ポイント電気講座⑦Pecoその2
ポイント電気講座7回目です。
6-3.ダブルスリップ
限られたスペースに理想の線形で長い列車を走らせたい、この夢実現に最も効果的なのがダブルスリップとカーブポイントだと思います。 カーブポイントは通常ポイントの形が歪んだだけなので、電気講座としてダブルスリップを取り上げます。
とは言う物のローカル線の当社には無縁の存在、調査目的に購入できるお値段じゃない、
そこで本稿は『がおう☆さん』と『た625さん』から情報提供を受け執筆しました。 お二方、ありがとうございました。
【TOMIXダブルスリップ】
ポイントフェチ垂涎の的ダブルスリップはTOMIXとPecoの2社です。 TOMIXダブルスリップ5基を10年近く使用された『た625さん』の評価は「通電不良・切替不良・脱線が多発する欠陥商品」です。 本講座では電気特性について簡単に解説します。
【TOMIX両渡り線】
ダブルスリップは両渡り線をギュッと凝縮した線形で機能的にも同じです。 TOMIXはこの考え方の設計で、中央にギャップを設置し4方向から給電する方式なのでフィーダー不要です。 またポイント切替は直進/スリップの2モードで、使い易い設計コンセプトですが、それを実現する技術が伴い安心して使えるかとなると???です。
【Pecoダブルスリップ電気設計の基本形】
Pecoダブルスリップは両渡り線凝縮形でなく、機能的には同じ2個の背中合わせポイント凝縮形の考え方で設計されてます。 従ってポイントはトング側から給電の法則により、ダブルスリップには必ずフィーダー設置が必要です。
【Pecoコード55ダブルスリップエレクトロフログ】
フィーダーは両外側レールから給電します、図中央赤丸・青丸部はそれぞれ電気的に一体化されています。 左右にトングスライダーがあり2x2の4切替モードです。
電気ブロックは上下外側レールと中央クロスが一体になりフィーダー設置する2ブロックと左右フログの4ブロック構成です。 そして面白いと言うか面倒臭いと言うか左右フログは非給電、つまり走行不能状態で販売されてます。
【Pecoダブルスリップ裏側】・・・『がおう☆さん』提供
裏にリード線4本、真中2本がフィーダー、上下2本がフログ、これをトングの動きに合わせ切り替えないと走行できません、使い易さはTOMIXに比べたら天地の差です。
トングの動きと開通方向の関係です。 エレクトロフログは開通方向のみ両極性が給電される『選択式』なのでフログは上図の様な極性になる必要があります。 はてフィーダーとフログをどの様に配線したら良いでしょうか?、知恵の輪です(笑)
《答え》
①上下各2枚をじっくりご覧ください、右トング切替と左フログ極性が同期してます。
②左右各2枚をじっくりご覧ください、左トング切替と右フログ極性が同期してます。
③つまり、フログは反対側トングの動きに合わせ接続を上下に切り替えればOKです。
Peco純正品でダブルスリップ切替制御するにはポイントマシンPL-10にアクセサリースイッチPL-13を連動させてフログ極性を切り替えます。 この時に注意事項があります。
【筆者ポイント切替電気講座実験装置】
PL-10動作電流は約3.3A、TOMIXの2.5倍、KATOの5倍です、ポイント切替には電流容量が大きい太い配線を使用してください。 瞬時なので発熱発火等のリスクは低いですが、配線抵抗による電圧降下が大きく切替不良の発生原因になります。
また、サーボ切替の場合はショート防止の為、トングが双方レール非接触のスローアクション中に切り替える必要があります、詳細は『親爺ぃさん』の記事をご覧ください。
6-4.ダブルスリップの応用
代表的なダブルスリップ応用例についてフィーダー/ギャップ設置を解説します。
複線エンドレスに待避線付き中央駅、全てのホームとヤードが往来できる線形で、2電源2列車運転の想定です。 右側カーブポイントの併用でKATOで6両編成目一杯のスペースに8両編成停車が可能になるダブルスリップのメリットを活かした応用例です。
TOMIXで構成すると、フィーダー不要のダブルスリップと完全選択式のメリットでほぼつなぐだけで運転可能です、ギャップが必要なのはたった1ヶ所です。
Pecoで同じ線形を構成すると、電気設計が非常に面倒になります。 コレ本講座の期末テストになるかもです(笑) フィーダーはダブルスリップ2ヶ所追加です、分岐側対向場所に設置必要なギャップは7ヶ所、筆者なら運転パターンを考えこの位置設置です。
さて内回り/外回り本線用パワーパックにF1/F2を接続、それではダブルスリップF1a/F2aはどう配線しますか?、エンドレス運転するからF1aはF1と、F2aはF2と一緒ですか?。 間違いではありませんが以下の様にするとさらに運転を楽しめます。
F1aとF2aに双方のパワーパックを選択するトグルSWを設けます、現在の切替位置は待避線を含めた内回り/外回り本線2列車運転可能モードです。
①外回り列車が左方向へ発車後エンドレス周回中または3・4番線到着までの間に、F2aを切り替えるとF1(PP1)でヤード⇔1・2番線間の列車入替運転が可能です。
②2番線から内回り列車が発車後エンドレス周回中にF1aを切り替えるとF2(PP2)で1番線⇔外回り本線間の折り返し列車や留置始発列車の運転が可能です。
③ポイント制御にArduino採用の場合(サーボ/PL-10を問わず)は、制御アルゴリズムによりF1a/F2aをリレー切替しトグルSW操作を自動化する事が可能です。
上記配線を行わずダブルスリップ内回り/外回り本線間を通過するには、F1/F2を1台のPPで制御するか、双方PP極性/電圧を揃えるしかなく、いずれの場合も1列車しか運転できません。 この様にフィーダー配線を工夫すれば運転の楽しみが広がります。
ではまた。