Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

露太本線の水田風景

前回灌漑用水や水田設備、平坦な土地はほとんどないなど筆者風景製作の考え方を述べました。 じゃ露太本線の水田はどうなってる?、当然の疑問です。 これまで顔出ししてますが、今回は水田に焦点を絞り、新撮写真中心に紹介します。 その前に、


★圃場整備とは?
聞き慣れない難解な言葉を使ったので補足説明します、『ほじょう』と読みます。

【農水省地域振興局資料より】
圃場整備とは「農業生産性向上」「水環境整備による防災」等を目的とし、「耕作権利交換による農地大規模化」「水路整備」「農道整備」等を含む大規模な「農地改革プロジェクト」です。 農水省所管で昭和40年頃から形を変え継続実施されてます。

【同上】
減反政策と同時進行だったので、水田の畑作転換を容易にする技術も導入されてます。 収穫後に着工、翌々年春完成の約1年半工期で、1年間休耕し助成金が支給されます。


では本題に戻ります。

露太本線には実景で解説した取水堰や用水路はありません。 上記材料で製作し、給水/排水路、給水口/排水口、車両乗り入れ口を設置してます。 畔は2x10mm材で試作し、浅過ぎたので実測し3mmに変更しました。 田植後ならば2mmでOKだと思います。

【段々畑ならぬ段々水田】
本線が築堤上を走るレイアウト南部は、傾斜地に屈曲した農道が通り、その両側に7枚の水田と畑が1枚あります。 給水/排水路は農道奥を右から左へ流れてます。

【従来線南部設計図】
着工当時の設計図です、製作過程で農道位置と屈曲点を変更し、水田を当時らしく小さく地形に合わせて異形にし、農道手前に水田2枚と畑を追加しました。

視点を下げると水田面標高差が良く解ります。 水田間段差は一定でなく、農道の勾配も場所により変化してます。 粉砕した稲わらが積まれた右の畑は水田にできないから畑になった土地で、この角度から見ると右奥から左手前へ傾いているのが解ります。

追加した農道手前の2枚の水田へは、農道下を横切るコの字型の分岐給水/排水路で水の出し入れをしてます。 手前右の水田には耕運機しか通れない幅の狭い渡し板の乗り入れ口がありますが、左の水田は野小屋側から乗り入れ可能なのでありません。

3mm角材製の渡り板、給水/排水口には赤や黄色の水止め板を入れてあります。 上の水田の排水口はパイプ式です、水田内側の排水口は手抜きになってます(汗)

軽トラ作業中水田の乗り入れ口は、水路にフタをして石組み土盛りしたタイプで、排水口はここもパイプ式です。 お隣の水田乗り入れ渡し板はかなりの急傾斜になってます。

水田を潤した給水/排水路は、その水源となった水系の下流で元へ戻ります。 生野は峠の登り口、中山平方は穀倉地帯守屋盆地の想定なので、川を渡った先にも水田風景が続きます。 17枚の水田全てがこの2駅間にあります。

【平野の水田群】
川のこちら側は本線両側が水田で、上に3枚、下に4枚あります。 給水/排水路の水源はお寺脇の小さな沢の想定で、農家前のマスから左へ、鎮守様前で下に向きを変え、踏切下を潜って水門で右と下に分岐して流れる地形になってます。

【従来線南東部設計図】
当初設計6枚に異形水田1枚を追加し、自然な地形にする為に水流方向と水門位置を変えました、また製作過程でアクセントとして鎮守様を追加してます。 畑標高表示にh14-16等とある様に、畑は地形に合わせて傾斜してます。

【分岐給水路は農道下を横切り反対側の水田へ】
給水/排水路分岐点に水門を設けました。 農閑期なので水門は閉まり、水量はごくわずかです。 拙い工作ですが雰囲気演出小物としては十分だと思ってます。

【左から右へ傾斜が強くなる自然地形】
低目線で見ると道路も畑も鎮守様境内も全て傾斜してます、その中に人工的な農家敷地、水田、鉄路が異なる高さで水平にあり、その段差を堤や石垣が繋いでます。 筆者の狙いは、これといった特徴がないありふれた、でも何処かで見た事がある風景です。

最後の水田3枚は中山平駅裏にあります。 貧乏旅時代、駅名も忘れた奥羽本線の小さな駅待合室でカエルの大合唱を聞いた原体験がこの風景製作の動機になってます。

【従来線北東部設計図】
設計時より水田サイズを小さ目に、農家位置と道路位置を左に寄せています、ビニールハウスと畑もバランスを見て入れ替えました。 こちら側の畑も山側から傾いています。

左の水田の排水口と右の水田の給水口のアップです。 フィールドグラスの滓が写ってますね、撮影時に見えないのだから困ります、掃除しなくっちゃ。

農家から中山平駅裏へ向かう道の角に、水田への急カーブ急傾斜の下り口があり、ホーム裏手から乗り入れる配置になってます。

【水平なのはホームと建物と引上線だけ
以上、露太本線の水田を紹介しました、筆者の風景設計は線路から発想せず自然地形から発想し、田畑が拓かれ、一番最後に鉄道が敷設されたと考えて行っています。


でも鉄道模型愛好家は車両が好き、走らせるのが好きが当前です、線路からの発想を否定する気は全くありません。 自然地形から発想し、堤の傾斜角までこだわり、水田をこんなに作ったレイアウト製作者は筆者と『ぎっしゃ』さんくらい、圧倒的な少数派です。

【地形に沿って登り下る道】
キハが通過する踏切から鎮守様まで緩やかに登り、狭い農道を左折して傾斜を強め野小屋の角を曲ります。 軽トラが渡った橋付近が最も急で8%、次第に傾斜を緩め笠松信号所まで標高差110mmを登ります。 そこから今度は中山平へ110mm下ります。


製作者の都合でなく自然地形を優先すると、結果的にウネウネした道になります。 当時から都会では自然をねじ伏せた風景がそこかしこに見られましたが、田園風景は自然共存型だったと考えてます。 今回は当社コンセプトを改めて紹介する形になりました。 


ではまた。

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