Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

鉄道模型車両価格の経済学 本編

鉄道模型車両価格の経済学続編です。

《夕暮れの貨物ホーム》・・・輸送革命により失われた鉄道風景です。


2.三男坊は辛いよ
どの業界でもNo.3の経営が苦しいのはビジネス界の常識です。 ブランド認知され固定客も付き、上位2社に対抗するには製品ラインナップを揃える必要があります。 しかし規模の論理で何かにつけて効率が悪く利益に結び付かない図式です。


前回例示した業界大手K社の販売価格¥10,000の企画製品を、3番手M社が製品化したらどうなるでしょうか?。 M社に4,000台売り切る販売力はありません、いいところK社の4割、1,600台が精一杯です。

開発費1,000万円を生産数量1,600台で割ると開発費償却¥6,250/台、数量減部品コストアップを¥50に抑えても製品コストは¥9,400、費用構造から販売価格は¥16,800になってしまいます。 K社1.7倍の販売価格では、たとえ他社ラインナップにない型式でも、M社ファンさえ購入に二の足を踏み、販売数量1,600台は見込めません。

そこで、幾らなら買ってもらえるかの観点で販売価格を決定します、欲しければ多少高くても買うのがマニアの習性、K社1.2倍¥12,000辺りだと思います。 販売会社マージンを引いたメーカー売上高は¥8,400、直接製造原価との差は¥5,250しかありません。


発売前に投資した開発費償却さえできず、一般管理費も賄えなければ利益もない、これでは会社が潰れます。 では利益を出し生き残る為にどうするでしょうか?。

バリエーション展開が解決策です、付属品・塗装変更や追加開発費がわずかな部品変更で兄弟製品を数種追加発売します。 バリエーション形式に思い入れがある人、同形式複数所有者、何でも収集家への販売が期待できます。


もう一度②表をご覧下さい、販売価格¥12,000で利益と一般管理費を除くと開発費償却¥3,570、開発費1,000万円償却には2,800台必要です。 兄弟製品個々の販売数量が400-500台でも合計1,200台になれば開発費を償却し利益が出ます。 この話は実在メーカーと無関係ですと言ったら白々し過ぎますね(爆)、実際にこの構図になっています。


3.何故発売直後に売切れる?
3-1. 損益分岐点
新製品は現品を見てから、購入者レポートを読んでからと構えていると、売切れなんて事が良くあります、コンセプトに合わない車両は購入しない筆者さえ見もせずにKATO C57一次型を予約しました。 買える時に買わないと手に入り難いのは何故でしょうか?。

前回例としたK社の販売価格¥10,000、ロット生産数量4,000台製品の販売数量と損益表です。 完売すれば売上高2,800万円で事業計画達成ですが、10%未達の3,600台未満は営業赤字、20%未達の3,200台未満は原価割れの大損失になります。

ロット生産数量を完売可能最大に決めるのが企画マンの腕の見せ所ですが、メーカーにはもう少し作れば売れた機会損失より、在庫リスクの方がはるかに大きいのです。 従って1stロット生産数量は在庫を残さない事優先で決定され、品不足になり易いのです。


3-2. 鉄道模型は速攻ビジネス
KATOブランドで鉄道模型業界を牽引する関水金属工業は年間売上高30億円、従業員400名、同族経営の中小企業です。 あれだけの製品ラインナップ、膨大な金型資産を抱えてたった30億円(失礼!)、決して割りの良いビジネスではありません。

無借金経営のトヨタは例外中の例外、新製品開発費等の先行投資や運転資金の多くは借入金で賄われます。 鉄道模型メーカーには完売まで1-2年かける余裕がありません、資金が回らなくなるからです、3-6ヶ月で完売が経営目標だと思われます。


3-3. 再生産は金の成る木
新製品1stロットはある意味種撒きです、完売すれば開発費償却、一般管理費を賄い必要最小限の営業利益を得られますが旨みが少ないのです。 企画マンは販売状況を注視し、再生産2ndロットの可能性、潜在需要を調査します、ある程度まとまった数量が期待できればGOサインです。 再生産こそ利益の源泉と言えるほど儲かるからです。

再生産製品価格は同仕様なら通常変更されません。 2ndロットとして1,000台再生産し、数量減部品コストアップを¥100と仮定すると製品コストは¥3,900です。 開発費は1stロット4,000台で償却済みなので、利益率が高い儲かる製品になります。

2ndロットの損益表は1stロットと違った形になります。 700-800台売れる状況なら強気に1,000台仕込めます。 売れ残りはNGですが、6-9ヶ月で完売できればOKです。


3-4. それでも売れ残ったら
メーカーの読みが常に当るとは限りません、1stロットの売れ残りはピンチ、完売時期が遅れるだけでも資金繰りに悪影響を及ぼします。 経営的に在庫を抱える事は避けねばならず、在庫になる可能性がある製品は早期に現金化を図ります。

例えばイベント会場企画として安売りします。 30%OFFは通常売上高と同額でメーカーの懐は少しも痛みません。 35%OFFでも利益が出ます、40%OFFは営業利益ゼロですが開発費償却が進みます、販売会社との関係悪化がなければ躊躇なく実施します。


【後記】以上N車両価格について感じていた事をまとめてみました、読み物として楽しんでいただけたでしょうか。 工作が進まない時間稼ぎにヒネリ出した経済学、書き出すと図表作成に凝ったりして虻蜂取らず、結局時間稼ぎにはなりませんでした(笑)


★初雪

12月5日、初雪が降り庭が薄っすら白くなりました。 青空も見えてましたが、雪雲の端が当地をかすめた様です、繰り延べしてきたタイヤ交換が待ったなしになりました。


ではまた。

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