なら半田付け修復可能ではないかと強引にやってみました。

彫刻刀平刃と小丸刃で問題箇所のジョイナーカバーを切除しジョイナーが見える状態にしました、外観上接触不良の要因は見当たりません。 小型時計ドライバー先端で塗料や汚れを落とした後、穴を掘ったのでレール下側を中心にタップリと半田を流しました。

修復法-3実施で補修前3.1Ωの計測値がどうなるか確認しました、計測結果は2.3Ω、接触不良時より0.8Ω改善し隣のR718と同じ値です。

【前号より転載】
2.3Ωの計測結果は当然で、前回この計測からジョイナー半田付けし片側レール計測点が20mm移動しただけだからです。 次にこの電気区間境界までの給電抵抗を計測します。

ショート点を電気区間端の中山平入口ポイント先のS60に変更します、レール長約180mm延長、ジョイナー2ヶ所レール長換算値約450mmと合わせ理論値0.22Ω増加、更にポイント内部スイッチ接触抵抗(初期値0.12Ω、反対側計測の推定値0.16-0.17Ω)が加わります。

計測結果は2.7Ω、上限値2.4Ω超えて追加フィーダー必要?、それがそうではないのです。 甘い上限値を更に甘くする訳ではありません、フィーダー配線抵抗の助けがあるのです。


5-4.フィーダー配線抵抗
問題箇所電気区間フィーダーと次電気区間中山平1番線フィーダーまでのフィーダー線長さはかなり違います。 前者はフィーダーセレクターから近く、後者は基台下を半周し約3m長くなってます。 3A容量配線を使用してますが配線抵抗ゼロではありません。

フィーダー配線抵抗計測の為、抜いてある電源供給ジャック左CHフィーダー側メスのカバーを外し、テスターを接続します。

ジョイナー半田付けしたS62Fを塗料皿でショートします。

ON-OFF-ON 3ポジション構内線切替SWは中立OFF、ON-ON 2ポジション本線切替SWは生野-中山平間のみ左CH、他は右CHにします。 これで接続されてるのは問題区間だけです。

計測結果は0.3Ω、計測点からフィーダーセレクターまで約0.6m、トグルSWを介してその先約1.7m、S62F内コネクタ接触抵抗込みで0.3Ω、0.1Ω/m強は納得できる計測結果です。

問題電気区間端S60の隣が中山平1番線フィーダーS62Fで、ここをショートしました。

フィーダーセレクターを中山平1番線のみ左CH接続に切り替えます。

計測結果は0.3Ω増えて0.6Ω、約0.1Ω/mの配線抵抗です。 問題電気区間給電抵抗は2.7Ωですが、電気区間境界ではフィーダー配線抵抗差0.3Ωにより2.4Ω差で上限値クリアです。

【本シリーズ➎より転載】
中山平反対側フィーダーから電気区間端までの給電抵抗は2.4Ωでした。 このフィーダーと隣接の中山平2番線フィーダー配線長はほぼ同一で電気区間境界部給電抵抗差は2.4Ωです。 反対側と同じ上限値2.4ΩになったのでOKとします。 まっ、手抜きのズボラですがね。


ではまた。

ユニジョイナー経年劣化問題その後➑

問題発覚時の計測法に疑問を感じ、追加フィーダー設置場所検討を兼ねて検証しました。

【本シリーズ表紙画像】
【本シリーズ表紙画像】


◆祭りの後
生来の慌て者が目を悪くして遠近感が狂ったら鬼に金棒(笑)、かなりの被害発生です。

中山平ではテスタークリップ押し当て点近くの貨物側線接触限界標が根元からポキリ、1mmプラ角棒製なので折った意識さえありませんでした。

生野駅4番線では最終的なクリップ咥え計測前に、ホーム側レールにクリップきちんと当て計測値安定させ様とホーム上電柱ポキリ、跨線橋壊さなくて良かったとしてます(涙)


4-5.問題発覚時計測値の検証
今回の一連の計測は以下2方法で実施してます。
➊抵抗値直接計測
計測は簡単だが有効桁数が少なく概略値しか解らない、また微小抵抗は計測不能。
➋電圧変換抵抗値計測
抵抗10.9Ωに電流1A以上流し、計測区間の電圧低下から抵抗値算出、計測が大仕事。

【問題発覚時記事より転載】
問題発覚時の計測はこのどちらでもありません。 抵抗19.5Ω、電流0.22Aで基本的には➋電圧変換抵抗値計測なのですが、レール磨きなしでワニ口クリップ接続で接触抵抗配慮をしてません。 給電距離算出も概算値、負荷抵抗接続点と計測点が30-40mm離れてます。

【問題発覚時記事より転載】
計測結果まとめにはジョイナー接触抵抗レール長換算値の概念が入ってません。 従ってジョイナー接触抵抗劣化は一様でなく、場所によりバラバラだと思ってました。 レール塗装/バラスト撒布区間の経時変化がほぼ均一と解りましたので、新計測法で検証します。


◆計測-8
問題発生区間は長くジョイナー数も多いので➊抵抗値直接計測します。

お馴染み塗料皿と重しのブレディッドファイバーボトルを、電気区間端中山平駅入口ポイント隣のS64天面を磨いてセットしてショートしました。 ショート材には0.5t真鍮板も試しましたが鉄製塗料皿の方が計測値が安定します、底面の緩いRで接触面積が広い様です。

生野駅入口踏切部S62F天面と肩を磨いてテスターワニ口クリップを咥えましたが計測値が全く安定しません、3-6Ωの間でパラパラします。 クリップ咥え方が悪いのか、塗料皿ショートが上手くできてないのか色々確認し、ようやく安定した計測値が3.1Ωでした。 かなり甘めに設定した上限2.4Ωの1.3倍で、補助フィーダー設置必至の値です。

使用曲線レール半径/角度からレール長を正確に計算して加算すると、計測区間実レール長は2.76mになりました。 3.1Ωは約9m相当、ジョイナー接触抵抗で3倍強です。 この計測結果からジョイナー劣化度計算すると4.93倍、均一劣化の前回結論と大きく矛盾します。

そこでS62Fから1mショート位置に近い小川のプレートガーダー橋で中間計測しました。 レール塗装してない(できなかった)ので側面も磨き安定計測可能だからです。 ここでは計測値不安定現象は発生せず1.4Ωでした、1/3強移動で半分以下!、何か変です。

この区間のジョイナー数は10ヶ所、ジョイナー接触抵抗劣化度は約3.1倍で、これまで3回の計測結果と整合します。 つまりここからS62Fの間に異常個所がある事を意味してます。 途中経過省略しますがレール1本毎S62F側へ計測繰り返し徐々に計測値が増加しました。

そしてついにS62F隣R718のS62側、計測区間20mm短い位置で信じられない事が起こりました。 計測値は安定し2.3Ω、ジョイナー接続されたS62Fと0.8Ω差、ここだけでレール2.3m分です。 給電するS62Fから最初のジョイナーが異常値を示してるのです。

再度S62Fで計測すると計測値不安定現象が発生し3-6Ω、安定した計測値は最初と同じ3.1Ωでした。 この場所のジョイナーが接触不良を起こしてるのは間違いありません。

S62F/R718ジョイナー反対側、計測区間わずか20mm差で算出したジョイナー接触抵抗劣化度は約3.3倍、抵抗値直接計測した他区間と計測精度から同一と考える事ができます。


◆接触不良ジョイナーの特定
S62F/R718間ジョイナーのどちら側が接触不良か計測で特定します。

R718計測値2.3Ωの状態からカーブ内側レールテスターワニ口クリップを20mmS62F側に移動すると2.3Ωが3.0Ωに一気に0.7Ω増加しました。

次にカーブ外側レールテスターワニ口クリップを20mmS62F側に移動すると2.3Ωは変化せず、内側レールジョイナー接触不良と解りました。


片側レールだけ20mmジョイナー反対側に移動した場合の抵抗値増加理論値は0.05Ωで、例えば異常側は3.03Ω⇒3.08Ωでテスター表示に0.1Ω差が出ますが、正常側は2.28Ω⇒2.33Ωで差が出なかったと考えられます。

手前側が接触不良です。 ユニトラックはジョイナー乗り上げ組み可能ですが、車両走行に影響が出るのですぐ解ります、また正常組みでも指で触ると0.1mm程度段差が出る欠点があります。 この場所では正常側にわずかな段差があり疑いましたが、結果は逆でした。


ジョイナー乗り上げ組みの初歩的ミスはありません、キチンと組んで5年正常8年目接触不良の事実から『腐食』『錆』を思い浮かべました。 百数十本の既製品レール、二百数十ヶ所のジョイナーで多分ただ1ヶ所発生した問題で、初期的な要因の可能性大だと思います。

【ユニジョイナー 左30年前品、右現行品】
30年前レール敷設と新品購入敷設のジョイナー仕様が異なります。 30年前品は銅系素材の赤金色で、この種の製品の想定寿命15-20年を大きく越えた使用に耐えてるのだから大した物です。 いつ変更されたか知らず、目的が性能向上かコストダウンかは解りません。


現行品はシルバーで素材不明、表面メッキ処理してる様に見えます。 この表面処理不良で水分侵入し腐食が進み接触抵抗増大したのではないかが、何の根拠もない筆者推論です。

しかし、低確率で発生する問題が当社で発生しなければ本シリーズは存在せず、同様な問題で悩む同好の方々へ情報提供もできなかった訳で、ラッキーだったかもしれません。

【またもや被害者】
問題箇所の近くに設置してあったハザ棒小屋がテスター配線が引っ掛かり剥がれてしまいました。 本体損傷ない様なので、一連の作業終了後に再接着修復します。 それにしても今回の結果には驚きました、外観で全く解らない部分で劣化が進行してたとは!です。


ではまた。