Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

水田って軽く扱われてませんか?

筆者が訪問するのはほぼレイアウト製作ブログに限られます。 趣味の世界なのでこだわり方も各人各様で面白く、「ハーッ」とか「フーッ」と溜息まじりに拝見してます。


昔は現役蒸機製作年/工場による差異や動輪径/使用蒸気圧/軸重を諳んじてる車両派でしたが、レイアウト製作復帰後に風景に嵌ると車両への興味を喪失し、JRキハXXのン千番台なんて何が違うのかサッパリ、車両は風景を彩る動く小道具に格下げになりました。

【JAM2017 宮下洋一作品展より】
風景の中でも「街並」や「山河」の様に明確な形ある物は、参考にすべき秀作をしばしば目にしますが、日本の原風景水田となるとその地位は非常に低く、ややもすると畑と共に空きスペースや建物配置で走行車両が見えなくなるコーナー埋め草的に扱われてます。


例えば同じ高さで複数枚水田を並べてませんか?、コレ有り得ない風景なんです。 地位の低さ、興味の薄さ、知識不足、いずれか解りませんがレイアウト界で継子扱いされてる水田の地位向上を図りたく、農村風景観察者の視点で少々書いてみます。

【水田が広がる風景:春】・・・散歩道より
水田は文字通り水と切っても切れない関係にあり、水を張り苗を植えれば育つ訳ではありません。 着床までや寒冷時は深く、一方土中のガス抜きに水を抜く事もあり、こまめな水位管理の為に用水路だけでなく給水路/排水路とその出入口を必ず備えてます。


1.取水堰と用水路
自然の河川は一番低い土地を流れるので、そのまま灌漑用水として使える事は稀です。 地元の郷土史を紐解くと江戸中期に『せぎ』と呼ばれる用水路が15本開鑿されて以降、広大な八ヶ岳の裾野が緑豊かな水田地帯に様変わりしたとあります。

そんな用水路始点となる取水堰の一つです。 堰堤や水門等大掛かりな施設は何もなく、川の上流に石積みして分流し、左下の用水路に流し込むだけの簡素な造りです。

取水点から100m下ると、用水路をコンパネで仕切り、用水の大部分を左下の源流へ落してました。 溜まった落葉やゴミは用水が大量に必要になる来春農繁期前に、水利権組合の皆さんが、100年以上前からそうしてきた様に共同作業で取り除きます。

そこから更に100mほど下ると源流との標高差は10mを越え、用水路が流れる地形から、人工水路である事が容易に解ります。

里に流れ下った用水路です、左へ傾斜した地形なので人工水路と解ります。 平成3年の圃場整備で護岸工事が行われこの姿になりましたが、それ以前は唱歌「春の小川」の風景で、初夏には蛍が飛び交ったと想像されます。(蛍は現在も棲息中)

用水路は何本にも枝別れして流れ、前の写真からわずか200m平行移動した場所にもあります。 ちなみに昨年この上流150mの地点で愛娘ハナちゃん(猫)を拾いました。

その100mほど下流に用水路(幹線/動脈)から各水田への給水路(支線/毛細血管)取入口があります。 左上部の水門で用水を手前のマスに導き、そこから各水田へ網の目の様に張り巡らされています。


2.給水路と給水口
全ての水田脇に給水路があり給水口が設けられています。

給水路は必要に応じこの様なマスを設けて更に分岐してます。 右奥は幅30cm昔ながらの小型側溝タイプ給水路です。

一辺が100mを軽く超える水田は大量の水が必要なので、幅・深さ共に60cmの大型給水路が設置されてます。 春先には深さ半分程度の大量の水がゴーゴーと流れます。

給水路には分岐点や水量調整用にこの様な小さな水門が数多く設けられています。

【給水口アレコレ】
細い給水路に小さな給水口、昭和の雰囲気です、給水量も少なそうです。
幅は狭くとも圃場整備で作り直された給水路、取っ手付きプラ板で水止めです。
幅広用水路沿いのメガサイズ水田は深さ方向で水量を稼ぐ給水口です。 コンパネ製水止めが多く、腐食防止に赤・黄・茶などに塗装されてます。
お隣のメガサイズ水田は給水効率を向上させる2連装でした。

これも変わり種の給水口です、と言ってもこの画像だけでは解りませんね。

種明かしがこちら、水田面が水田脇給水路より高く、右上小型水門から取水し、お隣水田畦下に導水パイプを埋設して左手出口から給水する仕掛けです。


3.排水口と排水路
水の入口の話をしたので今度は出口の話です。 おおむね水田間に40cm以上の高低差があれば、排水路は給水路が兼用します。 この場合の排水口は給水口と同じ形で、給水路との高低差が逆転し、水田の水を流出させます。

当地は傾斜地で水田間高低差が比較的大きく給水口式も可能ですが、畦強度保持に有利な排水パイプが多数派です。 不要になった水田の水は、ここから給水路に戻されます。

畦の中に埋設された排水パイプの水田側には、給水口と同じ方式の水止めがあります。 普段は閉めてあり排水時に空けます、水漏れ防止に土嚢が良く使われます。

【北海道北竜町HPより】
では平野に広がる水田地帯の排水はどうする?、一見平坦に見えても地形図によると傾斜があり、畦で仕切られた水田間には数センチ、スケール換算0.5mm程度の標高差が必ずあります。 でなければ畔は不要で1枚の水田にして生産効率を上げるからです。 この様な場合は水田の一辺に給水路、他辺に排水路を設けて役割分担します。

【排水路の始点
排水路は流出一方通行なので水源不要、従って唐突に始まります。 草刈りも十分に行われず手入れが良いとは言えません。 下流で用水路に合流する様に設置されてます。

排水口はパイプでした、圃場整備から27年経過し排水路U字溝に割れや痛みがありますが補修してません。 不要な水が漏れ地下浸透しても問題ないからだと思います。 大事に使われてる給水路に対し、ぞんざいに扱われてる排水路の対比が際立ってます。

【用水路を給水路がオーバークロス】
この水田の反対側に珍しい光景があります。 給水路が用水路の上を鉄橋の様に渡っています。 また給水路と左の水田の高低差から、反対側に排水路が必要な事も解ります。


4.乗り入れ口
露太本線想定時代の水田乗り入れ車両は耕運機、手押し田植機、軽トラ、一番重くて小型トラクタ―、乗り入れ口は丸太を何本か渡した程度でした。

現代の機械化・省力化された水田には、乗用田植機・大型コンバイン・大型トラクター等の作業機械乗り入れ口が設けられています。 これは典型的な例です。

農道との関係により乗り入れ口がこの様な急傾斜で幅が狭くなる水田もあります。 乗り入れ口と畦から田への段差が農作業事故多発危険箇所で、ご近所でも3年前にトラクター横転死亡事故が発生しました。


★最後に
旅先でも水田に目が向きます、水田を見てると埋立地を除きレイアウト基台の様な平坦な土地は存在しないと思えます。 近代的高架駅を別にすれば、駅構内は整地して建設したから平坦なのであり、駅周辺には元地形の痕跡がそこかしこに残っている物です。

【根雪が遅い今年の八ヶ岳連峰】・・・11/11撮影
水田はレイアウト雰囲気演出小物と割り切り、道路は地形整合性以外平坦な風景を否定する気は全くありません、レイアウトに何を求め何を重視かの考え方によるからです。


でもね、敷設レールを基台からもう5mm高くしてみませんか?、水田並べるならわずかでも高さを変えU字材給水路を傾けて配置してみませんか?、線路際の地形にその5mmを活用して元地形演出をすれば風景リアリティーが格段に向上すると思いますよ。


以上、風景(地形や水田)製作にこだわる筆者の想いを書き連ねてみました。 何らかの参考になれば幸いです。 もちろんフーンで終っても、無視でも結構ですよ(笑)


ではまた。

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