Nゲージレイアウト国鉄露太本線建設記

運転よりシナリー重視コンセプトで、昭和40年代後半の風景再現を目指しレイアウトを製作中です。映像・画像を交えながら、製作記に加え、随想や旅行記も発信します。2016年9月より延伸線建設に着手しました。

ポイント切替電気講座⑪Peco その3

ポイント切替電気講座シリーズ最終回です。 Peco推奨回路は実績データを使い設計します。 Peco純正ポイントマシンPL-10使用時の作動条件は前回明らかになりました。


1.実効電力量
TOMIXとKATOは安定切替必要ON時間との比較から設計しました。(KATOは推定値) Pecoは推定が困難なので実効電力量を使います、単位はmWsec(ミリワット秒)、家庭電気料金単位kWh(キロワット時)の36億分の1ですが電力量(仕事量)の単位です。

瞬発力部品のソレノイドは一定電流以下は全く作動せず図のグレーゾーンは無効電力量になります。 赤い部分だけがポイント切替に有効な実効電力量で、PL-10使用時は531~930mWsecでした。 参考に計算式は以下の通りです。
16(V)x[3.33-2.5](A)x40~70(msec)=531~930(mWsec)


この値はポイント安定切替必要力に対して大きなマージンを含んでいます。
①マシンマウント切替スイッチPL-13/PL-15を作動させる前提で設計されている。
②太い巻線・高耐久性なので切替確実性優先、ソレノイド損耗配慮の必要性が低い。

ポイント切替メカ部は違っても半世紀前のポイントマシンと基本は全く同じです。

前回記事で手に振動が伝わるほど勢い良く切り替わった12.6V作動は、16V実効電力量の約1/9、63~110mWsecでした。


2.親爺ぃさん実証実験の検証
筆者がコンデンサポイント切替法に警鐘を鳴らし、本講座を始めたのは親爺ぃさんと知り合い、この記事についての意見交換がキッカケでした。

親爺ぃさんの実験結果:
①19V、1000μF:10/10切替可能
②12V、1000μF/2000μF:切替不能
③12V、3000μF:1/10切替可能


純正16Vを19V駆動するのは危なくない?、が最初の印象でしたが、さすがに親爺ぃさんタダ者じゃない(笑)、12V試験を含め非常に有用なデータを提供してくれました。

親爺ぃさん実証実験結果を図にしてみました、電圧は19Vと高くてもコンデンサ容量が1000μFなので実効電力量は25mWsecです。 質実剛健設計のソレノイドで耐圧もOK、安全性/信頼性対策を加えれば問題なく使用可能です。


安定動作不可能領域2.5A(12V)なのに容量を3000μFにすると1/10作動しています。 図中点線が筆者試験で不確実だった11.7V/2.44Aです、容量増でピークからの電圧低下が緩やかになります。 親爺ぃさんの実験は2.5A弱に閾値がある事を証明しています。


3.がおう☆さん使用実績の検証
Peco推奨回路設計ではがおう☆さんに協力いただいています、16V、2200μFの使用実績をお持ちで、PL-13同時切替ではパワーが不足し2200μFを並列使用されています。

がおう☆さん実績回路を図にしました。 実効電力量は親爺ぃさん19V/1000μFの半分強14mWsec、コンデンサ並列接続は28mWsecです。 配線が細いと電圧降下で動作不安定になることから、14mWsecがPecoポイントマシン作動下限実効電力量だと思います。


4.推奨回路の設計
本講座TOMIX、KATOの項で解説した様に、コンデンサポイント切替を純正マシン電圧で行うと必ずパワー不足になります。 TOMIX推奨回路は13.3%高い13.6V、KATO推奨回路は14.7%高い16Vを使いました、Pecoも同じく13-15%高い電源を使います。

19V/3.4Aアダプタ-と整流ダイオードを組み合わせて使います。 コンデンサ充電側は大電流時整流ダイオード順電圧0.9Vにより電源電圧18.1Vになります。 ポイント切替後のコンデンサ充電完了時整流ダイオード順電圧は0.6Vなので、放電側は電源電圧18.4Vになり、充電側より10%ほどパワーアップします。 解説を省きましたがTOMIX推奨回路も整流ダイオードを使用するので、放電側パワーが若干大きくなります。

推奨回路の実効電力量は作動下限値と推定される14mWsecの約3倍、充電側41mWsec、放電側45mWsecになり、余裕を持ったポイント切替が可能です。 PL-13連動の場合もがおう☆さん28mWsecの使用実績から、切替可能と考えています。


今回始めて使った『実効電力量』でTOMIX、KATO、Pecoを比較してみました。

2017.11.05赤字訂正
メーカー間の数値比較には意味がありません、磁力は「電流」「巻線数」「巻線密度」「透磁率」で決まり、TOMIXは永久磁石磁力が加算されますし、各社構造の違いにより磁力で動かす質量も違います。 注目は純正/推奨比です。


筆者推奨回路はおおよそ必要最小条件の3倍を目安に設計しました。 KATO、Peco純正使用条件が推奨条件より十分大きいのに対し、TOMIXは方式の違いはありますが1/3しかありません。 このポイント切替性能の低さと、構造欠陥により動作確実性が損なわれているので、筆者は欠陥製品と断じています。


★まとめ
コンデンサポイント切替は推奨しないが、使うならここに留意して欲しいというスタンスで開講しましたが、一連の講座を終えた現在、メカスイッチで通電時間が大きく変動する通常方式より、ソレノイド負荷が一定になるコンデンサ切替方式の方がむしろ安定してるのではないかと考え方が変わりました。 『安全性』『寿命』『動作確実性』に配慮した設計を行えば、コンデンサポイント切替法はポイント制御に適していると考えます。


★謝辞
本講座進行にご協力いただいた「親爺ぃさん」「がおう☆さん」「た625さん」ありがとうございました。 コメントを通じ筆者の思い違いを正していただいた皆さん、ありがとうございました。 筆者もKATOポイント切替法ミスを発見でき、また勉強になる事が多々ありました。 そして読者の皆様お付き合いいただきありがとうございました。


『露太本線の良く解るポイント切替電気講座』完


ではまた。

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